第29話 16日目 2022年5月29日(日)

 昨夜は早めに10時ごろベッドに入ったのだが、そのおかげで朝も早く4時に目が覚めた。本格的に睡眠時間6時間の体になったらしい。日本人の睡眠時間は世界の中でも一番に短いと言うけれど、その一翼を担っている気分になる。

 リビングに行って、テレビをつける。日曜日の朝、だいたいはNHKやNHKBSの自然や紀行番組をぼーっと眺めることが多い。世の中にはまだ実際に見たことのない自然の風景や行ったことのない土地というものがたくさんある。若いころはそういうところに行ってみたいという強い気持ちがあったが、歳を取るにしたがって億劫になりテレビで観るのがちょうどいい感じかなぁ。それでもまだ行ったことのない場所の中に幾つか日本の街があり、近いうちに行ってみたいものだと思っている。

 例えば北海道、金沢、伊勢・・・。連れ合いは旅行に興味がないようなので、行くとしたら一人で行くことになるのかしらん。まあ、一人旅は仕事でも慣れてはいるし、勘もそれなりに働いて、外国を含めて一人で旅行して困ったことは殆どないけれど・・・。

 7時になって「所さんの目がテン」を見ていると林業の話をしていた。戦後、復興のために植えたスギやヒノキは今となっては花粉症の原因の迷惑な存在のように思われているけれど、本来日本は常に林業を重要視してきた国で、江戸で大火が起こるせいで、近隣の山は常に禿山になる危機に瀕していたのである。だから、戦争が終わって植林を非常のこととして奨励したことは極めて自然な事であったのだが、実際は木が生え揃う前に輸入木材を使うようになったし、工法も変わってしまったのだろう。番組でも指摘されていたけれど林業とは100年先、最低でも60~70年先のことを考えてなされる事業である。しかし諸外国でも森林伐採によっていろいろな問題が起こっているわけだから地産地消の考え方で日本は森林に投資をすべきだとは思う。それに本来、日本の木材が日本の気候に最もよく耐える木材のはずであって、古代の建築、例えば斑鳩の法隆寺や宇治の平等院が残っているのはそれが日本の木材によって建てられているからだと考える。

 日光だったか、漆塗をするのに日本の漆では足りなくなって中国のものを使ったら数年でダメになったという話を聴いたことがあるが、それは漆の育った環境と使われた環境が違ったためではないのであろうか。従来、住宅というのもやはり」先祖代々長く使う物として建築されてきた。今のように「消費財」的な性格を帯びたのは戦後のことであろう。

 ロンドンにいたときに住んでいたフラットはチューダー朝様式でもともとの建物は1800年代のものであった、と聞いた。確かに建物自体の古さによる問題(窓が閉まらない、暖房が時おり効かなくなる)もあったが「住」で発生する廃棄物はもっとも多く問題を起こしていると聞く。最近になって漸く100年住宅とか聞くこともあるけれど、住宅は最低そのくらいのスパンでたてる必要があるように思える。


 昨日買ってきたラサールのブラームスとベートーベンを聴く。ラサールはその実力に比して高い評価を受けているとは思わないが、彼らの演奏の選択肢は非常に面白い。ベートーベンの後期の四重奏曲はブラームスへと続くのではなく、ベルグへ繋がり、ブラームスはベートーベンの中期のSQから繋がれている。その曲の選び方に興味がある。


 昼食を終えて西小山まで足を延ばした。目黒線は今は地下を通っていて、その上を緑道公園が続いて西小山まではそれを通っていくことができる。途中の武蔵小山駅の先に交番があって指名手配写真が掲げられているのだが、その横に松重豊さんが「テロは絶対許さない」と仰っている写真があって、そのあまりにアウトレイジな表情に指名手配の写真の印象が全て飛んでしまうから、あれは止めた方がいいなぁ。とにかく行方不明者よりも犯罪者よりも松重豊さんしか記憶に残らない。「孤独のグルメ」の井之頭五郎役の時は穏やかな表情なのだけど・・・。

 夜は連れ合いの作ってくれたガパオライスを食す。カレーほどスパイスがきつくないせいか美味しくいただいた。体温は35.8℃。血圧は97/51と低め。脈拍は75と僕にしては早め。

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