episode2:トクサツ戦士大暴れ!!の巻

File No.13:戦闘ちゃんの職探し!

 ――あたし、石ケ谷ヒロミ!


 見て見て~♪ 腰に巻かれたこのピンクのキラキラとしたベルト! カッコいいでしょ~!!

 この前、あたしが転生してきた世界【ブレイドピア】に眠る英雄の封印を解いたのは良いんだけど……


 英雄と一緒に色んな悪の化身達も解放しちゃって、怪人が群がってブレイドピアは大ピンチ!――かと思いきや。


 同じく英雄解放によってパワーアップした『トクサツールベルト』に導かれて、あたしはトクサツ戦士に変身して、見事悪を退けることが出来たの!


 まさか自分が変身してヒーローになるなんて嘘みたい! でもホントの話!!


 無限大のイマジネーションを武器にして、悪いやつはどっからでも懸かって来なさ~い!!!



 …………はい、あらすじ終わり! 本編入りま~す。


 ★☆★☆★☆



 ――ここはあたしの愛しの我が家、喫茶店『リリィ』。


 あたしがトクサツールベルトを手に入れてからと言うものの、あの緊急事態宣言がかなり効いたのか『ジャックス』はおろか、悪の組織らしき動きすら全く見られなかった。


『W.I.N.D』からも緊急の要請が来ないし、あたしは何してるかと言えば、トクサツールベルトを眺めているか……


「トクサツール! トクサツ4Kテレビ!!」


 ――このようにベルトの力で、2階のあたしの部屋にテレビやら家電道具を生み出してインテリアコーディネートしてるくらい。

 ……でもトクサツールはリフォーム用具じゃ無いのよ!って自分に言ってやりたい。


「ヒロミさ~ん! お茶入りましたよ~♪」

「あ、今行くー!」


 あたしの大好きなルリナ・グリーンリバーちゃんの淹れる紅茶とチーズケーキは、今やあたしの至高の一時となった。


 チーズケーキも良いんだけど、あたしはルリナちゃんを頬張りたい、緑のエプロンドレスのフリフリをはむはむしたい♡︎♡︎ ――――あ、またよだれが……


「まーたトクサツールで物を生み出してたんですか?」とルリナちゃんが若干呆れながらあたしに言ってきた。


「あんまり私物に使うのは行けないって分かってるけど、つい夢中になっちゃって……」


 ルリナちゃんは「もう……」と少し膨れながらもせっせとチーズケーキを二等分にして、あたしに分けた。


 こんな時間がずっと続けば良いのに……


 ――――――って、あれ?


 何か忘れているような。





「あ゛ーーーーーーーッッ!!!!!」


 あたしの絶叫に50センチほどピョンと飛んでビックリしたルリナちゃん。



「な、何ですか急に……チーズケーキ落とすところでしたよ!?」

「『戦闘ちゃん』達の職探しの事すっかり忘れてた!!」


 ……ところで皆は覚えてる?


『戦闘ちゃん』とは、以前スコーピオン君(元タケルの親友)に仕えていたジャックスの女戦闘員達の事。

特撮界じゃがある程レアなキャラ。


 ずっと怪人にセクハラに遭ってて、あたしの元に相談して思いきって辞職したは良いんだけど……タケルに再就職の事を任せっぱなしでそのまんまにしちゃったの!

 変身イベントがあったとは言え、この問題を宙ぶらりんにさせる訳にはいかない。


 でないとまた本家みたいに2~3話程度で女戦闘員の出番が無くなっちゃうわ! 気に入ってる人もいるのに!!



「ルリナちゃん、ちょっと『W.I.N.D』の基地に行こ。戦闘ちゃんの再就職のお手伝いしよう!」

「はーい!(食べかけのチーズケーキ持ってこ)」


 ちょっとだけ卑しいわよルリナちゃん。


 ★☆★☆★☆


 ――『W.I.N.D』指令本部基地。


「タケルー! 戦闘ちゃんいるー!?」

「ヒロミさんがお手伝いに来ましたよー、もぐもぐ」


 人ん基地でチーズケーキ食べてるんじゃないの、ルリナちゃん! しかも丁寧に紅茶まで用意して……


「ヒロミィィィィィ! 来るのが遅いんだよお前は!!」


 タケルが猛ダッシュで何かに追われるような必死の形相と、やつれた顔であたしに迫ってきた。何これ、新手のホラー映画?


「どうしたのよ、そんなに必死になって」


「どーしたもこーしたも無い! もう俺には限界なんだよ、お前の連れてきた『戦闘ちゃん』の面倒見るのは!!」


「「「ウフフフフ……!」」」


「ほら来たァ!!」


 タケルも相当ビビったリアクションで、入り口手前の階段の上段では『戦闘ちゃん』達が横一列に並んでいた。

 ……てか前にあたしと対面した時もそうだったけど、何で皆足踏み揃えてゆっくり降りてくるの?


