【完結】超機動ザーシュゲイン

拉田九郎

第1話

 超機動ザーシュゲインというゲームがある。

 昔から根強い人気のある恋愛シミュレーションだが、SFを題材とし、架空の日本で軍人学校に通いながら宇宙から飛来する侵略者と戦うゲームだ。

 主人公は女好きの屑野郎だが、アチラの力が凄いらしく次々とヒロインを籠絡(肉体的に)していく非常に屑なエロゲーだが、ストーリーはしっかりしていて面白いから、あとエロシーンがエロい、とにかくエロいからプレイしてみてくれと友人に勧められたのは良いが・・・。


【アンナ教官「初日から遅刻とはな。お前らしいといえばお前らしいが】

【恭太郎「すんませーん! ちょっと夕べゲームしすぎちゃって(テヘッ)】

【アンナ教官「全くお前という奴は(笑)さっさと教室に向かえ、もうメンバーは集まっているぞ】

【恭太郎「はーい!】


 恭太郎というのが主人公らしい。

 軍人学校に入学。その授業初日に大遅刻。なのにアンナ教官、設定資料を読む限り校長先生みたいな赤髪の美女からは叱責どころか激甘対応。


「いやいや・・・。軍隊で、士官学校みたいなところでこんな激甘ないだろう・・・」


 俺、橋詰志郎はドン引きである。

 出っぱなからキツいわ。自慢じゃないが俺はストーリー性を重視しているし、何より辻褄の合わない展開が大嫌いだ。

 軍隊で遅刻して、「もう〜、しょうがないわねぇ〜(ハート)」みたいな事にはならんだろどこにそんなAVに出しても大コケするような話が出てくるんだよ。

 我慢して続ける。

 教室に行くと、見目麗しいヒロインたちが一見主人公に酷いことを言っているようで好感度超高めな対応。

 メインヒロインに至っては、


【シズカ「恭太郎くん・・・。良くないよ。明日からは私が向かえに行くね】

【恭太郎「(おっほー! 幼馴染のシズカと一緒なんてラッキー! よし明日からは計画的にラッキースケベが出来るな!)悪いなシズカ! 恩に切るよ!!】

【シズカ「もう・・・しょうがないんだから(ハート)】


「くたばれよ!!」


 思わずコントローラーを床に叩きつけてしまった。

 もう全くやる気が失せたので、念のためにと友人から借りた攻略本に目を通していく。

 一応、親友らしきモブとかライバル的な絵に描いたようなキザやろうなんか出てくるが、育成モードは単純明快で毎週一日ごとに国語、数学、社会、体育、科学、休むを入れて成長していくらしい。

 それぞれ、魅力(なんで国語で魅力?よくわからない)、知力、賢明(何に使うんだこのステータス)、筋力、技術が伸びる。休むに関しては、体力の回復。

 体力は固定で100設定されてて、予定をこなす度に減って行き、ゼロ以下になると風邪を引いて寝込んでしまい一週間まるっと休みになってしまう。一回休みという奴だ。

 成長に影響があるのでなるべく休まない方がいいが、ヒロインによっては一回休みでしか回収出来ないイベントもあるらしく、なかなかに面倒くさい。

 体育祭や学園祭なんかもあって、内容はもう全然普通の学校なんだが、唯一体育は軍隊じみたイベントもあってもう世界観があっち向いたりこっち向いたりまとまりがなくて何が面白いのか全く解らない。

 ラスボスや隠れヒロインの要素も見て、攻略本で満足した俺は、静かに攻略本を閉じると絨毯に直接寝転んでパソコンのヒートシンクの音ともはや放り投げたヘッドホンから微かに流れてくるゲームの音楽をBGMに昼寝に入った。

 明日もう一回やってみよう。

 そしてやっぱり二度とやる気が起きなかったら中古ショップに売りに行こう・・・。





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