第12話「ダンジョンに魔物、異世界っぽいのキター!!」(※Bt
食事処を出て数十分、遂に目的の国営ダンジョンにやって来た、
「ここが国営ダンジョン:ロウウェア
驚いてみたもののこれがダンジョンとは・・・どうも思えない、
地面から不自然に盛り上がった山の様な形の地形にぽっかりと空いた洞窟の入り口、確かにこれだけがあったら「ダンジョンだ!!」と喜んでいただろう。
だが現実はどうだ、そのダンジョンの周りに作られた堅牢な作りの小型城壁、そしてダンジョンの入口で見回りをする兵士が二人、それにダンジョンの外側にある小型城壁にすら、良く分からない術式?が彫られた青紫の格子状の門が取り付けられている、
「はい、これがロウウェア
「はぇ~、え?委託?」
予想外の言葉に困惑したカザミは聞き返す、然しリグはそれが分かっていない様に「はい!」と答えた、そしてそれに続く様にリリーが言葉を継ぐ
「基本的に
リリーはドヤ顔をしながら小馬鹿にするような顔でこちらを見てくる、こんのガキャぁ、ムカつく、
カザミがイラつく中、リグはリリーの自慢していた言葉尻を奪って話を続けた、
「そしてダンジョンが国家領域内で発見された場合はその国から協会に知らせを出すのが決まりなんです、その上でその国に運営を任せるか、その国に協会職員を派遣して運営をするか決定します、ですが、ダンジョンというのは世界各地で突如として生成される異常生成体ですので、協会でも全てが管理できているわけではなく、一説では、ほんの三割程度しか管理出来てないなんて言われているんですよ。
リリーも、自慢をしたいなら、しっかりとした知識を付けてからしましょうね。と言っても、なるべくそういう言い方の自慢はしないこと、お兄ちゃんと約束してください良いね?」
「・・・はぁーい」
リグに𠮟られたリリーは嫌々といった様子で渋々返事をしている、その様子をザマァなんて思いながら見ていると、リグの視線はカザミへ向いた、
「それでは、中に入ってからの護衛、よろしくお願いします」
「あ、はい!任せてください、しっかり受けた仕事は果たします!」
カザミは片刃刀を抜いて刀身を肩に載せながらそう言った、
「フフッ!それでは、頼みますよ!」
なんだろうこの人、本当に男だよな?,仕草と言い口調と言い、女性らしいというか、なんとなく色っぽいというか、不思議な感じだ、
カザミはそんな事を思いながら格子状の門を開くのを眺めた、ガラガラと音が響きながら門が上へ上がっていく、中に入ると入り口の警備に当たっていた兵士の一人がこっちに歩いてきた、
「リグ様、本日は何階層まで降りられますか」
「今日は五階層の
兵士の質問にリグはゆらりと答えた。それを了承した兵士は入り口の横に逸れ、中に入るように促す。片刃刀を一度納刀し、遂にカザミは初ダンジョンの中へ入っていった。
中は想像以上に暗い。所々に壁に固定された坑道にあるような松明の炎がその場を照らしているが、それでも明かりの無い場所は暗く、その松明の灯りがある場所との差も相まって更に暗い気がする。
カザミはその暗さに目を慣らしながら歩いていると、ふと僅かに震えているリリーが目に入った、
「リリーちゃん、暗いのが怖いの?」
「ギクッ!!そ!、そんなことないぞ!!ただ、ちょっと寒いなぁって思っただけだ!!」
強がりだなぁ。
此処は寒さは無いどころか、地下に位置する為かどちらかと言えば暑い、先頭を歩くリグさんに至っては少しだけ、汗をかいたのか服の袖で顔を拭っている。
にしてもこの一本道長いな、かれこれ十五分くらい歩いてるが一向に出口が見えない、
「この道長いですねー、」
「そうですねぇ、まあ一階層ですからもう少しで抜けられるはずですよ、」
リグはカザミの言葉にそう答える。
そう言えば五階層の事を
「リグさん一階層や他の層って名前とか付いているんですか?」
「はい!、勿論ついていますよ、此処、一階層は
暗淵の坑道に陽炎洞窟とか、何かカッコよ、生きているうちにこんなワードを聞けるとは、感激です。
「あ!、ほら出口が見えて来ましたよ!」
リグが指差すその先には、ほのかに紅く揺らめく開けた洞窟が見えた、
「やっと、出ーれるー!!」
リリーははしゃぎながら出口に走っていく、そんなリリーをリグは「あ!!ちょっと!?」と言いながら後ろを追いカザミもその後に続いた、
段々と視界が開け、紅く揺らめく洞窟が姿を現す、炎に当てられた様な周囲の色合いや視界の揺れ方、然し、洞窟には炎はおろか溶岩も松明も無い、一体何がこんな明かりを放ってるんだ?
