第十話 『放課後とらぶる 2』

「葉山さんは雨って嫌いですか?」

「…嫌いでは無いけど、ランニングとか、日課をこなせないから、その…」

「好きでもない、ですか?」

「えっと、風景とかは、綺麗だと思う、かな?」

「なるほど…ちなみに私はどっちだと思います?」

「雨が、好きか嫌いか?」

「はい」

「……好き?」

「…な、なんでそう思ったんですか?」

「今も、楽しそうだから」

「……ご想像にお任せします」


みんな!俺、ちゃんと会話できてるぅぅぅぅぅ!!!

ふ。自分で自分の成長速度が怖いぜ…

はい嘘です。調子乗りましたすいません。

でも、でも!

会話はできてるくね?

何話したかはよく思い出せてないけどね!


「葉山さん、大丈夫ですか?」

「え」

「さっきなんか魂抜けてる様な感じでしたよ」

「…マジっすか」


くっ!喜びすぎたか。

だが!だが、待ってほしい。今までろくに人と話すことが出来なかった俺が、こんな些細な会話とて喜ばないでいられるか?否!否である。だって皆さんは学校生活で普通に会話してるじゃないですかー。

ボク、ハナシスルヒト、イナンダヨ?


「葉山さんの家まで後どれぐらいですか?」

「あと、五分くらい、かな」

「五分ですか…」

「?」

「い、いえ。なんでもありませんよ」


なんだ?今一瞬残念そうにした気が……いやいや自意識過剰かよ俺は!

流石に今のは自分でもちょっとないわー……

あれか、あまりに人と関わり持ってこなかったせいで妄想ばかりが膨らんでいってるのか…

ぴえん。

ぱおん。

すいません……


あ。あれは…


「そこです、俺の家」

「着いてしまいましたか…」

「えっと、高瀬さん」

「なんですか?」

「いや、その、」

「……」

「今日は、ありがとう。助かりました」


言えたーー!俺お礼言えたーー!当たり前だけど(ダジャレジャナイヨ?)


「ふふ。いえ、どういたしまして。あと敬語じゃなくていいですからね?」

「……分かった。じゃあ、さようなら」

「さようなら、葉山くん。また明日」


そうして、高瀬さんとの下校もとい相合い傘は終わりを告げた。





家に入って、シャワーを浴びて、机に向かって。

ここ最近をを振り返ってみて。



ことの始まりは、高瀬さんをナンパ?から助けて。

そこからなんやかんやで仲良くなって。

高瀬さんに誘われて一緒に弁当食べたり。

今日にいたってはやむを得ずとはいえ、相合い傘で一緒に下校したり。


うん。

どうしてしまったんだ、俺。

友達ができたとか、話し相手ができたとかで喜んでいたけど。

改めて現状を認識してみると、友達が学校の女神様こと高瀬さんただ1人。

流石にやばい。

何がやばいって友達の数が少なすぎるのもそうだし、1人しかいない友達が高瀬さんっていうのもやばい。

結果全部やばい。

でもなー。俺影薄すぎて気づかれないんすよー。高瀬さん以外。


はぁ、なんとかなんねえかなー。

なんねえよなー…

ぴえ……なんでもないですはい。

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