第20話 フレンドリーファイア。

翌日、スタークとの戦闘前、泣き腫らした勝田台 風香はぽそりと「戦ってなんになるの?私たちはもうおしまいよ」と言った。


それが聞こえた荒川 愛美は信じないでどうすると励ましたが、大久保 勝之進は逃げた。もう助けは来ないと言ってメソメソと泣いた。


その姿に怒ったのは玉ノ井 勇太で「腹括れよ!俺たちは生き残る!何が何でも生き残る!お前達も頭がいいんなら生き残る方法考えろよ!」と吠えた。


この言葉は学力至上主義の京成学院には最悪の方法で届いてしまった。

それはまさに大久保 勝之進が言っていた言葉通りだが上野 桜子を除く6人は勉強が全て、序列が全てでしか無かった。



女子のうち、勝田台 風香の取り巻きの1人、谷津 彩乃は生きる事を諦めて自らグジュグジュに飛び込んで殺された。

だがそれは完全な悪手でグジュグジュは即死攻撃をしてこない。

運良く頭や心臓に攻撃が入れば別だがそれ以外の箇所は溶かされたり喰われたりする激痛に苦しむ事になる。

谷津 彩乃は文字通り地獄の痛みに苦しんで絶叫をあげて死んだ。


この事で勝田台 風香と大橋 礼那はへたり込んで動けなくなる。



男子のうち国府台 帝王と菅野 篤志は自分の居場所を作るために千代田 晴輝と玉ノ井 勇太を狙って攻撃をした。


「武器開発は俺がやってやるからお前が戦えよ!」

「お…俺が低脳共を従えてやる!お前さえ居なければ」


終わり際、まさかの背後からの強襲に千代田 晴輝と玉ノ井 勇太は何も出来なかった。


さらに玉ノ井 勇太は危険を冒して勝田台 風香と大橋 礼那を守るために立ち回っていて背後は完全におざなりにしていた。


槍で背中から刺された玉ノ井 勇太はまさかの激痛に倒れる事になる。

その国府台 帝王は谷塚 龍之介が槍の柄で手と足を折って確保をする。


菅野 篤志はよりによって至近距離で電撃弾を千代田 晴輝に撃ち込み、それは右手に当たった。黒焦げになる右腕とまさかの攻撃で千代田 晴輝は何も出来ずに蹲った。

菅野 篤志は千代田 晴輝のそばに居た品川 憲の手で手足を折られて制圧された。


その後、何とか残りの全員でスタークを撃退したが最悪の状況だったのは言うまでもなかった。


緊急で呼ばれたプラセは手術をしたが玉ノ井 勇太の傷は臓器を傷つけていて出血も激しく今夜が峠だと言い、千代田 晴輝に関しては腕が炭化してしまっていて一生このままになると思うと言う話だった。


草加 岬は泣きながら玉ノ井 勇太の手を取って「やだよ!死なないで!桔梗と日本に帰るんだよ!」とずっと叫んで冷たい身体に何枚も毛布をかけて体をさすって温め続けていた。


絶望の中、国府台 帝王と菅野 篤志は拘束されて別室に放り込まれていた。

手足が折れていて何かが出来る訳ではないが、隔離していないと何が起きるかわからなかった。


「なあ、どうする?」

そう言ったプラセの言葉の意味を梶原 祐一と三ノ輪 彦一郎は理解していた。

同じ表世界の人間だが、生き残る為に悪い部分を切り捨てるかどうかと言う事だった。

三ノ輪 彦一郎は真剣な顔で「それは一度だけですか?」とプラセに聞く。


「何?」

「問題を犯したのはまだ2人かも知れません。上野 桜子さんは別としてまだ3人居ます」

ここで国府台 帝王と菅野 篤志を処分できてもまだ小岩 茂と勝田台 風香と大橋 礼那がいる。


「後で追加が通じるかだな…。デリーツに確認してやる。30分で戻る。輸血用の血が足りない」

プラセはセオとワオに緊急時には狼煙を上げるように指示をして戻っていった。



話に上がった勝田台 風香と小岩 茂は2人きりで誰も来ない部屋に居た。

目を離したく無かったが、仮に死の恐怖から男女の仲になる場合もあるからと町屋 梅子は監視の手を抜いてしまった。


王子 美咲が「梅子、アイツらは?」と聞き、町屋 梅子は「2人きりで二階の端に行ったよ。デバガメするのも野暮だから置いてきた」と言う。

王子 美咲が「えぇ!?まあそれでやる気になればマシだけど心中とかされてもやなんだけど…」と心配した時、横に居た大田 楓が「私、見てくるよ」と言った。


大田 楓は二階に上がると丁度、勝田台 風香が居て「あ…少しいいかしら?」と言う。

こんな穏やかに話しかけられたことが無い大田 楓は訝しみながら「何?」と聞く。

勝田台 風香は俯いて「この前の事とかキチンと謝りたくて、でも人が多いとどうしてもプライドが邪魔をするの…」と言う。


「え?部屋で2人きりで謝りたいの?」

「ええ、ダメかしら?」


大田 楓は仕方ないと後をついて行くと、先程町屋 梅子が言った二階の端の部屋に連れていかれる。


「別に誰も聞き耳なんて立てないから端まで行く必要無いって…」

そう言って呆れながら扉をくぐった瞬間、大田 楓は手を引っ張られて床に盛大に転がる。


「痛…なに?」

そう言って辺りを見回した時には剣を手に持った小岩 茂が「騒げば殺す」と言って馬乗りになっていた。


その後ろで顔を歪めた勝田台 風香が「誰がアンタなんかに謝るものですか!どうせ私達は死ぬの!だから小岩!その女に生き恥と生き地獄を与えなさいよ!アンタだって童貞で死にたくないでしょ!?」と言っていて、小岩 茂が「へへ…、死ぬ前にさ…気持ちよくなろうよ…。騒げば殺すよ…騒がなきゃ気持ちいいんだ」と言って大田 楓の服のボタンを剣で一つずつ切り捨てていく。


「あはは!見ててあげる!」

勝田台 風香は勝ち誇った顔でそう高笑いをした。

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