第28話 聖ルドルフ国 前線

「あらぁ? 邪魔者かしらぁ?」


そこに居たのは、不気味な笑みを浮かべる女の悪魔だった。


「悪いけど、止めさせて貰うぞ?」

「止められるかしらねぇ?」

「ふぅ。しょうがないな。やるか」

「出来るものならやってみなさぁい? ヒュドラ、やっておしまい!」


『シャーーー!』


そこには、九つの首を持ち、体がひとつになっているヒュドラがいた。


「ウォーターカッター」

「ウインドカッター」


水の刃と風の刃が飛んでいく。


スパスパァン


2本の首が落ちていく。


「よしっ! これなら行けるぞ! 」


ボコボコボコ


2本の首が再び生えてきた。


「ジン!これって魔石を壊さないと、ずっと復活するやつじゃない?」

「そうだな。魔石を探すしかないか?」

「とりあえず、全部の首を倒してみよう!」

「よし!」


魔法陣を展開しようとした時だった。


『『『グラァァァ』』』


三つの蛇の口からから毒霧が出てきた。


「うわっ!」

「げぇ!」


毒にかかってしまうジンとメル。


「キュアライズ 」


解毒魔法を使いながら、後ろに下がるジンとメル。


「なら、遠距離から!」


メルが魔法を発動しようとすると、違う首の蛇が毒液を吐いてきた。


「わっ!」


サッと避けるメルだが、ジンにも飛んでくる。

遠くにいると遠距離攻撃、近くに行くと毒霧を浴びせてくる。


避けながら、ジンは考えていた。


(どう攻略すりゃいいんだ? 毒にかかると動きが鈍くなって、更に毒を受けたら死んじまう)


「ジン! ジンは、回復に専念して私が前線に出ればいいんじゃないの!?」

「それじゃあ、メルが毒を受け続けるじゃないか! そんなのダメだ!」

「私が回復に回ると効果が薄いから効率が悪いんだって!」

「待てって! 今考える!」


ジンはメルをなだめながら、作戦を考える。


(回復をしながら攻撃も出来ればいいのか……)


ヒュドラの攻撃を避けながら考えているジン。


(毒さえ何とかなれば、物理的には大した攻撃はして来ないんだよなぁ)


(はっ! なんでこんな事が先に思いつかなかったんだ? 結局ゴリ押しだけど、ゾンビアタックだ!)


「メル! 自分にくる攻撃は避けておけよ! おれがゾンビアタックする!」

「ゾ、ゾンビ? 腐ったらやだよ!?」

「そうじゃねぇ。まぁ、見てろって」


ヒュドラの攻撃を避けながら前へ進むジン。


「聖陣」


ピカァーーーー


ジンの背中には光の魔法陣がキラキラと浮かんでいる。


『グルァァァ』


近ずいてくるジンに毒霧を放つヒュドラ。

しかし、ジンに魔法陣から光が降り注ぎ、毒を回復する。


「もう毒は効かない」


手をヒュドラの首にかざすと、ビューンと光線が飛んでいく。


1つの首が無くなる。


ボコボコ


また生えてくるヒュドラの首。

手をクロスさせるジン。


ヒュドラの首を横断するように、腕を振り払う。


すると


ビィービィー ズパァン


バッテンにヒュドラの首全てが無くなる。


しかし、またボコボコと復活する。


「キリがないか……」


天に手を上げるジン。


ゆっくり振り下ろす。


パァァァーーーー


ヒュドラへ、天から後光が降り注ぐように太い光線が降り注ぐ。


ヒュドラは身体から煙を上げ始め


『グァァァァァァ』


暴れ始めるヒュドラ。


表面から灰になってくる。


毒霧をものすごい勢いで吐き始め、メルにまで届きそうである。


「これで、どうだ!」


もう一方の手を上げると、振り下ろす。


極太になった光が降り注ぐ。


ジューと灰になっていくヒュドラ。


「あらぁ? やられちゃったわねぇ。私がやるしか無いかしら?」


アスモは爪をこちらへ向けて駆けてくる。


「それ! それそれ!」


爪を次々振り下ろしてくる。


ザシュッ


掠ってしまったジンの腕がみるみる紫色になっていく。

背中の魔法陣から光が降り注ぐが、中々治らない。


すると、ジンは魔法陣に腕を突っ込んだ。

腕を抜くと、正常な状態に戻っている。


「あら? この毒も治っちゃうのねぇ」

「この魔法陣はなんでも回復できる」


ドバッ


全身に毒液がかかる。


「これは、どうなのかしらぁ? ふふっ。」


ブーン


魔法陣が後ろから前へジンの体を通過すると、元のジンに回復する。


「あら、これも回復しちゃうのねぇ」


アスモが一旦離れた。


その隙にジンは魔力を魔法陣に注ぐ。


パァァァァ


魔法陣から観音様の様に多くの手が出てくる。

その手がそれぞれ光のエネルギーを溜めている。


「これで、どうだ!」


ドバァァァ


沢山の手から光線がアスモに向かって飛んでいく。

アスモは避けているが光線は追ってくる。


「なんなのよコレ! やってられないわ!」


下に珠のような物を投げつける。

すると、魔法陣が展開される。


「逃がさないぞ!」


光線がアスモに迫る。

当たる!と思った瞬間パッっと消えてしまった。


「くそっ! また逃がした!」

「ホント、逃げんの速いよねぇ!」

「逃がして悪い」

「いいよ! もう少しだったのにねぇ!」

「あぁ」


『ウォォォォォォォ』

『神よぉぉ』

『神様よぉぉぉ』


アスモは逃げたが、引けた事を喜んでいる。

背中から後光のような光がさしていたジンは、英雄と言うより、神様のように崇められ始めていた。


『きっと、神が使いを寄越してくれたのだ!ありがたやぁ』


ジンを拝み始める始末。


ザッと敬礼して並んだのは兵隊の方達であった。


「この度は悪魔を倒して下さり、ありがとうございます! それでですね、この国の教祖様とお話して頂けませんでしょうか?」

「まぁ、逃がしちゃいましたけどね」

「いえ、追いやってくれてありがとうございます!」

「是非、お話を!」


ジンは小声でメルに聞く。

「どうする?」

「でもさ、行かないと面倒なことになりそうじゃない? 付きまとわれても嫌だしさ」

「たしかに……じゃあ、行ってみるか」


「わかりました! 行きましょう」


ジンがそう言うと、聖地に向けて歩いて行く騎士たち。

それについて行くジンとメル。

教祖との話とは、一体どうなるのか。

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