第11話 心の闇

 吉川晃司にハローダークネスってあったな。割と好き。アルバム『イノセントスカイ』の一曲目。


 ドラマというものは、その世界観を味わうのが醍醐味であるワケだが、自分としては、その世界が与えてくれる、自分が耳にしたけれども実感のない社会問題へのより現実的な理解というものもまた面白く思う。

 同性愛や、盲、聾の人々の知識だとか生活だとか、そういったものはドラマが実は僕にとって情報源だ。みなさんもそうかもしれない。言われてみればそうではないか? 


 今回特集されたのは「毒親」。悩む人は多いようだ。ウチはあまり干渉がなかったが。そのかわり、やや僕はこれまであるように薄情な訳なのだが。

 家族の繋がりは絶対の絆とよく言われる。自分は、人を殺めて世間を震撼させたような犯罪者を最後に守るのは母だ、と聞いたことがある。自分の母から。それを聞いた時には反応に困った。何がそんな大それた力になるのか、感情というものが恐ろしく思った。

 少年Aの父親は世間体に恐れをなした臆病者だが、母親は絶対に死んではいけないと見えない何かに縛り付けられている、と。ただ、その執念が怖かった。


 ドラマというものは本当に客観的で、人の貧困だとか、職場の過労だって、描写をはっきり映さなければ「そんな下らない悩みでこんなことしてアホ臭いと思わないのか」と思わせる。例えば結婚記念日に行く予定だったフレンチの約束を踏み倒すこと。現代では、踏み倒す側と、踏み倒される側の両方の立場が示されている。けれどもし、それがやむにやまれぬ急用だったから踏み倒しただけなのにいきなり離婚を言い渡される夫だけに寄り添って書いたものだとしたら、日頃の疲れを互いにねぎらいあって最近話すらろくにせずに指図ばかりする夫との距離を改善しようとした妻だけだったら。実は物事を見る力がドラマの視聴でも養われるのだ。


 今日、2022年6月6日の「マジ恋」を見て、毒親と呼ばれた斉藤由貴を見てあなたはどう思っただろうか。どうしょうもない貧乏神を無理しながらでも養っていく福士蒼汰がかわいそうだ、と思った方は多かったのではないだろうか。しかし、主人公が斉藤由貴のことで「あんな毒親とつきあっていたらあなたの幸せがくずれてしまう」と言い放ったのは結構びっくりした。

 病状わかってもないのに人の心をえぐるような罵声を言うな、福祉事業を冒涜してる、とか、そういうエラそうなことをドラマに向かってマジレスしたいのではなく、加害者として主人公を描写し、それで事態が悪化することをとおして、斉藤由貴は必ずしも悪役ではないのかもしれない、という心象を視聴者に持たせようとするという路線を想像して、ハッとなった。

 まあ、他のキャラにはオタクゲーマーで家では寝っ転がってばっかで指図ばかりしてねぎらいもしない正真正銘のモラハラ夫がいたが。あれはたぶん救いようのない悪役になるだろうが。


 さて戻る。自分はたぶん親ガチャの勝ち組で、精神以外はまともだから言えることかもしれないが、ギャンブルやアルコール依存症・体罰・ネグレクトに対しては、加害者本人を本人を矯正することだけにとどまらない知識の習得だとか、それともっと大掛かりな支援が必要なのかもしれない。そう思っている。人間は果たして離婚したから病むのであろうか。そうではなくて離婚して貧しくなって働いても余裕が得られないで風邪ひいても働いて気が遠くなったりとかして、そうして病んでいくのではないだろうか。こうした場合、貧しくて精神が侵されたのは本人のせいとも言いずらい。


 きっと、毒親の子も病んでいるし、毒親自身も病んでいる。親の方は加害者という十字架を背負っているが、親の救済なしに子を救済することは難しい。

 ドラマで、12歳の福士蒼汰が父に頭下げて「母の手がとどかないように僕の口座に毎月5万円の生活費を恵んでほしいんです・母を守れるのは僕しかいないんです」と言った覚悟には驚きしかなかった。毒親繋がりで連想するミステリというなかれの5巻でも子の親の恋しさはあった。あの巻はシリーズ最高傑作だと思う。視点自体が幻想であり、主人公にとっては事件も何もなかった、という。犯人と、放火魔の”天使”と、それぞれの悲しみがあったな。


 たぶん、僕は言いたいことを脈絡もなしにバアー-ってしゃべるのが好きなのかもしれない。文の推敲には気を揉むし、苦手な奴との会話には、一切の誤謬がないように細心の注意を払うし。すみませんが、ちょっとお許しを。

 ここまで読んでくださっている読者様はほんとにありがたいですよ。

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