第4話

 私は翌日、さっそく手紙を書きました。

 家族はもちろん、親しかった友人、仕事でお世話になった方々にも。

 あまりに書きすぎて、腱鞘炎になるかと思いました。


「・・・・・・では、お元気で。ヴィヴィより・・・と」


 私は差出人をヴィヴィと書きました。というのも、即日退去を私に命じたレオナード王子のことです。もしかしたら、私の名「ヴィクトリア」が出した手紙は破棄するように命令してあるかもしれません。なので、門番さんに私からの郵便はヴィヴィという名で届くと言うように伝えていただくようにお願いしておきました。なので、きっと皆のところへしっかりと届いてくれるはずです。


 私が手紙を送ると、数日で手紙の返事が届きました。嬉しかったのが、友人たちが私がいなくなったことが惜しいと思ってくださっていることで、両親は親しくしていた貴族に話をつけて、自分たちもこの国に亡命してくれると言ってくださいました。


「ありがとうございます・・・・・・お父様、お母様」


 それなりに母国で築き上げてきた地位や名誉も、そして交友関係も亡命となればすべてがそのままという訳にはまいりません。けれど、それらの全てよりも私を一番に大事にしてくださるお父様やお母様のことが本当に嬉しく、


「これが家族というもの・・・・・・よね」


 結婚して家族となり、そして離縁して家族で亡くなったレオナード王子のことを思い出すと、目頭が熱くなるのを感じたので、考えるのを止めました。


「さて、次は大臣達からの手紙を読もうかしら」


 悲痛の叫びでした。

 レオナード王子、特に新しいお相手の方は散財が激しいらしく、その上大臣達に国政を任せ、自分たちは悠々自適に暮らしていると書かれており、気に入らない結果が出ると、すぐに大臣を首にして、新しい大臣を着任させたようですが、目先の結果しか出さない方や、悪い内容を隠蔽するような不誠実な方が大臣になっているとのことでした。もしかしたら、クビになった方が感情的に書いていらっしゃるかもしれないので、本当に新しい大臣が不誠実な方かどうかはわかりません。


 時には主観を排除し、客観的に物事を見なければならない。

 このことを教えてくださったのも、一緒に仕事をしてくださった大臣の皆のおかげです。私が王妃になった際も、何人かの大臣は賄賂で解決しようとしていましたが、そういった方々はお辞めいただきました。そう言った方々は私のことを主観で批難していたのも知っています。けれど、現在も大臣を務めている方の手紙などを複合的に見ても、主観になってしまうかもしれませんが、一緒に国のために働いてくれた大臣達がそこまで言うということはよっぽどなのだろうと感じました。


「よし、お散歩でもしましょう」


 内容を見ていたら、息が詰まりそうになりました。こういう時にお返事してもいい案は出ません。新鮮な空気を吸って、リフレッシュしてからの方がいい案が浮かびます。これも王妃の仕事をしていた時に徹夜をしなかった理由です。


 私は少し宿を出て歩いてみようと思いました。

 そして、その時本当の運命の出会いをするとは、思いもよりませんでした。

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