ヒトキリ彼女

ヒダさん

プロローグ

 淡い光を発する、いくつかの蝋燭ろうそくに照らさ

 れた薄暗い座敷の中で、南条コウキと柊木

 茅子は、巫女装束を着た容姿端麗な少女が

 悶え苦しむ様を、落ち着かない様子で見守

 っていた。


「柊木さん、本当に大丈夫なんですか…?」


 隣でひたすら数珠を揉み鳴らす老婆…いや、

 柊木茅子に尋ねるが、彼女は今降霊術の真

 っ只中、質問に答えるどころでは無いよう

 だ。


「あの、今何が起こってるのか教えてくださ

 い、僕にとっても彩葉は大切な人なんです、

 ですから——」


 目の前の少女が僕をつついてニコッと笑っ

 た、汗だくになり、体は小刻みに震えてい

 るものの、その赤子をあやすような笑顔は

 いつもの彼女のそれだった。この汗を一度

 だけ舐め回してみたいと思った事は、彼女

 には内緒だ。


 「言ったろ、私がいるからには変な霊

 なんか彩葉には近づかせないってね」


 「貴方が居なかったら彩葉にこんな事

 させませんよ、僕が協力したのも仕方

 なく、ですからね!」

 

 そう、柊木茅子—いや、日本最後の

 降霊術士である彼女が、自分の姪である彩

 葉に降霊術を教えようなんて言わなければ

 今頃僕は彩葉とイチャイチャ出来ていたの

 だろうが、伝統文化を継承する為と言わ

 れると、断るワケにはいかなかった。


 「…っ!ゔうっ!!」


「大丈夫か彩葉!?」


「少しは落ち着けコウタ」


 彼女が手慣れた手つきでまた数珠を揉み

 鳴らし始める、僕は段々とその落ち着い

 た様子に苛ついてきた。


 「やっぱり無理だ!彩葉がこんなに

 苦しんでいるというのに!柊木さんは

 それでも彩葉の叔母ですか!?」

 

「駄目だ、触るな!」


「ぐはぁっ!?」


その時、彩葉の一撃によって、僕の体は宙に浮いた。


「彩葉…?何す— 」


「答えよ、貴様らは何者か」


コイツ、彩葉みたいだけど雰囲気が違う…


「答えなければ斬る」


「申し訳ありません!私めは南城コウタ、そちらの婆は柊木茅子に御座います!!」


「…わかった、して、私は何故ここに?」


「それは、私の姪がどういうわけか、あなたを降ろしてしまったようで…ですから—」


「帰ってほしいのだろう?分かっておる、私も急に降ろされて機嫌が悪いのでな、そうするつもりだ」


「え?では何故—」


「何故かこの体を離れられんのだ…」


「え?」


























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