第12話 万年筆の矢とコーヒーカップグレネード
調査団が準備を終え、出発する少し前。
僕のところに、また兵士長さんがやってきた。
「おいカグヤ。君が作ってくれた無限収納ゴミ箱はとっても重宝しているぞ! みんな荷物が少なくなって好評だ!」
「それはよかったです」
「そこでだ。君の腕を見込んで、他にも依頼をしたいんだが構わないか?」
「ええ、なんでしょう?」
「今度は遠征先で使う武器を作ってほしいんだ」
これは困ったことになった。
僕には武器なんて作れない。
「あのー、僕は家具職人ではありますけど……武器は作れないですよ? 一応、元武器職人見習いではありますが……」
「ああ、それはわかっている。だけど、この前のお鍋のふたシールドや机シールドだって、素晴らしいアイテムだったぞ? 家具を工夫すれば、君にはとてつもない武器が作れるはずだ!」
「まあ、そうですけど……。でも、やっぱり武器は本職の武器職人に頼んだほうがいいんじゃ……?」
それこそ、僕の元実家でもある【神の槌】にでも頼めばいいんじゃないかな?
ブキラは性格はぶっきらぼうで粗雑だけど、腕はそこそこいいはずだ。
「あー……それがだな、【神の槌】のブキラはいろいろと問題があるだろう? 性格にも問題があるし、それに毒の矢の前科もある。だから今回のような信用が大事な案件を任せることはできないよ。それに、ブキラは英雄ユシアとももめごとを起こしている。本当に、とんでもないやつだよ」
「そ、そうなんですか……それはまた……。でも、ブキラのところ以外にも武器職人ギルドはあるのでは……?」
「まあそれもそうなんだがな。そっちもいろいろと難しいんだ。お前のおやじさんのボーンさんへの義理立てもあって、うちの兵士団では他の武器職人ギルドに発注を出すのは難しい」
父さんのやりそうなことだ。
他のギルドに圧をかけて、利権を作り出す。
正直、我が身内ながら嫌気がさす。
「でも、だったらなおさら、僕に頼むのはまずいんじゃ……?」
「まあそれはそれだ。君のギルド【精霊の樹木】に頼むのなら問題ないだろう? 幸い、ボーン氏はまだ君の家具作りの才能には気づいていないようだし……」
「うーん、そういうことならまあ、強力しますよ」
「そうか、ありがとう!」
「僕も、父に一泡吹かせたいですしね」
このままブキラの仕事を全部奪ってやれば、ブキラは父さんからこっぴどく怒られるだろう。
父さんのあくどい商売の邪魔にもなるだろうし、僕としては気分がいい。
「じゃあ、またしばらくしたら見に来るよ」
「はい! 任せておいてください!」
◇
それからしばらくして――。
約束通り兵士長さんが武器を取りに来た。
いや、正確には武器じゃなくて家具か……。
「カグヤ、頼んでたものはできているか?」
「はい!」
僕は兵士長さんに二種類の家具を渡した。
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《万年筆の矢》
制作者 カグヤ
攻撃力 700
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《コーヒーカップグレネード》
制作者 カグヤ
説明 見方を回復させる
ポーションが入っている
回復量 250
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「おお……! でも、これは……家具なのか……!?」
「ええまあ、思ったよりも家具の範囲は広いみたいです」
「そうか、だがこれは助かる! 普通の矢よりもはるかに強力なものだ!」
「ありがとうございます! 喜んでもらえてよかったです」
こうして、調査団は僕の家具をもって、遠征へと繰り出した。
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