3/21~3/31
21日
「今から二人称は禁止です」
デート中、突然君がそう言い出し……いやちょっと待て。二人称は禁止なのか……。……のことは大好きだから、言うことは聞いてあげたいけど……。
……は笑っている。……さては知ってるんだな。僕が名前を呼ぶの恥ずかしがってるの。
よーし、じゃあ呼ぶよ……。──!!
「二人称禁止!!」
22日
嘘だと言ってほしかった。貴方が私の前からいなくなるなんて、そんなの信じられなかった。
貴方のSNSも消えた。貴方と撮った写真も消えた。メッセージのやり取りも消えた。誰に聞いても、貴方のことは知らないと言った。
貴方はこの世からいなくなった。全部白紙になったんだ。待って、私は忘れたくな
「白紙に」
23日
お伽噺みたいなお姫様になりたいの。呪いで眠ってしまった私を、貴方のキスで起こして。そうして最後は結婚式を挙げて、皆にお祝いされるの。貴方は恥ずかしがるかもしれないけど……うん、やっぱり私も恥ずかしいや。やめよう。
でも貴方とキスをして、一生一緒に幸せになりたいのは、本当だからね。
「貴方とのお伽噺」
24日
私の明るい未来のため、どうぞ貴方の清き一票を!その一票が、私の力になります!
私は貴方の良き理解者となるでしょう!一緒の趣味で盛り上がったり出来ます!逆に、譲れないこともあります!目玉焼きには絶対にソースです!
私のことを、分かっていただけましたか?それでは、どうぞ私に清き一票を!
「貴方に選んでほしい!」
25日
かつて僕といた君へ。
君の嘘のお陰で、僕は救われてしまいました。ですが、君の嘘のせいで傷ついたのも事実。
君のことをどう思えばいいかはわかりません。ただ僕は、君のことを忘れるつもりは絶対にありません。何も思いません。ただ忘れないだけです。
だから君も、どうか僕のことを覚えていてね。
「忘れない」
26日
君がノートの片隅に落書きをしている。パラパラ漫画を作っているのだ。そして僕は横からそれをこっそり眺めるのが、好きだった。
昨日は確か、気球が鳥に攻撃されて墜落したんだっけ。ここからどうなるんだろう。
君は風船を描く。地面激突は免れて、ほっと一息。
君と目が合う。思わず2人で微笑んだ。
「パラパラ漫画」
27日
あの光は、貴方のことを照らすでしょう。希望に満ちた貴方の歌は、スポットライトを浴びるのに相応しい。
けれど貴方はきっと、そのスポットライトをこちらにも向けてくれる。貴方の声があって、私たちの歓声があって、初めて1つの形になると言っていましたね。
貴方の光に負けぬよう、私も光ります。
「光たち」
28日
貴方のために塗ったリップグロスは、なんの意味もなかった。
貴方にいいと思ってほしかった。貴方の唇がほしかった。貴方の唇を、同じ色に染めたかった。
でも、駄目だった。このリップグロスは、一体私に何をもたらした?マスクの汚れと、私の肌への害だ。
手の甲で強引に拭い取る。はは、綺麗な色。
「リップグロス」
29日
朝目覚めると、君が隣で眠っていた。無防備な、あどけない顔に微笑んで。私よりずっと長い睫毛に、ちょっとばかり嫉妬してしまう。
頬をつつくと、君は微かに呻いた。かわいいなぁ、なんて微笑んで、君を抱きしめ、見上げる時計。
……あれ、君、確か8時から仕事だよね。今まさに8時だけど、大丈夫?
「寝坊」
30日
春だね、と君が言った。
風が吹き、私は体を震わせて、まだまだ春には程遠いよ、と唇を尖らせた。
それでも確かに桜はもう散り始めているし、春を感じた頃には、もう春は終わっているのだろう。
君の髪に乗った花びら。指摘すると、君の頬は同じ色に染まった。
ああ、君の言う通り。春になったんだな。
「桜色」
31日
少しだけ怖いけど、大丈夫だよ。君と一緒だったら世界の終わりだって、僕は受け入れて見せる。
前までの生暖かい世界に、未練はないよ。だって元々、僕たちには優しくない世界だったじゃない。
……え?それでも私は好きだった、って?はは、君らしいね。
それじゃあ、行こうか。
さよなら、この世界。
「変わる世界」
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