第11話入学式当日(side 司)

 しかし、またその決心を狂わせることが起きた。

 入学式の方は、準備はギリギリになってしまったものの、何事もなく順調に進んでいた。だが、俺は内心すごく焦っていた。

 家柄が大きい分、家族ぐるみの食事会に参加して愛想を振りまくことが多いので、ポーカーフェイスをするのには慣れていても、心の動揺までは装うことができず、式の終始収まることはなかった。

 なぜなら、伊織が入学式会場のどこを見渡してもいなかったからだ。

 俺は生徒会長として、一人の男として、伊織に頑張っている姿を見てもらおうと思っていた。しかし、その一番見てもらいたかった肝心の伊織が見当たらなかった。

 俺は心底がっかりした気持ちと、伊織に何かあったのかと心配になり、新入生に挨拶を終えた後、すぐに伊織のクラスの出席を確認した。

 名簿を確認すると、確かに「双葉伊織 出席」と書かれていた。この学園に来ているのは確かなようだ。

 ではなぜ、新入生の伊織がこの場にいないのだろうか。俺はますます伊織が心配になり、後で伊織の担任に確認してみることにした。

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