「ここは少々魔物が出るので、ホウライさんその際はお願いします」
「はい、お任せください!」
カザミの言葉を聞いたリグは先に出ていたリリーを見つけ再び進み始めた、
常に全体がゆらゆらと動いており、視界がバグりそうだ。洞窟は所々に鉱石や苔が生えとても広々としている。一本道に進んでいるとリグの足が止まった、
「ホウライさん、早速出番が来ました、」
リグが警戒する先には黒色のからくり染みた両腕を持った骸骨が道の真ん中を歩いていた、
「
リグが説明しようとしている刹那、その横に風がなびくとほぼ同時に、
頭を割られた
「ふぅこれで良しっと!・・・ってこれなんだ?」
謎の小石を見つけたカザミがその石を持って凝視している、とリグが歩いて来た、
「ホウライさん、凄いですね・・・あれを一瞬で」
「あーまあ、ああいうタイプの敵って基本的に防御のない所を攻撃するっていうのはゲームの常識なんで!」
そう言いながら親指を挙げた、リグは何故か苦笑いをしている、リリーはというと余りに一瞬の出来事だったからかポカーンとしたまま固まっている、
「げーむ?って言うのが何かはわからないですが、まあ何かそういう決まりがあるんですね、あははー・・」
「まあそういうことです!あと、そう言えばこれって何です?」
リグが苦笑いをする中カザミはそう言って謎の小石を見せた、
「ああ、それは魔石です、魔物の核みたいなものですね、それが肉体から剝がされると魔物は形状を維持できなくなって霧散します、魔石は武器や装飾品の素材でしたり、売ると高値で取引されるので便利ですよ」
「魔石・・・魔石!?これが!、なるほど、」
遂に魔石キタァー!!それに圧倒的に便利な素材じゃん、流石魔石だな!、いいねぇ、
でも・・
「何か魔石っていうには、淀んでません?」
装飾品に使われると言っていたが、そういう物に使われるには淀んでいる。透き通るような輝きも無く、表面もざらついていてとても宝石の代理は務まりそうにない。
「それは魔物の希少度が関わってきますね、」
「希少度?、」
「はい、魔物も自然の生き物ですので、沢山の数がいる魔物の魔石はそこまで美しい形はしてないんです、でも、逆を言えば、希少な魔物、
「はぇー、あれ、でも赤龍の宝玉って、この世界に龍はいないんですか?」
龍がいない、つまりドラゴンがいない、そんな異世界あるの?
カザミの不安交じりの声にリグは特に声色を変えずに答える、
「いえ、勿論、龍やドラゴンと呼ばれる生物は居ますが、それらは魔物ではなく幻獣の
「あー、なるほど幻獣か・・・」
って待て・・・
「幻獣!?」
「ふぁい!?」
カザミの鬼気迫った声にリグはビクリとしながら返事をした、その反応に気付いたカザミは直ぐに謝り、少し深呼吸をして気を取り直す、
「幻獣って、実在したんだ・・・」
「えっと、幻獣は結構いると思いますけど・・・・」
結構いたらそれって幻獣じゃなくない!?
