悲劇の魔女、フィーネ 25 ※(残虐シーン有)

「ふ~ん…今度は西の国か…」


電話を切った後、PCで次に訪れる予定の国の情報を検索した。


「今度は動き回るミイラの話か…?何だかこれも怪しい話だな。まぁいい、今夜はこのホテルに宿泊して…明日には出発するか。う~ん…」


そして伸びをした時に、ふと目の前に観測用カメラから引き抜いた4枚のSDカードが目に留まった。


「そう言えば…なにか録画されているのか…?」


首を捻りながら、俺は1枚のSDカードをPCに挿入して再生させた。



「え…?」


突然映像が流れ始めた。それは闇の中に不気味な城が月明りを背に映し出されている映像だった。

そして、その城の中に入って行く長い黒髪の女性の後姿が映りこんでいる。


「だ、誰だ…?この女は…。そ、それに…この城は…一体何だ…?」


気付けば俺の身体から冷や汗が流れ出していた。


女性はゆっくりと城の中へと入って行き…いきなり映像が切り替わった。


 

 次の映像は思わず目をそむけたくなるかのような映像だった。

無数の狼たちが人々を襲っているのである。狼たちは逃げ惑う人々を追いかけ、喉元を食い破る。途端にほとばしる血しぶき。そして人々を無残にもその鋭い牙を身体に突き刺し、ガツガツと喰らっているのだ。


「う…」


思わず喉元から込み上げて来そうになる。


「な、何だ…こ、れは…え、映画なのか…?」


あまりにも残虐なシーン。そうだ、こんな…人間が生きたまま狼に喰われるなんてありえない。映画に決まっている。


その時…。


「え?」


狼達を引き連れて歩いている黒髪の後姿の女性が映像に映り込んだ。彼女は真っ黒なドレスを身にまとい、血が飛び交う城の中を平然と歩いて行く。その姿は…まさに…。


「ま、まさか…魔女…フィーネ…?」


そこで突然SDカードの映像は終わった。


「…な、何だ…?い、今の映像は…?」


震えながらも俺はカードを抜き取った。心臓は今にも飛び出るのではないかと思う位に早鐘を打っている。ま、まさか…この残りのSDカードにも…映像が…?

震えながら俺はもう1枚のカードをPCに挿入し…すぐに映像を見てしまった事を激しく後悔する事になる。



 2枚目の映像はさらに凄惨を極めたものだった。

そこには既に血の海の中、すでに白骨化した2体の骸骨が床の上に転がっていた。そしてその骸骨を前に、壁際に追い詰められている1人の青年と中年の男…。


「な、何者だ…。この2人は…?」


2人共、まるで中世時代の貴族が着るような服装をしている。それだけでは無い。男は腰に剣を差している。そして彼等を囲むように4匹の巨大な狼と…。


「が、骸骨…?骸骨が…う、動いている…?」


オオカミと骸骨に囲まれた2人の男は必死になって何かを叫んでいる。そしてそこへ近づく1人の人物…。足元しか見えないが、黒いドレスを着ているのが分った。


「ま、まさか…魔女なの…か…?」


すると青年は突然剣を抜き、自分の喉元に突き立てようとしたその瞬間…1匹の狼が飛びかかり、その男の剣を持つ腕を一瞬で喰いちぎったのだ。


「!!」


音声が聞こえないのは幸いだった。青年が激しく叫んだ途端、残りの狼たちが一斉に彼等に飛びかかり…。


「ウウッ!!」


もう、そこから先は見ていられなかった。彼等は生きながら腕を、足を、内臓を喰いちぎられていく。激しく暴れて叫んでいる様子が見て取れた。もし…ここに音声まで加わっていたら…俺は発狂していたかもしれない。


何故なら…恐ろしいことに…彼等は首だけになっても叫び続けていたからだ―。


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