龍を呼ぶ弓

朝羽岬

 朝霧の中、男に声を掛けられた。

「お頭、ちょっとご相談があるのですが」

 手下になって、まだ数日しか経っていない男だ。仲間のほとんどが寝ているためか、彼の声は小さかった。傍らに寄るよう手招きをすると、男は一歩だけ進み出る。彼は、他の手下達と同じように、戦災孤児だと語っていた。しかし、その割には所作が洗練されていて、隙が無い。

「お頭、軍師になってみる気は、ありませんか?」

 そして、男は口の両端を上げたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る