そう思いながらも、興味しか湧かないカザミは食い気味リグに聞く、
「結構って・・例えばどんなのが、」
「え、えぇーっと、近くに生息するものでしたら、
「おぉぉ、、おぉお、」
「ホウライさん?、」
ってことはつまり、この世界だったら
「おぃおぃ・・・旅の目標が増えていくじゃねぇか、最高かよ・・・」
「あのぉー、ホウライさん?、おーい・・・」
完全に自分の世界に入ってしまったカザミにリグは控えめに声をかけるが、一向に帰ってくる気配は無い。リグがどうしようか悩みワタワタとしていると、しびれを切らしたリリーが前に出た、
「兄貴、こういう時はもっとドカン!とやらないとこういう奴は帰ってこないぞ、」
「え、でも、どかん!とってどうやるの?」
「はぁ、これだからウチの兄貴は・・・」
リリーはオドオドとしている兄に対して両手でやれやれとやると、カザミの前まで歩いて行き強烈な平手打ちを放った。無論、子供の力の為吹き飛んだりはしなかったがそれでも思い切り振りかぶっての一撃は痛い、
「痛った!?何故!?」
「お前が自分の世界に行っちまってたから引き戻してやったんだ、ありがたく思え!」
頬を抑えながら驚愕しているカザミに、リリーは偉そうにドヤ顔している、
「だからってもうちょっとやり方なかったんですかねぇ!?」
「ない、これが一番効果的だしな!」
「無茶苦茶だこの子!?」
激怒というよりか、あまりの暴挙に混乱と驚きを隠せないカザミを差し置きリリーは何処か勝ち誇った顔でカザミを見ている、
「こらリリー!!!」
「げっ・・・痛ったっ!?」
カザミが啞然とする中、勝ち誇ったリリーの頭に強めの手刀が打ち付けられた。頭を抑えたリリーが振り向くとそこには、案の定怒った顔立ちのリグが立っていた、
「ドカン!とって、こういう事だったの!?」
「えぇと、うん・・」
「あのねぇ、お兄ちゃんはいつも言ってるよね!、暴力を振るっていいのは、自分の命を守る時と、命に代えてでも守りたい相手の為だけって、」
「はぃ・・」
リグさん、リリーは一応女の子なのにそんな教え方してるのか・・
てか、若干怒る所ずれてる気がするけど。
カザミがそう思いながら𠮟られているリリーを見ていると、リグはカザミの方へ向かいカザミに向かって頭を下げた、
「ホウライさん申し訳ございません、頬大丈夫ですか?」
抑えていた頬にリグさんの指が触れる。何故だろう、同性の相手のはずなのに物凄く恥ずかしい。
「あ、いや、大丈夫ですから、はい。」
「え、でも・・」
「大丈夫です!!!」
「そう、ですか・・・」
リグに向かってそう叫んだカザミは、早々に立ち上がり焦った様に言う、
「さ!、早く行きましょう、日が暮れてしまいますよ!」
「そ、そうですね、行きましょうか、行くよリリー」
「はぁーい」
いかんいかん、リグさんに頬を触られてから妙に気が落ち着かない、リグさんって顔立ち良いし、何故だか同性なのに意識しまう、にしても、さっき触れたリグさんの指・・・柔らかかったな。って!!!俺は何てキモオタみたいな発想してるんだ!!!いや待て、俺キモオタだったじゃん。
「ホウライさん?」
「うひゃい!?!!!」
「うひゃい?」
気持ち悪い考えに頭を巡らせていたカザミは不意に掛けられたリグの声に意味の分からない声で返答する、
「じゃなくて、どうしましたか?リグさん、」
「あ、ええと、もう直ぐこの階層を抜けるのでそのことを伝えようと思いまして、」
「ああなるほど、そういえばあまり魔物が出ませんでしたね、」
この階層で接敵したやつと言えば、
「そうですね、いつもならもう少しいるんですけど、」
「そうなんですか、そう言えばどうしてこの階層ってこんなに炎に照らされたようになってるんです?」
カザミはこの階層に来てからずっと思っていた疑問をぶつける、
「ああそれは、魔法石の影響ですね、」
「魔法石?、魔石じゃなくて?」
「ええ、魔石は魔物の核ですが、魔法石というのは大気中に漂う魔力の一部属性が鉱石状に結晶化した物の事を指します」
「魔力の一部属性?」
魔力って使用者の力とかで属性とかが生まれるんじゃないの?
