第2話 最強の敵、現る

 3人は、武器屋の前で、立ち止まっていた。武器屋は、街の外れにあり、古い作りをしていた。夕日が差し込んできて、日暮れを告げていた。


 「これ、欲しい」と、つむぎは窓に張り付いて、とある剣を見ていた。ところが、値札の価格が、高い。もうかれこれ、1時間以上だ。

 「あきらめろ」と風神来は、あきれている。そして、ホムラーは、そんな、つむぎを見て、黙っていた。

 人は、ものを見る目が、養われるという。つむぎは、これまでの戦いで、半月刀では、十分に闘えないと、感じていた矢先だった。これほどの価格では、生半可な賞金首では、買えない。つむぎが、あきらめようと気持ちが、傾いた時、店主が声をかけた。


「その剣は、真紅の剣という。お嬢ちゃん、賞金稼ぎだね。」

「そうです、この剣で、強い妖怪たちを、退治したい。」名前を聞いたつむぎは、その名前に、魅力を感じた。また、欲しいという気持ちが、再燃してくる。


「でもね、この剣は、またの名を、呪いの剣と言われている。なぜなら、あまたの妖怪たちを、倒してきた、その返り血が、染み込んで、いるんだよ」

 つむぎは、その話を聞いて、震えた。だから、今まで売れなかった剣。これを、使いこなせるかしら。そして、呪いの具体的内容は。それから、店主は、話を続けた。



「元の持ち主は、今となっては、わからない。なにしろ、あちらこちらで、売り買いされてきたからね。妖怪たちの怨念が、剣に宿っている。実は、私も、供養して、手放そうと思っていたところだ」店主は、ため息をついた。そして、つむぎの剣を見ていた。


「つむぎ、妖怪たちと闘うのに、必要なのは、武器よりも作戦だ」と、ホムラーが声をかけた。つむぎを、無理させたくないホムラーだった。

「そんなものは、使いこなせない。俺たちが協力するから、諦めろ」と、風神来は、珍しく、慎重になっている。つぐみは、反発した。

「何よ、まるで、人を子供扱い」人は、反対されれば、されるほど、欲しくなる。


「お嬢ちゃん、こうしよう、しばらくの間、その剣と引き換えに、この剣を、貸すので、試して見てくれないか」店主は、つぐみの意思に、なにかの思いを、抱いていた。

「本当ですか?でも」

 と、つむぎは、ホムラーと風神来を、交互に見た。二人は、これだからという顔をしていた。つむぎのわがままは、正直ここまでかという思い。


「黙ってるなら、決めた」と、つむぎは、真紅の剣を手に取った。それは、均一な色では、なかった。さまざまな紅色が、混ざっている。つむぎの手には、しっくりきた。

 ホムラーと風神来は、黙って店を出た。店主は、その様子を見て、こう言った。

「これから、起こる闘いが、終わったら、ある決断をしてもらう」やけに、神妙だ。


「決断。?」つむぎは、あっけにとられた。なんだろう、お金の話かな。

「それは、終わってからの、お楽しみということで」店主は、ニヤリとした。


「呪いって、何かな」つむぎは、店の外にいるホムラーに、話しかけた。

「普通の剣では、ないことは、確かだな」と、他人事のように言う。そして、風神来は、

「それで、報酬が減ったら、おれは、一抜けするぜ」と、あくまで報酬が大事。

「なによ、結局二人は、反対なのね」つむぎは、すねた。


 ある村についた。時間は、昼間。なのに、人の姿が見えない。家の扉も空いていない。まるで、幽霊村のようだった。

「ここ、おかしい」とつむぎは、ホムラーに、話しかけた。

「ふむ、何やら、妖怪の気配がするな」

「まさか、村の住民は、全て全滅か」と風神来。それは、今まで、出会ったことがない、強い敵。

「逃げる、それとも闘う」と、つむぎは、2人に問いかけた。つむぎも、異様な雰囲気から、手に負えない敵かもしれないと、察知した。

「もしかしたら、これは、ブンガクロンの仕業かも、しれん。」と、風神来は、難しそうな顔をした。

「俺も聞いたことが、ある。妖怪の中の妖怪と言われる、強さを持っていて、残虐さは、酷い。」とホムラーが、たしなめるように、つむぎに言った。


 つむぎは、反発した。

「そんな、妖怪だったら、賞金もでかいでしょう。風神来」そして、ホムラーにも、

「何があっても、ついてくるでしょう?」と、まくしあげた。自分も、勝てる相手かどうか、分からない。でも、3人なら、やれるかもしれない。なにより、これ以上、その妖怪を、のさばらさせては、世の中のために、ならない。


