第8話 調査、私の存在

あれから様子を見るものの、どうやら蒼介達の事は調べられていないようだ。


何も変わらない日々を送っていたんだけど――――



「ヤッター!取れたっ!」

「君、凄いね」

「偶々ですよー……ん?」



《誰?》



UFOキャッチャーで、夢中になっていた私に突然話しかけてくる人影があった。


振り向く視線の先には、5人の男の人。


明らかに不良だ。




「君、可愛いね」

「えっ?」

「ちょっと付き合ってよ」

「…ごめんなさい…私、連れが…」

「良いじゃん!」



強制的に連れて行かれる。



「や、やだ!離してっ!」



「良いじゃん!」



「………………」




《…どうしよう…?》




「…希美…?」



私の姿を見掛ける南波さん。


私はそんな事とは知らず、強制的に連れて行かれる。



「…アイツ…1人なのか…?」



南波さんは、後を追った。



「…蒼介達の姿がねーって事は……やっぱり…」




「ちょっと!何?離してよ!」


「男友達といる女って君でしょ?」

「えっ?」

「いつも、つるんでるもんね?」

「やる事やってるんでしょ?」

「本彼じゃないんでしょ?」


「それは…」



《私…やっぱり、そういう目で見られてるんだ…》



「本彼じゃないなら、俺達の相手もしてよ」


「私は、そんなつもりで一緒にいるわけじゃないよ!」


「どうだかな〜?」




《…こいつらには…通用しない……》




「そうか…じゃあ、相手してあげても良いよ?…違う意味でね!」




ドカッ

相手を蹴っ飛ばした。




「な…に…?」


「この女…」


「ほら!相手して欲しいんでしょ?」



「おいっ!話が違うじゃねーかよ!」

「どうなってんだ?」



「……………」



「失礼しましたーーっ!」




彼等は逃げるように足早に去った。




「……話が違うって…どういう…事…?」



《…つまり…それって…そういう目で見られてるって事…?》


《もしくは…噂…?》






どちらにしても


私の存在は


男とつるんでる女であり


本彼でもないとなれば


SFだけの関係で


やる事やっている女だって事


遊んでいる女?


都合の良い女?






その時、人の気配を感じた。




《誰…!?》



振り返ると同時に



「希美…?大丈夫か?」


声がした。



「えっ?」




人影が現れる。



「…南波…さん…?」




そして、私に歩み寄ると、私を、抱きしめた。



ドキッ



「わわ…何?どうしたの?」

「無事だったんだな?」

「う、うん…。ちょっとやり合ったけど」

「相変わらずだな」

「うん」



「怪我はないか?」


そう言いながら、抱きしめた体を離す。



「大丈夫だよ」

「良かった」

「心配してくれたんだ」

「一応は」

「一応って…」

「嘘だ!」



私達は笑い合う。




「それより、南波さん。聞いて下さい!私の事、変な噂が流れているかもしれません!」


「変な噂?なんだ、それは」



「なんか…SFみたいな…感じ?さっき、5人の人達の話では、話が違うとか言ってたし…やっぱり…蒼介達といるからかな…?そういう目で見られてるんじゃないかと…」



「だったら…尚更、単独行動は控えた方が良い。下手すれば、お前は本当に傷つく事にもなる。俺と一緒にいる所を見られたら、更に状況は悪くなる」


「…一層の事…女になった方が良いのかな…?」


「希美」

「ん?な…に…」



ツンとオデコを突つかれた。


ドキン



「簡単に身体を預けるな!」

「えっ?」

「好きでもない相手としても後悔するし傷付くだけだ」



「………………」



「確かにお前の今の状況からしてみれば危険かもしれないが、自分の身体は大切にしろ!」



「………………」



「いいな!」



「……………」





お兄ちゃんみたいに


怒ってくれる



本当にあなたは


犯罪者…なの…?