「はい、この階層の魔力石は炎の魔力が結晶化した物ですね、それもかなり高純度に結晶化した物のようですから、その魔力石から発せられる炎の魔力の影響で、ここら一帯の大気魔力全体が炎の様に揺れるわけです。」
「つまり炎の魔力石がなくなると、この階層はただの洞窟の様になるんですか?」
「はい、推測の域は出ないですが、多分そうなると思います。」
なるほど、確かによく見てみると洞窟の岩肌の所々にある隙間から紅い鉱石が見える、あれが炎の・・・、やっぱりどの世界でも炎属性=赤色って言うのは変わらないんだな。
そんなこんなで歩いていると、揺ら揺らと動く景色の中で唯一揺れずにはっきりと見える横穴が現れた、
「なんか如何にもって感じですけど、やっぱり三階層への道ってこれですか?」
「はい!、ここを通れば崩壊の森に通じるはずです。」
「やっと着いたぁ」
リグの言葉にダラダラとついてきていたリリーがホッとした声を上げる、
「崩壊の森ってどんなところなんです?」
カザミは初ダンジョンの興奮が今だ収まらないのか少し興奮気味に聞く、
「崩壊の森はホウライさんに特に頼ることになると思います。」
リグは純粋にダンジョンを楽しむカザミとは対照的に警戒心が溶け込んだ声色で言う、
「俺が頼られるってことは、たくさんの魔物が出るってことですね!!任せてください!この片刃刀の錆にしてやりますよ!」
カザミは背後に背負う片刃刀を少しだけ抜き白紫色の刀身を鞘の隙間から覗かせながら高らかに言った。
リグはそんなやる気と自信に満ちたカザミを見ていたからか、先の雰囲気は和らぎ、落ち着いたいつもの声で言う、
「そうですね、ホウライさんがいるなら大丈夫ですよね!」
「もちろん!!大船に乗ったつもりで行きましょう!!!」
「・・・おおぶね??」
カザミの話した元の世界での
「ここが第三階層:崩壊の森・・・・なんか崩壊の仕方が思ってたのと違う・・・」
三階層の景色は想像だと、崩壊なんていうから森がぐちゃぐちゃに荒らされた荒廃した森を想像してた。だが、目の前の森は木や草などが部分的にノイズの様に存在そのものが崩れている。例えば一本の木だったなら、その一部がドットモザイクの様に所々が粗く画素数が足りないゲームの様になり、パラパラと崩れて空間に漏れ出している、そんな感じだ、
「ここの魔物は主に二種が生息しています、一つは
何その特殊モンス、どうやって倒すの?
「そんなの、どう対処すればいいんですか?」
先程の威勢は何処へ行ったのか、半ば怯える様な声でカザミはリグに聞く、
「唯一チャンスがあるとすれば、
「恐らくは、ってどうしてそんな、予測的な言い方・・・」
「僕も実際に戦ったことはないんです、基本的に魔物との戦闘はせずに降りたことしかないので、」
リグさんすら戦ったことのない魔物、しかも攻撃が一瞬しか与えられないって、タイミングゲーは余り得意じゃないんすけど!?、
「まあ、諸々の対策は見つけてからにして・・二つ目は?」
余り考えたくないカザミは話を逸らし、二体目の魔物の情報を聞き出す、
「二つ目は、
「囲まれたら?」
ふと言葉を止めたリグにカザミは恐る恐る聞いた、するとリグは頬を両手で触り言う、
「可愛い過ぎて骨抜きにされちゃいます///」
「・・・はい?」
180度予想と違う回答に、カザミは拍子抜けした顔になる、
「骨抜き?」
「はい!骨抜きです、」
「・・・・」
「?、どうしました?」
「まあ、
「はい!!!」
「はぁーい」
カザミはさほど危険じゃない事が分かった崩壊の森を、魔物の心配も余りせずに呑気に歩いた。
結果・・・
「・・・なんで、よりによってこっちが出ちゃうんですか!!!」
目の前に現れたのは、全体が煙の様に固定された形状の実体がない瓦礫を身体に巻き付けた、
硬直するカザミ達一行を前に
「と、取り敢えず、まだあちら側は攻撃をしてきていませんし・・・い、今のうちに、慎重に逃げましょう!!、さあ、リリーは僕の後ろへ!」
リグはそう言うとリリーを後ろに避難させ、
然し、
「どうするんです?、なんかすっごいついてきますけど・・・」
「このままだと追い詰められて終わりな可能性もありますね・・・」
「どうしますか?」
「・・・戦いましょう、僕が魔法を放ったら、直ぐに核を狙って下さい、もうそれしか手段はないです。」
カザミは無言で頷き、リグの放つ魔法を待った。リグは懐からアファスが持っていた様な片手サイズの杖を取り出すと魔法を放つ準備を始める、
「祖は我が御霊に応えん、この手の内に、奴を穿ち活路を見出す一手を・・・《
唱えたリグの杖の先より、不可視の風の巨砲が放たれる、巨砲は
その瞬間を逃さずにカザミは駆け出すと、吹き飛ぶ煙が晴れるその隙間から見えた心臓の様にドス黒い魔力が脈打つ暗い紫色をした核に目掛けて、片刃刀を刺し込んだ。
キィィーン、と甲高い音が響く、刺し込んだはずの片刃刀は核に剣先を当てて止まっている。
それが意味するのは、この片刃刀では貫くことができなかったという事実だ。
「噓だろ!?」
カザミが慌てる間もなく
「クソが!・・
カザミの詠唱によりカザミを中心に地面が抉れ、周囲の地面が勢いよく
然し、何としてでも戻ろうとしているのか、残骸は壁の周囲をぐるぐると削りながら回転し始めた。
外の音からそれを察知したカザミは急いで
こうなったら、俺の両腕の全力と、その外側から押し付ける魔力を加えて、その力で押し潰す!!
