第6話〜燃えるケスカロールの街〜


「シャロール! そこどけ!」

「えっ……⁉︎ ゴマくん、その姿……どうしたの⁉︎」


 転身を完了したボクは窓ガラスを体当たりで突き破り、ロボットのカエル軍団の方へ疾走した。

 ロボットのカエルを次々にぶっ倒しているソアラと合流。ボクに気づいたようだ。


「お! お前が〝暁闇ぎょうあんの勇者・ゴマ〟か! いたんなら一緒に戦えよー!」

「……ちょっと訳ありで転身できなかったんだよ! てか、お前ボクがいた事に気づいてなかったのか!」


 ソアラはまた新たに1体、カエルロボットを蹴飛ばしながら笑う。


「ハハハ、まあ何でもいいじゃねーか! よおし、ゴマ、一緒に行くぜ!」

「ソアラとか言ったな。テメエにだけ、シャロールにイイとこ見させはしねえからな!」


 ボクは魔剣ニャインライヴを構え、ソアラは拳を構える。次々と向かってくるカエルロボットどもに、ボクらは狙いを定めた。


「はぁあああーーーー‼︎」

「おらおらおらおらおらぁーー‼︎」


 ——ここからは競争さ。

 ソアラの奴は、目にもとまらぬ速さでパンチとキックを繰り出し、カエルロボットどもを蹴散らしていく。

 負けてたまるか! ボクは鈍った体に鞭打って剣を振り回し、次々にカエルロボットの脚を斬り飛ばす。倒すたびに、カエルロボットはスパークしながら爆発し、街中に残骸が山積していく。


 だが倒せど倒せど、歯を食いしばりながらボクらを見ている敵の大将クリスの後ろから次々と、カエルロボットどもが向かってきやがる。

 奴らの狙いは、スライムどもだ。絶対にここは通させはしねえ!


「……くそ、キリがねえ! ゴマ、お前ならもっとデキるだろ!」


 ソアラが息を切らしながらボクを見て言った。——なら、ちょっと本気、見せてやっか!


「フン、ボクを誰だと思ってやがる。任せろ、一気に潰してやらあ。……〝ニャインライヴ・スラッシュ‼︎〟」


 ボクはわざと囮になり、まとまって飛びかかってきたカエルロボットに狙いを定め、横方向に薙ぎ払った。紫色に光る魔剣ニャインライヴが、10機ほどのカエルロボを真っ二つにしながら吹き飛ばす。

 ……だが近くの街路樹や住宅も、真っ二つになっていた。


「ハッハハ、ゴマ、お前って奴は大胆だなあ!」

「おら、どんどん来いよ。全部ボクがぶった斬ってやるからよ!」


 カエルロボットの数が減ってきた。残り30機ほどだろうか。奴らは懲りずに飛びかかってきやがったが、ボクはまた〝ニャインライヴ・スラッシュ〟でまとめてぶった斬った。斬り損ねた奴らは残らずソアラが蹴りで始末。これで、カエルロボット軍団は完全に潰すことが出来た。


「ぐぬぬぬう……! 小癪なチビネコどもめぃ……! 邪魔しやがってぃ!」


 顔を歪める、黒い鎧を着たクリスとかいうオッサン。あとは、この騒ぎの首謀者であるアイツを潰すだけだな。


「〝ギガサラマンダー〟!」


 クリスが叫ぶと、街の入り口から高さ2メートルはあるであろう恐竜のような形をした銀色のロボットが、ガシャンガシャンと足音を立ててクリスのいる場所にやってきた。角張ったボディで動きはぎこちなく、体の後ろからは黒い排気ガスが出ている。ドデカいオンボロロボットだ。


「こうなったら〝ギガサラマンダー〟の火炎放射で、この街もろとも灰にしてくれるわぁ‼︎」


 クリスが叫ぶと、〝ギガサラマンダー〟とかいうオンボロロボットの口が開き、炎が噴き出した。

 炎は近くの建物に次々と燃え移る。〝ギガサラマンダー〟は首の角度を変えながら一定間隔で炎を吐き、街のあちこちに火をつけていく。


 街のヒトたちは外に避難しているようで、怪我人の心配はなさそうだ。だがこのままじゃ、ケスカロールの街が灰にされてしまう。


「させるかッ! ニャインライヴ・スラッシュ‼︎」


 ボクは魔剣ニャインライヴを構え、〝ギガサラマンダー〟の脚に斬りかかった。——だが。


「……バカな!」


 斬れない。ガキンと音を立てて、跳ね返されてしまった。鋼鉄も貫くボクの魔剣ニャインライヴが効かねえ。

 オンボロロボットに見せかけて、めちゃくちゃ頑丈な素材で出来てやがるのか⁉︎


「オレがやる! はぁぁぁーー‼︎」

「やめろソアラ! 無茶するんじゃねえ!」


 ソアラは拳で〝ギガサラマンダー〟の腹部を殴ったが、バンという金属音が響くだけで、ソアラは後ろに跳ね返されてしまう。


「いっ……てぇぇぇーー‼︎」


 右手を押さえて叫ぶソアラ。コイツ頭悪いのか……? 剣で斬れねえ素材に拳が通じる筈ねえだろ……。


「グハハハァ! 〝ギガサラマンダー〟のボディは、超硬化素材〝ギガトロニウム〟で出来ている! 完全無敵の兵器なのだぁ!」


 クリスの笑い声が響くと、街中に10メートルほどの火柱が上がった。炎がシャロールの家に迫る。家の中に避難していたスライムたちが怯えながら、シャロールにくっついているのが見えた。


 ……こんな奴如きに何も出来ねえボクじゃねえ。ボクはいくつものピンチを乗り越えてきたんだ。アタマを使え——!


「……そうだ! ソアラ、ちょっとついて来い!」

「おうゴマ! 何か策でも思いついたのか⁉︎」


 ボクはソアラの腕を引っ張り、シャロールの家に向かって走った。窓から家の中に飛び込み、すぐさまシャロールを呼ぶ。


「おい、シャロール!」


 スライムに囲まれながら目を覆っていたシャロールが、ボクの声に気付く。


「……ゴマくん、ソアラくん……。このままじゃ、私たちの街が……!」


「いいか、シャロール。アイツに勝つには、テメエの力が必要なんだ。今からボクの言う通りにしろ」


「えっ……?」


 シャロールは涙を拭き、きょとんとした顔でボクとソアラを見下ろした。

 ボクは語調を緩めて言った。


「その場で、四つん這いになれ。今すぐだ!」

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