第6話

 私に襲い掛かってくる二つの刃。

 武術の習いがあったとはいえ、護身程度。その上、今日はパーティーで一応主役の婚約者ということで、豪華なドレスと高いヒールを着用していた分、身動きがとりずらい私にはその二つの刃を処理できないと思った―――その時、


「きゃっ」


「いてっ」


 人混みをぬって、横からフォークが二本飛んできて、グリフとヴィトリールの右手に刺さった。そして、怯んだ二人に対して、人混みから青年たちが3人現れて、二人を押さえつけました。


「いってぇ、なんだよ、お前ら」


「ご無事でしたか、ルイズ様」


 グリフの言葉を無視して、私に優しい顔で話しかけてくれる青年。


「ええ・・・・・・ありがとう」


「いえいえ、お気になさらずに」


 青年は私がお礼を言うと、紳士的に答えてくださいました。


「こらこら、あんまり僕の出番を奪っちゃだめだよ?」


 人混みの奥から声がして、人混みが割れると、彼とお父様がいらっしゃいました。


「お父様っ!!」


 私は二人に駆け寄り、お父様の傍によりました。


「あぁ・・・・・・心配かけたな。ルイズ」


 弱々しかったけれど、こうしてお父様ともう一度喋れると思うと涙がこみ上げてきました。


「申し訳ありません、クリス王子」


 私を助けに来た3人のうち手の空いていた一人の青年が彼、クリス第一王子に頭を下げました。


「別にいいよ・・・・・・とは、言えないよ」


「・・・はい」


 クリス王子はいつも優しい。けれど、クリス王子は高ぶる気持ちを抑えて青年伝えると、青年はその言葉を深く噛みしめていた様子でした。


「ですが、さすがです。御老体を抱えたままで、的確なコントロール。それも二投を一瞬で」


「褒める暇があったら、やることをやってくれたまえ」


「しっ、失礼しました」


 青年がグリフたちのところへ行くと、厳しい顔をしていたクリス王子が彼の背中を応援するように見ていらっしゃいました。


「申し訳ない、ルイズ。キミを危険な目に会わせてしまって」


「いいえ、いいえ・・・・・・本当に、本当にありがとうございます。クリス王子」


 私は何度も何度も頭を下げて、クリス王子にお礼を言いました。


「のような体制のまま申し上げるご無礼をお許しくださいクリス王子。私からも重ね重ねになりますが、お礼と、そして・・・・・・お詫びを申し上げます。本当にありがとうございます・・・・・・・・・本当に・・・・・・本当に申し訳ございません」


 やつれたお父様がクリス王子の肩を借りて、泣きながら謝ると、クリス王子は「大丈夫ですよ」と言って、お父様の背中を擦ってくださいました。

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