第3話 フェルデンの目

 不死身の冒険家ジョン・ダンジョルノの突然の失踪、その報せは瞬く間に広まった。

「不死身の冒険家が失踪ね。というかその人って本当に不死身なの?」

「それは間違いないよ。普通の人間なら死ぬような大怪我を負っても翌日にはピンピンしてたからね」

「じゃあどうして? いくら魔大陸が危険と言っても不死身なら関係ないでしょうに」

「国王軍が彼を見張ってたって噂も聞くし、なにやらきな臭い感じがするな」

 

 城塞都市ベルンは強固な壁で街全体が覆われている。

 初代統一国王アリオンの代から最優先で建設を進められてきたものだ。

 二代目ユリアス王の代にしてそれは完成した。

 無論それは魔王があえて見逃していたからこその偉業であることを人々は知らない。

「ベルンの様子はどうであった」

「あの男のことがあちらこちらで噂になっているようです」

「相変わらず便利だな。フェルデン、お主の目は」

「恐れ入ります」

 魔王の側近であるフェルデンは間者を城塞都市ベルンに潜り込ませていた。

 魔物や魔族の侵入を拒む絶対の防壁もそれが人間であれば容易く侵入を許してしまう。

「捕らえた人間の視覚、聴覚を支配しベルンへと送り返す。この方法ならば人間共に気づかれる可能性は低い」

「はい。現在およそ三十名程を支配下に置いておりますので、防壁内の状況は手にとるように分かります。いざとなれば意識を奪いこちらの手駒とすることも可能です」

「まあ当面の間その必要はなかろう。今はダンジョンのことが最優先だ」

「その件に関して既にいくつか案をまとめて後ほど報告に来るとのことです」

「ほう、仕事が早いな。やつのダンジョンに対する情熱がどれ程のものか見せてもらうとしよう」

「では私めはその間引き続き情報収集にあたりましょう。国王軍が動きを見せていないのも気になりますので」

 そう言ってフェルデンは玉座の間を後にした。

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