第二十話 『誕生日を祝おう③』

前回のあらすじ。

高瀬さんに対してうちの母親からの提案で名前で呼ばなくてはいけなくなった。

誰か助けてくれませんかね!?(懇願)


「あの高瀬さ」

「(ニコッ)」

「…………魅依さん」

「はいどうしました大輔くん?」


別に圧に屈したわけじゃないんだからね?

ただ何となく場の空気を読んで名前呼びしただけなんでからね!

……ぼっちのくせに空気を読めるのかって?痛いところをついてくるじゃないか(泣)


と、それよりも…


「何か、距離近くないですか…?」

「そうですか?ただソファに一緒に座っているだけじゃないですか」


うんそうだね。一緒に座っているね。

俺と高瀬さんの間隔がほとんどないってことを除けば全く?問題はないね。

今現在、俺と高瀬さんは肌が触れ合うんじゃないかって言うレベルで近い。

……我が理性は良く働いてるよ本当に。

今だってちょくちょく体が接触するのだが、その度に体の柔らかさやらめっちゃいい匂いがして頭がおかしくなりそうなのだ。


◯貞にはちょっと刺激が強すぎるかなぁって…


それを言葉で言えればいいんですけどね!?

こんなこと言ったら高瀬さんからしたらキモいなんてものじゃなく、それこそ普通?だったら絶縁ものだって。

何で普通?ってクエスチョンマークをつけたのかって、そりゃ俺が普通って言えるほど対人での経験値を持っていないからだよ。


まずい、このままじゃ男の大事な息子が起立してしまう…

この状況を打開出来る策は、何かないのか…!


と、思考を巡らせていると…

ガチャっと玄関の方から音がしたと思ったら、


「二人とも、今帰ったぞ…?」

「おかえり父さん!」

「(チッ)」


とそんなタイミングでちょうど父こと葉山剛毅が仕事から帰宅した。

いやぁ失礼だけど、今までこんなに父さんが帰ってきたことを喜んだことなんてないかもしれない…!


あと高瀬さん今なんか若干怖いオーラデテタヨ?


「……えー、その子が例の高瀬って子か」

「あ、うんそうだけど言い方よ…」


例の、とかやばいやつのことを言ってるみたいで父さんの顔も相まって相当怪しくなってるんだけど…?


「…大輔、風呂入って来い」

「何でさ!?」


俺今日の主役なんですけど!?んでもってその主役が風呂に入って他の人がパーティーとか、一体いつからここはいじめの会場になったんですかねぇ!?


「まあまあ〜大輔〜、剛毅さんも〜魅依ちゃんと話をしたいのよ〜」

「いやだったら別に俺いても良くない…?」

「そう言うところを察せれないといい男にはなれないわよ〜!」

「余計なお世話じゃい!」


ああもうわかったわい!風呂に入ってくればええんじゃろ!

もう知らないもんね!








大輔くんが若干不機嫌になりながらお風呂に入る準備をするために洗面所へ向かった。若干いじけかけていたが、そんなところも可愛いと思ってしまった自分は、もう大分堕ちきっているのだろう。


それよりも今はお父様だ。

私と話がしたいと、本日の主役である大輔くんを除いて、私と話したいことがあると言っていたが…


「……………」

「………あの」


無言。


「……………」

「……剛毅さん〜?しっかりと口に出して言わないとわからないわよ〜?」


お母様からの声で、ようやく重い口を開いた。


「……君は、息子のことをどんな風に思っているのだろうか」

「え…?」


質問の意図がいまいち汲み取れず困惑していると、


「こんなことは本来、俺のような親が口を出す問題ではなく、失礼な行為であるとは重々承知の上でもう一度聞こう。君は、息子のことをどう思っているのだろうか?」

「………えっと」

「質問を変えよう。君は、息子に近づいて何を考えている?」

「……!」

「君も知っているだろう?あの子は特殊なんだ。周りに異常なほど気付かれにくい体質のせいで、友人も満足に作れず孤独を強いられた。そんな息子が、ある日突然友人ができたと喜んでいた」


確かに彼は私との些細なやりとりでも喜んでいた。


「それを見て私たちも嬉しく感じたさ。だが、その一方でこうも疑ってしまうのだ。あの子は嘘をつかれているのではないか、騙されているのではないか、と」

「………」

「さっきも言ったがあの子は長い間、私達を除けば会話をすることができる者は皆無だった。だから対人での経験も乏しく、詐欺にかかっている可能性も少なくなかった。だからこそ、君が今日ここにくることを許可したのだ。君が本当はどういう目的で動いているのか知るために」

「………」

「さてもう一度問おう。君は息子に近づいて何を考えている」

「………ふう」


もう、その質問の答えは前から私の心の中に存在している。

あとは、それをしっかりと告げるだけだ


「息子を傷付けるようじゃただじゃおかな…」

「お付き合いしたいと考えています」

「……は?」

「あらあら〜!」


お父様は唖然としているが、私は止まらない。


「お父様の疑問も不安ももっともな話で、お二人から見れば私はよく分からない、息子をたぶらかそうとしている女、というのが印象だと思います。だからこそもう一度言います。私は大輔くんのことが好きですし、お付き合いしたいと考えています!」


確かに親からしてみれば、今までずっと孤独でいた息子がある日突然友人ができたと言ったら、当然何か嘘をつかれているのでははないかと疑ってしまうのは当然だろう。


しかし!しかしです!この彼に対しての想いを嘘呼ばわりはさせません!

私は彼のことが大好きです!


「あー、えちょっとまって、それ、私達に言って大丈夫だったのか…?」

「はい。お父様達の疑問を晴らせるのであれば何の問題もありません」

「ええ〜…?」

「あらあら〜!それでいつから好きなのかしら〜!」

「それは……」


私の気持ちを告げた後は、お母様に大輔くんへの想いを質問された。

改めて口に出してみると、彼のことがもっと好きになったような気がします!


ちなみにその時お父様は空気でした。


「私、今日はかっこよかったはずなのに…また忘れられた…」







「何話してんのかなー、俺いじけちゃうんだからー、あったかいんだからー……何やってんだ俺」


こんな独り言があったとかないとか…

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