「つむぎ、闘うと言うなら、それに従おう」とホムラーが、つむぎの顔を見て言った。

「賞金は、欲しい、しかし、命の危険が迫ったら、俺は、トンズラさせてもらう」と、風神来は、乗り気では、なかった。

「この剣が、どこまでやれるか、試してみる」つむぎは、勇気を振るいたせた。


 情報は、何も無く、妖怪が、どこに潜んでいるか、わからない。しかし、妖気だけは、村をおおっている。こんな時は、体力を消耗しないことだ。むやみやたらに、動かない。作戦も何も、相手がどんな攻撃を、してくるか、また、1匹が複数かも、分からない。


 あたりは、暗くなってきた。すると、つむぎの持っていた剣が、光り始めた。

「何、この剣、辺りが、はっきり見える」

 すると、、小さなヘビが、地面を走り去っていくのが、つむぎに、見えた。あの方向にいけば、もしかすると、ブンガクロンに、行きつくかもしれない。

「行こう」という、つぐみの掛け声で、3人は、その方向へ走った。


 そのブンガクロンは、満腹の状態で、眠っていた。そして、ヘビが敵が来たことを、知らせると、即座に、その巨体を、ふるい立たせて、戦闘体制に、入ったのだった。なにしろ、食後のデザートみたいなものだから。これまで、何十人もの賞金稼ぎを、喰らってきた。命乞いをする人間もいて、面白い。


 その頃、ホムラーは、つむぎに、言った。

「その剣の、封印を、解いてやろう」

「えっ、ホムラー、そんなことが、できるの」つむぎは、驚いた。ホムラーは、一体どういう能力を、持っているのか?半分は、人間で、半分は、妖怪。そして、重力使い。

 ホムラーを、もっと知りたい思いにかられた、つむぎだった。


「アヒャヒャヒャ、食われに来たか」ついに、ブンカクロンと、対峙した。そこは、広大な平野だった。見るからに、15メートルは、あるような全身。そして、目は、3つある。それでいて、動きは、早い。3人は、瞬く間に、取り囲まられた。


「図体だけでかくても、おつむがさー」といって、つむぎは、剣を構えた。

「行くぞ、つむぎ」とホムラーが言った。

 つむぎは、どこを攻めるか、見定めていた。自由落下からの、攻撃。すると、ブンガクロンは、その高さに追いついて、毒液を、つぐみにかけた。

「しまった」つむぎは、まともに、その毒液を受けた。体が、しびれてくる。ホムラーが、そんな、つむぎを、受け止めてくれた。


「そのまま、していろ」と、ホムラーは、ヒーリングを使った。まるまるうちに、つむぎの体から、毒が消えていく。


 見かねたブンガクロンは、火を吐いた。それに対して、風の防火壁を作る風神来。突破口は、あるのか。つむぎは、ある決心をした。


「あの中に入る」つむぎは、これ以上、戦いを長引かせることは、不利だと感じていた。と同時に、

「ホムラー、お願い」

「行け、つむぎ」ホムラーは、まさに、仁王立ちしている、ブンガクロンの口に向けて、つむぎを、放った。


「胃の中だ」つむぎは、酸っぱい匂いに、顔をしかめた。剣は、青白く光っている。

「ここなら、硬い表皮より」といって、下の方向を、切り裂いた。そして、脱出した。

「グエ、まさか、人間が」ブンガクロンは、体力が無くなるのを、感じていた。


「その剣は、お前の潜在能力を、発揮させる」と、ホムラーが、言った。

「ならば」と、つむぎは、剣に炎が宿るのを、感じていた。そして、その、もえさかる火を、ブンガクロンに、放った。ブンガクロンは、瞬く間に、燃え盛り、そして、灰になった。


「ホムラー、あなたは、一体」とつむぎ。

「俺が、ヒーリングを持っていると知ったら、お前は無茶をやらかすから、黙っていた」ホムラーは、つむぎの、消化液のダメージを治しながら、言った。


 3人は、前に来た武器屋に、戻ってきた。

「これ、返します。ありがとうございました。」とつむぎは店主に言った。

「お前たちの、戦いの話は、聞いた。どうだろう、その剣を、そのまま使うか、それとも前の剣に、戻るか」

「それは、決めました。やはり、半月刀です」つむぎは、言った。何よりも、頼れる仲間たちがいる。どんな優秀な武器よりも、かけがけえのない仲間たちが。


「つむぎさん、この世界には、王者の剣というものが、あるらしい。それは、お金では買えないもの。真の勇者だけが、身につけるもの」と、店主が、つむぎに語り掛けた。

「ええ、いずれ」と、つむぎは、言った。


「もったいないことをしたな」と風神来。

「戦いは、武器じゃない、作戦よ」と返す、つむぎ。

 ホムラーは、笑いながら、2人のやり取りを、見ていた。

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