 何で階段の証明真っ暗なの?


 何で網タイツと禍々しいフェイスペイント強調してくるの?


 それが特撮の女戦闘員の鉄則なの??


 普通ならここで女戦闘員らしく毒針等の奇襲に合うところだが。


「「「ヒロミさんお久しぶりですぅ~♪♪」」」


 敵意も見せず即座になつくように、戦闘ちゃんがあたしに抱きついてきた。

 ヒロイン×女戦闘員の百合ハーレム、異色のコラボレーションだ!


 あたしはそんな抱きつく戦闘ちゃん達を落ち着かせた。


「はいはいそこまで! それとあんまりタケルを怖がらせちゃダメ。かなりびびってたわよアイツ」


「だってぇ~」

「あの人ウブなのか知らないけど、あたし達を見るなりドキドキしててぇー」

「それが可愛くてついついいじめたくなるんですよ~!」


 ……へぇ~、アイツ結構女の子にチョロいんだ。


「お前らなぁ!!!」

「まぁまぁ落ち着いて……チーズケーキ食べます?」


 憤怒するタケルにルリナちゃんがなだめる。で、ルリナちゃんチーズケーキどっから出した?


「とにかく、コイツらの就職を決めないことには『W.I.N.D』のイメージダウンにも成りかねない、もぐもぐ。そこでヒロミにも何か案が無いかと思ってるんだが……」


 ルリナちゃんから貰ったチーズケーキを頬張るタケル。あたしからは別に案は無いことは無いけど……


「その前にタケルが何で戦闘ちゃんにうんざりしたのか教えてよ、話はそっから!」


「いや、それなんだが。俺だって最初はヒロミに頼らずジョブフォローしたんだよ……」


 はい、こっから一旦回想入りまーす。


 ■■■■■


「じゃあ……お前ら『戦闘ちゃん』の特技は何だ?」


「誘拐!」

「裏工作!」

「男の悩殺!」


(ろくな特技が無ぇ……)


 タケルの話によると、このように戦闘員としての義務に全うしていた戦闘ちゃん達は、就職とは程遠い個性で探すことが難航していた。

 最初はタケルも『W.I.N.D』の諜報員、スパイとして活躍させようと考えたのだが……


 ――タケルが自分の個室で職務を全うしていた時。


「ウフフフフ……」


 何処からか不気味な女の声がして、タケルが様子を観に行ったら、その背後に戦闘ちゃんが……


「わ゛あ゛あ゛あああああ!!!!」


 完全にホラー映画の展開に、心臓が止まりかけたり。

あとはやたらに誘惑させてはそれにビビって反応するタケルを面白がったり、挙げ句の果てには……


「ぁん……♡︎」

「ウフ、ウフフ……♡︎」


 戦闘ちゃん同士でレオタードや網タイツを擦らせながら、妖艶な百合プレイを楽しんでいる様を覗いたときには精神的ショックでタケルは寝込んだらしい。


 ■■■■■


「成る程ね……」


 あたしは一部始終を聞いて納得したと同時に、ある疑問が浮かんできた。


「戦闘ちゃんはさ、あの童貞サソリのセクハラが嫌でジャックス辞めたんでしょ? 貴方達がやってる所を聞くと、自分もエロい事は自覚してる?」

 ちょっと変な質問だけど、一応言えることは言っておかないと。


「あれは、あのクソサソリが女の子のデリカシー守らない最低な男だったからです!」

「頼んでもないのにやたらキス迫ってくるわ、おっぱい揉んでくるわ……」

「思い出しただけでも寒気がしますッ!!」


 その相手がタケルの元親友であって、それを間近聞いているタケルの心境はこれ如何に。

 ……そうか分かった。これ接客で自分勝手に執着してくる客に嫌気差して辞めたパターンだ。



 ちょっと公共の場じゃ言いづらいけど、これで彼女達の就職先のイメージが付いたわ!


 あとは環境を変えられれば……と思ったその時!!



『緊急事態発生! 本部基地より侵入者出現! 隊員は直ちに警戒体制に入れ!!』

「何!?」


 もう、こんな時に……!!


 緊急アナウンスに煽り立てられたあたしやタケル達は本部のモニターで侵入者を確認する。


 そしてルリナちゃんがその正体に気づいた。


「ちょ……ヒロミさん、あの人まさか、さんじゃないですか!?」


「え」

「嘘ぉ!?」


 何であのエロ蜂女がここに居るのよぉぉぉ!!!

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