「処女」

志賀健太郎

第1話 処女

あまりに、激しい喧嘩の後で恭一が窓を開ける。

恭一は非力だし、母から女に手を上げるなと散々言われて育ったから喧嘩と言っても口論だった。

しかし手を上げない分、恭一の言葉は峻烈だった。加えて、大人しい彼女はそれに対抗することなどしなかったから見るも無残な一方的な言葉責めが行われただけだった。


彼女の顔から首を通り豊かな胸部に涙が辷る。そのままに恭一の目は彼女の白のワンピースに吸い込まれる。

ふと、くしゃくしゃになった彼女の顔を恭一は美しいと思った。そして底から触れたい気持ちが沸き上がり、いきなり彼女を抱きしめた。

しかし、涙に濡れたワンピースの温かさを着ているティシャツ越しに感じた瞬間、たちまち恭一の熱は冷めてしまった。

今嫌がらずに腕の中でじっとしている女がなんだか急に気持ち悪く思われてそのままの勢いにベランダから突き落とした。

ワンピースが風を受けて女は花になった。そして一瞬の後視界から消えた。


眼下の彼女はくしゃくしゃの塊になっていた。恭一は愛しくなった。

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