第十二話 『おうちパーティーの予定を立てよう(明日)』

あらすじ


あれ、今俺の家に来るって言った?



俺の名前は高校生陰キャ葉山大輔。最近知り合ったばかりの女神様こと高瀬魅依さんと、昼休みにご飯を食べていると、誕生日を祝われることになってしまった!祝ってくれることが嬉しすぎた俺は、俺の家で祝うことになることを止めることが出来なかった!目が覚めたら……


「夢、だったらよかったんだろうけど……」


やたら喧しいチャイムで体を起こす。

午後の授業は、今日の昼休みに起こったことが色々ありすぎて全く集中できず、居眠りしてしまった。

だって、明日高瀬さんが俺の家に来るんだぜ……?

嬉しいけど、嬉しいんだけどね?


こう、なんと言いますか。

手順というものがあるじゃないですか。

レベルっていうものは、一つ一つコツコツと上げていくものであってですね。

やっぱ序盤は弱い敵から倒していくものじゃないですか?


今の俺は、王様からヒノキの棒をもらってすぐに魔王様と一騎討ちみたいな状況である。

うん、無理ゲー。

某ファ◯ナルソードやら、仮面ラ◯ダーサモ◯ライドよりも無理ゲー。


けど状況は変わらずに、放課後になってしまった。

明日のことについて、母さん達にも話さないといけないし。

ていうか具体的にどうするのか、まだ高瀬さんから聞いてないし。

はあ……まあ、なるようになるか。





「葉山さん!」

「…………え」


現在位置、玄関前。

奇跡的に周りに人がいない状況。

俺は高瀬さんに話しかけられた。


「葉山さんはこのあと用事ありますか?

「いや、その、ないです」


え?放課後ってみんな何するの?普通は家にまっすぐ帰るよなあ?ゲーセンとかご飯食べに行くぅ?

そんなこと俺したことないんですけどお?

いや、気づかれることが滅多にないっていうか誘われることが一歳合切ないから仕方ないんだけどさ。

…自虐はみんなやめようね(泣)!


また話が脱線した。


「良かったです。では明日の予定なんですけど、少し時間をもらえませんか?」

「え、あ、はい」


なんだ。明日についての話かよかったよかった。

で、どこでするの…?






今まで近寄ったことすらないめちゃオシャレな喫茶店に連れて来られた(強制)。

やべーどうしよう。場違い感が半端じゃあない。


「注文が決まったらお呼びください」


コトッ。

…………あの、水、一つしかないんですが。

いやいいんですよ別にね?今まで両親と外食した時もこんなこと何回もあったんで。

別に、気にしてなんかないんだからね!?


「……一つお水が足りてないよ、甲斐田ちゃん」

「「え」」

「さっき来た高瀬ちゃんともう1人、男の子がそこにいるでしょう」

「え、あ、すいません!すぐに用意します!」

「あ、え」


き、気づいていた、だと?

バカな!高瀬さんですら初めて会話した時はすぐには気づいていなかったはずなのに!


「気付いていましたよ葉山さん」

「え、でも」

「気付いてましたー!」

「はい」


だ、そうです。

てかさっきの人、何者?


「流石に、入って来たお客さんのことに気づけないのは、店主失格だからね」

「おお……」


すげーー!店主かっけええ!!

これからマスターって呼ぼう(心の中で)


「別にマスターって言ってくれてもいいんだよ?」

「え」


普通に心読むじゃん。なんですかあれですか。高瀬さんといいマスターといい、ここら辺の人は人の心読むのがデフォなんですかね。


「いや、君は案外わかりやすいんだけどね」


またこころ読まれたんだけど!?

てか、似たようなこと高瀬さんからも言われた気が…


「マスターなら気づくと思ってましたが、気づかなかったら私が言ってました」

「はは、手厳しいね」

「せめて信頼してるって言ってください」


お、おお。気安いやり取り。

ていうか。


「た、高瀬さんは、ここの常連、なの?」

「まあ、常連って言われるかどうかは頷きかねますが、比較的来ている方ではありますね」

「へぇ…」

「マスターのコーヒーとナポリタンは美味しいですよ」

「へぇ…!」


なるほどなるほど。コーヒーとナポリタンね(メモメモ)

一人で来れるかは考えないものとする。

別に?一人でも余裕で来れるし?周りからあの人ぼっちでこういうとことくるんだ〜とか思われたらどうしようとか自意識過剰っぽいことなんてこれっぽっちも考えてないし!?

……嘘はいけないよね。


「でも今日はコーヒーだけにしましょうか」

「は、はい」


高瀬さんが絶品するコーヒーか。楽しみだなー!



〜コーヒータイム〜

(べ、別にコーヒーの味が分からなくてカットしたわけじゃ無いんだからね!)




「さて、明日の話なんですけど」

「は、はい」


来た。今日の本題。

ていうかマジで俺の家に来ちゃうのか?流石に高瀬さんの冗談だよな?


「いえ、行きますよ」

「え」

「お祝いしに葉山くんの家に行きますよ」

「え」

「もちろん葉山さんがダメと言うなら諦めますが」

「い、いやダメってわけじゃ…」

「ならいいですよね?」

「…はい」


はやまはめのまえがまっくらになった!

て言うのは冗談で。

いや、冗談抜きに頭がクラクラしてきた気がする。

嫌ってわけじゃなく。緊張と恥ずかしさで死にそう。

……陰キャは美少女が家に来るって言うとみんなこうなっちゃうんだよ!!(偏見)


「明日一日って用事ありますか?」

「い、いや明日は、なんも用事とかは、ないです」

「なら、葉山さんの家にお邪魔する前に少し二人で一緒に出かけませんか?」

「え」

「……ダメですか?」

「いえ行きましょう」


ふたりでおでかけ?

………これデートじゃん!デートってやつじゃん!!

今まで生きてきたこの15(明日で16)年間、全く縁のなかったデートってやつじゃん!!!

はあ、はあ……もちつけ俺。自惚れるな俺。相手はあの高瀬さんだぞ。自分のこと好きなんじゃないかとかいうキモい陰キャみたいな勘違いするな。

これはあくまで高瀬さんからの慈悲だ。

……よし、落ち着いたぜ。


「そうですか!では明日10時頃駅前待ち合わせでどうでしょうか」

「そ、それで」


明日一日中高瀬さんといるのか…

俺、死なないよな?










「高瀬ちゃん、あんまり無理させちゃダメだよ?」

「わ、分かってますよ」

「本当かな〜?昔から君はちょっと強引なところがあるからね」

「それは昔の話です!」

「ふふ。明日楽しんでくるのもそうだけど、楽しんでもらわないとだめだからね?」

「……はい」

「高瀬ちゃんも遂にかー……青春だねえ」

「うるさいですよマスター!」

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