カザミは両手の周囲に自分の魔力を強く練りあげ、その流れを両手の内にある核に集中させる。
「ウォラァァ!!!」
「ホウライさん危な・・───はぇ・・?」
リグは壁の内側から滲み出る、濃密で吐きそうになるほどに濃い魔力を感じ言葉を止める。
カザミと核を囲んでいた壁は、その外側から削り続けていた残骸に遂に突破され、カザミ諸共ミキサーで混ぜる様に肉塊にせんと飛んでくる。
だが、カザミは最後の最後まで諦めずに核を掴み続け、より濃く、強く、厚く、魔力を流し続ける。カザミは周囲から飛んでくる死の気配を知りながらも核から目を離さない。
キシリ・・。
限界を迎えた核はヒビ入り、遂に木端微塵に砕け周囲に霧散した。
それに合わせる様に周囲から迫ったはずの残骸は活力を失ったように真下に落下した。
周りは未だ、今やただの残骸にはなったが先程までそれが削っていた壁の土煙ではっきりとしない。
だが、カザミはただ一人、土煙の中心で徐々に実感と共に身体の内から湧き上がる声を抑えられなくなり、手に残った僅かな
叫んだ。
「よっしゃぁああああ!!!」
その直後、土煙が一気に晴れた。
どうやらリグが弱い風魔法で吹き消したらしい。
「はぁ・・はぁ・・ホウライさん・はぁ・大丈夫・・ですか?・・・・」
カザミがやり切った顔でリグを見れば、そこには心配と不思議な物を見るような視線を送るリグと、ほのかに怯えた目をしてリグの後ろに隠れたままのリリーが居た。
カザミはリグの心配する声に、グッ!!!と立てた親指と、活気のある笑顔で応えた。
「勝ちましたぁ!!!」
「はぁ・・はぁ・・勝った?」
カザミはリグに向かって大きく頷きリグの言葉を肯定する。
それを見たリグは、膝から崩れ落ち、心から安心したような顔でカザミを見ていった。
「よ、よかったぁー!」
リグは疲労でふにゃふにゃになりながらも
「っと、それでホウライさんは大丈夫ですか?何処か怪我したりしてませんか?」
リグはフラフラと立ち上がると、カザミの作った手のグッドポーズを開かせて掌を見ようとした。
然し、そうする前に足がもつれて倒れそうになる。
「おっとと、リグさん大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、すいません、やっぱり、どうも魔力にやられてしまったようで・・・」
「魔力やられ?」
「はいぃ、先程のとても濃く圧縮された膨大な魔力・・・ホウライさんのですよね?」
「あーっと、そんなに大きかったですか?」
リグを腕で支えながらカザミは聞く。
「大きかったですか?って、あんな魔力、見たことないですよぅ」
そう言いながらヘロヘロになっているリグを支えていると、リリーが口を挟んだ。
「兄貴は自分が使う魔法やら魔力の流れは上手く身体から抜けるのに、外から当てられた魔力は上手く体内から抜くことができないから、よくそうやって魔力酔いしちゃうんだよ」
「へ~」
「うぅー、気持ち悪い。でも、取り敢えず危機も去りましたし、このまま進みましょう後少ししたら四層への入口が見えてくると思います」
リグはカザミに支えられながら四層への道を目指して歩き出した。
「そうですねわかりました。」
リグさん大丈夫だろうか?、ていうか、リグさんの指やっぱり柔らくてしっとりとしてて、なんていうか、気持ちいいな。
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