第5話

「わかりました、お受けします」


 私はウィン王子の提案を受けて、ポーカーをすることになった。


「ではっ」


 セバスが座っていたカイジンをどかす。


「んあっ!?」


 すると泡を吹いていたカイジンが目を覚ました。


「イカサマだぁっ!!!」


 そして、見苦しくも騒ぎ始めました。

 優しかったカイジン。お金やギャンブルは人を変える……そう感じました。


「どんなだい?」


 また、冷たい顔をしてウィン王子がカイジンを見る。


「そっ、それは、ディーラーが……」


 確かにディーラーはウィン王子の言うことを聞いている素振りがあった。この人がウィン王子側の人間なら私も勝ちようがない。


「私は公平に行っております」


 ディーラーは淡々と答えた。


「いいや、俺にシャッフルをさせてもう一度……」


「もう一度はないよ、カイジン。ただ、ディーラーはキミがやるといい」


「どういう?」


 ウィン王子が私を見て、ニコっと笑う。


「まさか、こいつとポーカーを?」


「キミにこいつ呼ばわりする資格はもうない。次言ったら……わかるね?」


 カイジンは生唾を飲んで喉を鳴らし、頷いた。


「ディーラーはカイジン、それでいいかな? クレア」


 ウィン王子の問いに、カイジンを見る。


「ちょっと、こ……。いや、ルールとか戦術をクレアに教えてもいいですか? 多分、クレア……さんはわからないので」


 ウィン王子はカイジンが私を呼び捨てで呼ぶのも、カイジンを睨み、カイジンは私をさん付けで呼んだ。ルールは教養としてわかっているけれど、負けたとはいえカイジンもヒントを持っているかもしれない。私はウィン王子を見ると、目が合い、お願いするように頭を下げた。


「うん、じゃあいいよ」


「へへっ、ありがとうございます。こっちへ」


 カイジンに呼ばれて、部屋の隅へと向かう。


「よしっ、お前が勝てば巻き返せる」


「…情報を先に。ルールは分かっております」


 こんな状況を作ったのだから、当然婚約破棄でしょうに。

 そう言いたかったですが、まずは情報を聞かないと。


「ふっ。俺に任せておけ。実はな、一部のカードに爪で跡をつけておいたんだ」


 頭が痛くなりました。

 あれだけ、いかさまと騒いで、自分がいかさまをしていたなんて……情けない。


「だから、俺がいいカード、もちろんジョーカー…いや、もっといい手をお前にやる。これで、勝てる」


「ウィン王子の……いえ、なんでもありません」


 カイジンは勝ち誇った顔をしました。

 慢心……でしょうかね。

 慢心して負けたカイジンからウィン王子の癖などを聞いても、間抜けなフィルターを通してもらった情報だと、真実がより見えなくなる気がしたので止めました。


「そういえばチップは……」


 カイジンがチップのことを気にしていますが、無視しておきましょう。

 私による、私だけのためのポーカーを―――始めましょう。


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