時折見せる優しい笑顔は


私の心を夢中にさせる




「おいっ!分かったのか?」

「は、はいっ!」


「よし!とにかく、3人の所に戻るぞ!今、ここに一緒にいないだけなんだろう?それとも一人なのか?どうなんだ?」


「蒼介達も一緒だったけど…まだゲームしてると思う」


「そうか。どうする?このまま帰るか?」

「…帰ろうかな…?」


「じゃあ、俺が一先ずいるかもしれない奴等の所に行く。お前は連絡先は交換したのであれば連絡して帰るといい」



「帰る前に…一緒に行く。連絡先、交換してないし」

「そっか。じゃあ行くか」

「うん…南波さん」

「何だ?」

「手、繋いでいい?」

「やだ!」

「だよねー。言ってみただ…け…」



グイッと肩を抱き寄せられた。


ドキーッ



「……!!!」



《わわ…密着感と至近距離、過ぎる!!》



「手を繋がない代わり。顔真っ赤だぞ?希美」

「当たり前じゃん!純情な乙女だから」


「……純…情…?は?何、ねぽけた事言ってやがる。所詮、高校生のクソガキだろ?」


「はあっ!?さっき、その高校生のクソガキを心配して後でついてきてたの誰!?」



私達は騒ぐ中、笑い合い、抱き寄せた体を離し手を繋いで移動する。




なんだかんだ言って


南波さんは優しい


犯罪者なんて思わせない




そして、3人を見つけた途端、南波さんはイタズラ心が芽生えたのか、私に、シーッという仕草を見せ、背後から3人の頭を軽快にテンポよくリズムカルに打った。



「ってーー!」

「ったぁーー!」

「痛っ!」



「誰だよ!?いきなり人の頭……わわ…南……っ!」


口を塞がれる蒼介。



「いきなり頭打たんといて下さいよ!」

「そうですよ~」

「つーか、何で希美も一緒?」


「お前らがゲームに夢中の時、希美は5人の不良グループに連れて行かれていたんだぞ!」


「えっ!?」


「そうなの〜?希美ちゃん」



コクリと頷く私。



「その件に関して、お前等の耳にも入れておく事がある」


「何か問題ありですか?」

「ちょっとな…希美、お前はどうする?帰るか?」



南波さんが私に尋ねた。



「一緒に行く」

「そうか」



私達は移動した。


南波さんのアジトだ。




「あれ…?他の仲間がいてへん」


「いない。つーか…出入りさせてねーんだよ。状況が厳しいしな」


「あー、そうなんや」


「ああ。一回仲間が、やられてる!その後、何度か俺の仲間の情報が入って来てるし。相手が予想つかないからな。多分…タチの悪い輩…相手が、裏社会と繋がっている感じだろう?やり方が汚いからな」


「それで、本題は?希美ちゃんのが、絡んでいるんじゃないんですか?南波さん」



普段と話し方の違う優人君が尋ねた。



「流石に勘が鋭いな?優人は」


南波さんが苦笑する。



「南波さんが脱獄してきたくらいだから〜覚悟はしてますよ〜南波さん。何が起きてもおかしくない現状でしょ〜?」



そう言う優人君は普段の優人君だ。


クスクス笑い南波さんは話す。



「そうかもな。しかし、お前らには迷惑かけたくはない。仲間に入るように言ってあるが、一緒にいない方が良いだろう?実は、希美が変な噂…もしくは、見た目で決められている可能性のある情報だ」


「情報?」

「噂?」


「SFだという情報がな。明らかに都合のいい相手なっているんだと思われる」


「SF…っったら…ヤり友?」


「ストレートすぎやろ?ちゅーか、それヤバイんちゃうん?」


「それって…俺達とつるんでるから?」


「その可能性は高いだろうな。そういう意味で危険な状況だ」



「………………」



「じゃあ…希美ちゃん…真っ直ぐ帰る方が良いのかな〜?」


「一層の事、男装しちゃう?可愛い系男子!」


「いやいや、バレるやろ?」

「やっぱり?」



そして、結果的に今の所、何の案もなく――――





「それよりも、南波さん、いつから希美って?」

「あー、そうやん!」

「いつから、そういう関係になったんですか〜?」


「別に。話し合った結果だが?俺からしてみれば妹みたいな感じだしな?ちゃん付けって、俺が呼ぶキャラじゃねーだろ?」



「確かに想像つきませんね」

「そうですね」


「希美ちゃん、この際、了さんなんて呼んでみたら〜?」


「えっ?」


「希美ちゃんなら女の子だし〜南波さんも嫌な気しないでしょ〜?」


「まあ、俺は別に拘らねーし」

「いや…年上なので無理です」

「だとよ?」


「話す時は、ついタメ口なっちゃってる時があるかもしれないですけど…」


「まあ良いんじゃないか?後、お前ら希美に連絡先くらい教えてやったらどうだ?」


「えっ?あー、そうだ!」


「コイツの事、友達として認めてやってるなら連絡先交換しても良いんじゃないか?」



そして、私達は、連絡先を交換し合った。











































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