第20話 Sランク冒険者

 朝、みんなで真理の作った朝食を食べると、ギルドに向かうこととなった。


「じゃあ真理、よろしく」


 真理は無言で頷くとギルドの近くまで転移をした。


「おっ、おお!よく来てくれました!」


 ギルドの中に入ると、ループさんが待っていたようで、俺たちの姿を見るや否や満面の笑みで出迎えてくれた。


「調査隊たちによると、頂上ごと吹き飛ばしていたそうじゃないですか。本当に、ありがとうございます」


 ループさんは、深く頭を下げてそう言うと、高いテンションで言った。


「そういえば、Sランク冒険者への昇格、おめでとうございます。私たちの町からは、実に30年ぶりのSランク冒険者ですからね」


「そうそうSランク冒険者になっ……え?」


 急に何の話してるの?俺たちがSランク冒険者?まったく、なんて冗談を言い出すんだ?


 俺たちが混乱した様子で首をかしげていると、不意に後ろのドアが開いた。


「その件については俺から説明させてもらおう」


 ギルドマスターのおじいさんは急に入ってきてループさんの隣に腰掛けると、早々に話を始めた。


「本来ならSランク級の依頼だが、今回は特例と言っていただろう?だから、今回の依頼が成功したらSランクに昇進できることにさせてもらったんだよ」


 おじいさんはニッと笑うと、俺たちを見ながら言った。


「近い頃にSランクまでいくとは思っていたが、まさかたった2日で終わらせるとはな。これで神獣の情報が手に入るってことだが……領主様からも何かあったんだよなあ?」


 ループさんを見ながらそう言うと、話を投げ掛けられた彼は眼鏡をキラリと光らせ、興奮した様子で言った。


「そうなんです!あなたたちがマグナ湖の依頼を達成したあと、すぐに掘り始めていたのですが、ついに!その遺産の正体が分かったのです!」


 机を叩きながら、ダン!と立ち上がると、眼鏡の奥から覗く瞳を、キラキラと輝かせながら言った。


「なんと!掘った地面には固い金属でできた扉があり、その扉を開くと、ダンジョンへと続く道があったのです!依頼の報酬はその遺産の半分というわけでしたが……ダンジョンで手に入れたものを自由にしていいかわりに、あなたたちが最初にダンジョンの調査をしませんか?」


 な、なんだって~!


 何という心踊る展開だ!今すぐにでもそこに行こう!と思ったが……


「先に神獣の情報を探さないといけないから……」


 俺がそう言うと、俺のそんな心情を察したのか、ミルは呆れながら溜め息をつくと、真っ赤な双眸で俺を見据えて言った。


「別に急ぎの用じゃないからいいわよ。それに、そのダンジョンとやらには私も興味があるわ」


 ミルが妖艶に微笑みながらそう言うと、珍しく静かにしていた猫耳少女は、急に飛び上がり、


「私も興味ある!」


 大声でそう言った。


 でも、未知のダンジョンだし、何が起こるか分かんないからなあ。


 俺たちがそう考えていると、真理がポツリと呟いた。


「私が、結界を張りながら進むから、一緒に行っても、大丈夫」


 なるほど。結界とかなら危険はないのか。


「と、いうことは!調査に行ってくれるんですね!」


「任せてください。俺たちも興味があるので」


 俺はそう言うと、猫耳少女を見て言った。


「よし、そのダンジョン、一緒に行こうか」


 その言葉を聞いて、尻尾をフリフリと揺らしながらニパーっと笑うと、俺に抱きつきながら言った。


「ありがとう!おにーちゃん!」


 うわあ!なんて破壊力だ!この銀髪舐めたい!


 そんなことを考えていると、ミルがジト目を向けていることに気づいた。


「ど、どうした?」


 俺がそう聞いても無言でジト目を続けていたが、しばらくしてそっぽを向くと、俺に冷徹な視線を向けながら言った。


「ロリコン」


 ろ、ロリコンだからどうしたってんだ!俺はそんなお前も大好きだ!


 俺たちのそんなやり取りを見ていたギルマスとループさんは顔を見合わせると、二人して笑った。


 ミルは恥ずかしそうに頬を赤らめると、俺たちに背を向けながら言った。


「ほら!もう行くわよ!」


 そう言って扉を開けたミルに続いて、俺たちも外に出ると、ギルマスとループさんは笑いながら俺たちの後ろ姿を見ていた。



 ギルドの酒場まで行くや否や、俺たちの姿を見た冒険者たちは、口々にこう叫びだした。


「よっ!Sランク冒険者!」


「このギルドの30年ぶりのSランクだ!」


「最速でSランクまで上がった冒険者様は連れてる女までSランクじゃねえか!英雄、色を好むってな!」


 俺は、そんな冒険者たちの騒ぎ声を鬱陶しいと感じながらも、少しの楽しさを覚えて外に出ていった。


 俺の顔をじっと見ていた真理は、嬉しそうに口元を上げると、俺を見て言った。


「優、楽しそうにしてる。優が楽しそうにしてると、私も楽しい」


 俺を見たままにっこりと微笑むと、いつもの無表情に戻った。


 そんな俺と真理のやりとりを見ていたミルとリークは、俺に聞こえないように猫耳少女に何か吹き込んでいる。


 何の話か分からないが、3人とも楽しそうにしてるからいっか。


 そう思いながら指輪の空間に入ると、真理たちが帰ってくるまで昼寝を始めたのだった。

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