9/21~9/30

21日


眠れない、こんな夜には。

パジャマの上からパーカーを羽織って、外に出る。夜風が涼しい。当たり前だけど、だぁれもいない。静寂。たまに車が通る。それだけ。ここは静かな場所だから。

星の出ない都会の空。爛々と輝く月だけが私のことを見つめていた。

こんな夜も悪くない。スキップで帰っていく。


「夜の特権」




22日


貴方はただそこにいて輝いているような、そんな人だった。

私とは正反対。私は、頑張ってお洒落の研究をして着飾って、笑顔や話し方の練習もして、ようやく輝くことが出来たの。

でも貴方の輝きには敵わない。どうして?と貴方を観察し、気づく。

貴方も私と同じ、いや、それ以上の努力をしていると。


「努力の輝き」




23日


何かを書くとき、私は「私」ではない「誰か」になる。

「誰か」は幸せに生きる。時に苦難を乗り越えつつも、最終的には上手くいって、ハッピーエンド。

「私」は「誰か」を幸せにする。「私」の生きることの出来ない人生を「誰か」に送ってもらう。

それだけで私は、「幸せに生きれた」と思えるから。


「自己投影」




24日


家のコピー機が壊れた。大学の講義のレジュメを、印刷しようと思ってたのに。明日の講義、レジュメ無しで受けないといけないのか。恨みを込めて、思わず舌打ちを一回。

仕方ないから、近くのコンビニで印刷することにした。ちょっとお金を払って、印刷完了。ついでにアイスを買って、食べながら帰る。


「小さな幸せ」




25日


「幻の食材」なるものを求め、秘境にやって来た。道中は大変なことばかりだ。道無き道を歩き、野生動物には襲われ、本当にあるかも分からない食材を探すことは、精神を擦り減らす。

休憩を挟みつつ進んで行き、遂に私はその食材を発見した。

調理して食べて思う。途中で飲んだ水の方が美味しかったな。


「冒険の後味」




26日


ねぇ踊ってよ。僕の手を取ってよ。あの日の様に意味もなく楽しく踊ろうよ。何故僕のことを睨みつけるの。あの日僕の手を取ったのは貴方の方だろ。僕から行くのは求めてないって?貴方はどこまで自分勝手なんだ。

貴方が勝手に僕に関わってきたのだ。

だったら僕も勝手に関わってやる。

さあ、踊ろう。


「Shall we dance?」




27日


「絶対に振り返ってはいけませんよ」

君はそう言って、私の後ろを歩いていた。一緒にいるのにとか手を繋ぎたいだとか色々考えたが、君に嫌われたくないので、言いつけを守って振り返らずに歩いた。

しかし限界が来て振り返ってしまう。君は顔を真っ赤にして。

「ああ、振り返らないでと言ったのに!」


「赤くなった顔を見られたくない」




28日


ただ何でもない時間に、窓の外をぼーっと眺めていた。するべきことは沢山ある。それでも、今は何も気にならなかった。

窓から吹き込む、心地良い風。風が運ぶ、季節の香り。忙しい部屋の真ん中で、私の周りだけゆったりとした時間が流れている。

そこでふと、風の運ぶ花びらが、私の頭を可愛く飾った。


「風の粋な計らい」




29日


雲がかった空に手を伸ばして、晴れないかと願いを捧げる。雨音が窓を叩く。私に会いたいの?今日は私、君には会いたくないな。

しばらく待ってみて、雲の隙間から光が差す。どうやら天使が私の味方をしてくれたよう。慌ててバッグを持って外へ飛び出して。

念願の貴方とのデートの日。晴れて良かった。


「天使の梯子」




30日


貴方に元気の魔法をかけたいの!魔法のステッキなんていらない、簡単で、でもよーく効く魔法!

虹の麓を探しに行こう、って、貴方の手を取って、無理矢理部屋から連れ出して。貴方は仕方ないな、って笑ってくれるの。そうすると私も魔法がかけられたみたいに元気になれる!

私たちは魔法使いなんだよ!


「元気の魔法」

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