2.聞き込み上手は推理上手(聞いていない)

 あつしの言う事件とは……。


「これが事件……?」

「ああそうだよ!凄く冷たいんだ、昨日も一緒に帰ってくれないし、今日も一緒に登校しないで先に行ったんだぞ、こんなのは初めてだ!」


 僕はため息をついた。

 どうやら彼女が昨日から冷たいと言う話で、一体どこが謎なのかと首根っこ掴んで問いただしたい所だ。


「それ、私も気になります!」

「よーし、さっさと解決するか!」


 衣緒理いおりちゃんがそういうなら乗るしかない。

 僕はありとあらゆる可能性を考えて、答えを導き出す。


「もうわかったのか!?」

「そりゃあ、お前の……」


 そこまで口に出かけて止めて茶を濁した。

 この件、5分で解決してもいいのだろうかという懸念が出て来たのだ。

 ここは衣緒理いおりちゃんのが見れただけ良しとした。


あつし、お前、浮気しただろう?」

「してねえよ!」

「えー、じゃあ、スカート捲りしたとかか?」

「してねえよ!まじめにやってくれ!」

「まぁ今の時点じゃ情報が足りない、こういう時は聞き込み調査だ、続きは休み時間な」


 そうして一旦小休止と思った所でまたもや写真が送られてきた。

 メッセージは『答えはOK/NGで(3/5)』、写真は五月女さおとめ里央菜りおなが偉そうにピースをしていて若干下からのアングルなので、スカートの中が見えそうで少し斜めに見てしまう。まぁ、見えないんだけど、こういうのみんなするよな?そしてこの人はクラブの部長で強引に僕達をクラブに入れた張本人だ。あまりにも強引で身勝手、無鉄砲という地雷原でも笑いながらぐんぐん進んで行きそうな性格、されどかなりの美人という、ちょっと残念な人だ。


「指でつんつん、百点、ローアングル……だめだ、やっぱりわからん」


 写真が送られてきた時、僕はあつし衣緒理いおりちゃんが何をしていたか確認していた。

 メッセージ受信のタイミングにスマホを弄っていれば、送り主の可能性があるからだ。

 だが、あつしは友達と話していたし、衣緒理いおりちゃんは教室に居なかった。

 とりあえず、あつしは白なのだろう。


 休み時間になって聞き込みをすると言って教室を出た。

 あつしは置き去りにして、あつしの彼女に会いに行った。

 沙々子ささこは教室で副部長の政志まさしと話していた。それもかなり仲良さそうに見受けられる。同じクラス、同じ部なのだから、ある程度仲がいいのは分かるのだが、見る限りちょっと近すぎる感じがした。

 一見すれば沙々子ささこが浮気している可能性が浮上した訳だ。

 もしかするとあつしは既に見捨てられているかも知れないという結論を言うかは少し悩んだが、それは少し意図が外れると思い、あえて言わない事にした。


 次の休み時間は部長に会いに行ってみた。

 里央菜りおなの写真を思い出してちょっと聞いてみようかと思った訳だが、声を掛けそうになった段階で咄嗟に身を隠した。

 里央菜りおなが何やらクラスメイトに指示をしていた。

 それをじっくり観察していると、まるでパーティーの飾りつけでも作っているのかの様だった。そんな堂々とやってる部長の思考回路に頭痛がしていると、またもやメッセージが送られてきた。


 メッセージの内容は『次が最後だ(4/5)』、写真はあつしが三本指を立てている姿で、何の面白みもなくやらされていた感じだった。特徴と言えば500ml入りの牛乳を直飲みしているというくらいだ。


「指でつんつん、百点、ローアングル、牛乳……だめだ、やっぱりわからん」


 最後の写真で謎を解けれなかったら僕の負けなのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る