【本格戦争小説】北欧帝国戦記〜バルト帝国の残光〜

ふぃるめる

序章 新生スウェーデン

第1話 リンドホルムという男

本作は、北欧帝国というロマンに全振りした作品となっております。

なかなか資料が集まらない状況での執筆となっておりますので何卒ご理解のほど、よろしくお願いします。


本作PVは、下記のリンクから


https://twitter.com/sqdhtxc640lbdsl/status/1532701639521447942?s=21&t=01ZdKNsyZHvCyHA_x8Wj9w


―――――――――――――――――――― 北欧帝国戦記〜バルト帝国の残光〜

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 1937年9月13日、ソビエト社会主義共和国連邦とドイツという軍事大国の狭間で揺れていたスカンディナヴィア半島の国家であるスウェーデンの行末を決める国民選挙が行われた。

 社会主義、ファシズム、資本主義とスウェーデンを取り囲む大国の影響を受けた様々な政党、公約、派閥、運動が存在したその中で、首相の座に就いたのは極右のスヴェン・オロフ・リンドホルムだった。

 彼は1929年にニュルンベルクを訪れた経歴があり、ナチス左派に惹かれ現行のナチズムに対しては反対の立場を一貫してとっていた。

 

 「さて、まずは挙国一致内閣への体制移行という重役をになってくれたことに感謝を」

 

 リンドホルムは首相官邸であるセイガーハウスへとペール・アルビン・ハンソンを呼び出していた。


 「前例のないことなので苦労はしましたがどうにか完遂することが出来ました。一部難色を示した党派もありましたが」

 「共産党と親ナチ共だろう?」

 「便に処置をしたのでしばらく騒ぐことは無いと思います」


 共産党はスターリニズムを標榜する党で、親ナチとリンドホルムが言ったのは社会党のことだった。


 「損害は?」

 「情報機関職員は、随分と強いようですね。民間人を含め損害はないとのことです」

 「頼りになるな」

 「とりあえず非協力的な連中は、間引けたわけだ」

 「そういうことです」

 

 それなら、とリンドホルムは一枚の書類をハンソンに渡した。

 黙って受け取ったハンソンはしばらく書面に目を通した後に


 「英独を敵に回しそうですね」

 「それが我々、スカンディナビアの民族が民族としての独立を保つにあたり最善の策だと思うがね」

 「どうなるかは議会での審議にかけてからですが多くの民衆は受け入れてくれるでしょう」

 「君がそう言うなら自信が湧いてくるというものだ」


 リンドホルムはハンソンの肩を叩いた。

 彼らはたった一月前の選挙で競いあったばかりの二人だった。

 ハンソンは1920年にスウェーデン初の社会民主主義内閣において、国防長官に指名された実績の持ち主で軍事費を福祉拡大に回して民衆の安定を守ってきた政治家だった。

 しかしながら、ナチスドイツとソ連との対立が明確になってきた昨今、選ばれたのは民族的独立を守るために立ち上がったリンドホルムだった。

 命や財産の危機に直面した民衆に対して福祉では太刀打ち出来なかった。

 だがハンソンは、政治の面で敏腕で頭も柔軟、それ故に社会民主労働党の党首として福祉の充実にこだわるのをやめ国防へと自らのビジョンを変えたのだった。

 そして現在、リンドホルムの相談役となっていた。


 「早速、明日の議会での承認を確実なものとするため根回しを行ってみます」


 ハンソンはそう言ってリンドホルムの執務室から退室した。


◆◇◆◇


 それから五日後、議会承認を得たリンドホルムの策を実行するべく外交官ラウル・グスタフ・ワレンバーグは、フィンランド、ノルウェーの両国へと向かうことになるのだった。

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