第30話 フューリア帝国へ

聖ルドルフ国で神と崇められ、最後まで引き留められたジン。

なんとか聖地を脱出し、フューリア帝国を目指していた。


聖ルドルフ国では、前線にしか魔物が来ていなかった為、全域を巡る必要が無かったので、すぐにフューリア帝国を目指して出発することになったのであった。


「いやー。大変だったなぁ。勘違いされて」

「んー。まあ、あながち間違いでもない気がするけどねー!」

「俺は、ただの人間だ!」

「でもさ、ただの人間がそんなに魔法陣理解できるかなぁ?」

「それは、偶々脳の能力が高かっただけだ!」

「まあ、神に与えられたのかもしれないけどねぇ」

「それは、否定できないけど......。転生前の記憶あるし」

「でしょー!?」


そんな話をしているとフューリア帝国への関所が見えてきた。


近くに行くと騎士に声を掛ける。


「すみません。アリア王国からの救援で来たのですが......」

「はぁ!? お前達のような子供2人が救援だと?」


(あぁ。このやりとり三回目......)


冒険者カードを出す。


「むっ。確かにAランクのカードだな。しかし、なぜ、聖ルドルフ国から来たんだ?」

「聖ルドルフ国からも救援を受けて、悪魔を追い払ってきたんですよ」

「なに!? それは、本当か? それなら、帝国の悪魔もお願いしたいところだな。ほら、通っていいぞ」


「ありがとうございます」

「どーもー!」


「待て!」


通って行こうとすると呼び止められた。


「何か?」

「そっちの子も救援なのか?」


「メル、カード」

「はい!」


カードを見ると納得したようだ。


「最近の若い子は、凄いんだな。その年でAランク冒険者なんて」

「まーねー! じゃーねー!」


去っていくジンとメルの後ろ姿を見ながら


「可愛かったなぁ。メルちゃん。」


メルは、知らない間にファンを獲得した。


ーー


立ち寄った町で魔物の被害について話を聞いていた。


「では、この辺に被害はないんですね?」

「えぇ。まだ、魔物の被害はありません」

「どの辺で被害が出ているかわかりますか?」

「もっと北の方に巨人が出たとかなんとか」

「巨人ですか?」

「えぇ。とにかく大きい魔物が出るようです」

「わかりました。ありがとうございます」


メルもジンも町の人に話を聞く限りでは、被害はまだないようである。


「聖ルドルフ国みたいに前線の方だけって感じなんだな」

「そうだね! でも、北の方では、結構被害が出てるみたい!」

「そうなんだな。急ぐか」

「そうだねー!」


町を後にした二人は北を目指し駆け出す。

1日、2日と日が経つ毎に段々と前線が近づいてきていることを町の人の話から実感する2人。


「遠くからでもわかるな? あれ、見ろよ」


指のさす方を見ると大きな影で地平線が見えないのだ。


「あれが巨人?」

「だろうな」


土煙と共にゆっくりとだが、近づいて来ているようだ。

それをみて気付いたのだ。

被害が出るのが遅いだけだったと。

この数の巨人に襲われれば、被害は凄いことになる。


「急いだほうがいいな」

「そーだね! ねぇジン!」

「ん?」

「今回は、私が前線に出てもいい?」

「おう。やってみな」

「ありがと!」


前線へ急いで向かう2人。


ーー


数日後、最前線へ到着した。


ズズーン ズズーン


と遠くで音を立てながら近づいてくる魔物達。


オーガを前面に後ろにオーガキング、オーガロード、そしてサイクロプスと大きいどころの魔物が揃っていた。

それを目の前に、騎士達が構えている。

その更に前に立ち、2人は魔物達を見据えていた。


「メル、援護は任せろ」

「うん! いっくぞー!」


「メラメラメール」


ゴォォォォォ


メルの背中で炎の魔法陣が凄まじい勢いで燃え上がっている。

ちょっと頭が弱い感じの名前だが、要は、ジンがやると「炎陣」なのだが、転生者ではないメルがその魔法名で魔法陣を構築するにはイメージが弱かったようだ。

そこで、オリジナルで考えてこの魔法名にしたようである。


炎を背に抱えたメルは、凄まじかった。


「それーーーー!」


紅蓮の太い閃光が前線全域を横切る。


ドォォォォォ


視界の全てが炎に包まれる。


「それっ! それっ! それっ!」


三カ所で炎の渦が現れる。


ゴゴゴォォォォォ


熱風が身体を打ち付ける。


「ウインドウェーブ」


風向きを魔物の方に返す。


「ジン! サンキュー!」

「おう。」


メルはおもむろに、両手を上げる。

すると、火の玉が頭上で大きくなる。


「行っけぇー!!」


多数の火球に分裂して飛んでいく。

面で攻撃するメル。


ドゴォォォォォ


辺り一面真っ赤に染まる。

オーガは全て焼き払われた。

残るは、サイクロプスである。


「メル! 人型は大体頭が弱点だ!」

「わかった! ありがとー!」


視界には五体のサイクロプスがいる。


メルは、右手を左へ振りかぶる。

そして、その右手に紅蓮の炎を宿す。

段々熱量と炎の量が増す。


ゴォォォォォ


ジンと騎士達はメルから離れる。


「そりゃーーーーーーー!」


ズバァァァァァン


全てのサイクロプスの頭に赤い線が入る。


ドバァと全てが灰になる。


『ワァァァァ』


騎士達が歓声を上げる。


「ハッハッハッ! 強いではないか! 我とも戦おうぞ!」


筋肉ムキムキの悪魔のベルフェが歩いてきた。


『メルちゃん頑張れー!』

『負けるなメルちゃん!』

『行けー!』


騎士達が応援する中、悪魔との戦いが始まる。

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