第21話 美少女の誘惑に打ち勝てマッサージ師新上優斗
マッサージしていく中で新上はあることに気付いた。
普通女子の身体とは男子と比べて筋肉が少なく柔らかいのだが、詩織の場合そうじゃなかったのだ。べつに筋肉ムキムキでマッチョだったとかそんな意味ではない。
「なんで、こんなに全身凝ってるの?」
ふとっ、疑問に思ったので質問してみる新上。
「いやぁ……ちょっと色々あってね、あはは……」
苦笑いで誤魔化す詩織。
そんな詩織と向き合うようにしてうつ伏せになった理沙が手を伸ばして詩織の頬っぺたを軽く摘まむ。
「なぁにぃ~がぁ、ちょっとだって~?」
「にゃんでもぉありぃませぇーん」
「心配して欲しいからってそれはダメだよ~」
「はぁ~いぃ~~~いたぁぃでぇ~す」
なんとも仲が良いお二人だなと思いながら新上は理沙に聞いてみる事にした。
「違うの?」
「血行不良よ」
「うん。詩織の場合それが凝りに影響しているの。肩は無駄な脂肪の塊が原因だけどね」
そう言って視線を落としてニヤニヤと潰された二つの果実を正面から覗き見する理沙。
羨ましい!
とはつい思ってしまうも、今は耐える時だと心に言い聞かせる新上。
そんな理沙を上から見ていると、あることに気付く。
ふむ、赤か。
何がとは言わないが、肩から出た紐の色から推測したのだ。
これはこれで妄想が吹くらんでしまう思春期男子高校生の新上。
これが悪いとは思わない。
だってこれは成長していく過程の中で正常な反応だからだ!
自分に言い聞かせて、色々と正当化していく新上。
「女同士でもまじまじ見られると恥ずかしいんだけど?」
「えー? 別にいいじゃん!」
「……はいはい。それよりさっきお水沢山飲んでいたけどトイレとか大丈夫なの?」
その言葉にぶるっと身体が反応した理沙。
寝転がったまま足をクロスさせてもじもじさせ始めた。
そんな理沙を見て新上はこれはこれで有だと思ってしまう。
そのまま恥じらいながら、新上に視線を向けて小声で。
「ちょっとお手洗い行ってくるから貸して?」
「無理だ、と言ったらどうする?」
新上の冗談に理沙が戸惑う。
「あらがみぃ~」
起き上がって上目遣いの理沙。
そのまま涙目でこちらを見てくる理沙がまたなんともえろい。
もうちょっとだけからかってみることにした。
「いつも理沙は俺に意地悪するからな~」
「うぅー、だって……好きなんだもん。振り向いて欲しい……と思って……ごめんなさい」
すると、どうやら限界が近づいてきたらしく。
「だ、だめぇ、も、もれそう……」
「早く行ってきなさい」
その言葉を聞いた理沙は小さく頷いて小走りでお手洗いへと向かった。
どうやら本当に我慢していたらしい。
言われるまで尿意に気付かないぐらいに今の詩織が羨ましく内心は感じていたのかもしれない。
そんな幸せ顔を隠しに隠しきれていない詩織は理沙がいなくなったタイミングで口を開く。
「私ね新上に一つ伝えて置きたい事があるの?」
「なに?」
「私ね今ならわかる。新上が言っていた恋ってやつが」
「えっ?」
「理沙と楽しそうにしている新上を見ると私心がモヤモヤするの。今まで私が常に一番と勝手に思っていたのにそうじゃないと気付いて……今とても後悔してる。だからね、……そのね、……私新上のことがね……、す、好き……、だよ? 返事はわかってるからいらない。ただこの気持ちを伝えて置きたかっただけ。じゃないと、新上も困ると思って」
新上は言葉を失った。
「告白されて、意識して、理沙に嫉妬してようやく気付いても遅いのにね、あはは……」
詩織は髪の毛をクルクルとさせて視線を逸らした。
「ずっとね、私すぐに言おうとしたんだ。この気持ちに気付いた時に。でも言えなかった。色々と考えて……本当にごめんね。でもね――」
詩織は後ろめたさを隠して。
「好きな男の子の前じゃないとこんな格好しないし、甘えないから私。今は理沙が一番でも良い。だけどね、私の性格知ってるでしょ?」
「詩織?」
「一度決めたら曲げない性格ってこと?」
「もしかして」
「うん。私たち遠慮しない仲だから覚悟してね、優斗♪」
詩織はハッキリと口にした。
今の気持ちを。
例えそれが悪手になる可能性があったとしても。
ここしかないと、自分の気持ちを伝えるには今しかないと、判断した詩織は照れながらも精一杯頑張った。
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