第11話 あれから二年

 さてさて、驚きである。


 最後にこのページで書いた後、ほぼ二年が経過しているではないか。

色々あった。色々あったのである。

 前回のこの話は、飛び込み営業をし始めたところで終わっていたが、あれから4ヶ月ほど、飛び込み営業は上手くいかなかった。鳴かず飛ばずとまではいかないが、まぁ恥ずかしい実績であったよ。

 ところが半年後に覚醒し、同期で取得件数及び取得軒数、取得額すべて1位になった。何だそりゃ。


 まぁ前の営業会社の積上げもあったから、商談は他の同期に比べて圧倒的に上手い。後は前の前の営業会社でやっていた、ファーストインプレッションで笑いに持ち込むことを使えば、とんとん拍子であった。後は狙わないお客さんはさっさと切る。


 それで、仕事はとりあえず数字の上では順調にいったのだが、今は管理職となり躓いている。まぁそれは後程記そう。

 信用出来ると思っていたボスがカスだったり、軽んじていた先輩が良い人だったり、嫌いな動機は嫌いなままだったり、色々とあった。人を見る目に自信はある方だったけれど、新入社員の見る目は中途入社といえどアテにならないものだ。


 結婚もした! そして結婚式も挙げた!


 二年とはそういうものであろう。特に、僕達の年代ともなれば。

 人生のイベントごとが一挙に襲ってくる年代なのだ。そのイベントごとの有無と、どのようになるかはそれまでの人生の過ごし方なのだろうと、しみじみ思ったものである。

 入籍が、挙式がどのようなものであったか。その詳細は控えよう。いつの日にか書くかもしれないが。


 色々なことがあったような、なかったようなである。もっと充実した十代と二十代を過ごしていれば、より三十代は濃密なものとして過ごせただろうにという後悔はある。


 あるのだ。詳細は控えていても、どうしようもない程に。


 しかし、後悔していても始まらない。今が一番若いのだ。三十代に入り、この時間を充実したものにすれば、未だ見ぬ四十代と五十代を軽やかに、素晴らしく面白可笑しく過ごせるだろう。


 だから、今やるのだ。今なのだ。

 日記を再開する時は。


 さて。

『今が一番若い時』以上に手垢に塗れた言葉ではあるが。

『ピンチはチャンス』である。

 そこまで差し迫っていないけれど、ここで気付くべきであると思う。


『チャンスとは、それを活かせる者の頭上にのみ乱舞する』

『嘘喰い』からの引用である。じゃあ真理じゃん。そうでしょ?

 これは転じれば、ピンチを避けられる者の頭上にのみ、警報は鳴るというものである。

 差し迫ってはいないが、このままでは俺は管理職としてマズい。昇進し続けていけるかわからない。そう感じる。


 所長の仕事をさせてもらっているが、朝礼から始まり、事務、一日の閉め方に至るまでグダっているのだ。

 如何に営業が出来ると自称し、のたまい、叫んでも実際に見ていない社員たちにはイマイチ伝わらず、それ故俺の言葉も響きが小さい。

 何より、一対一で商談する経験はあれど、大勢の前で長時間話す経験は少ないのだ。滑舌よくないし。

 自分が個人職級時代にいた営業所ならば、営業をしている様を見ているため響かせることも出来ただろうが、そんなことを言っても始まらないのだ。


 まず朝礼を営業のように魅せ、社員の信頼を掴まなければならぬ。

 そして事務を迅速に正確に行い、社員の信用を損なわぬようにせねばならぬ。

 一日の活動の終わりでは的確に助言を行い、社員の信頼を得ねばならぬ。


 どの業務でも、上手くやれば信用を得て、下手にやれば信用を損なうのだ。


 それらを成すためには、今一度技術を磨かねばならぬ。知識を得なければならぬ。そしてその二つを、使えねばならぬのだ。


 それらを得て、使ううちに使いこなせるようになったならば、僕は管理職としていっぱしになれるだろう。


 逆に、使えるようにならねば半端に終わる。

 知識と技術を得た後、使うに至り定着させるためにこれを再開するという面もある。


 俺は知識を習得せねばならぬ。技術を修得せねばならぬ。

 より良く生きるために。


 そんなこんなで、今日は本を買ってきた。

『メモの魔力』『人が動きたくなる言葉を使っていますか』『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』『超・筋トレが最強のソリューションである』

の四冊だ。


 朝礼を上達するための本を基本的に探したが、悪くない選択だと思う。ここから始めようじゃないか。一冊筋トレの本が混じってはいるが。


 結局、ルッキズムは蔓延し始めて久しいのだから。ビジュは武器なのだ。その武器も鍛えようと思う。前作は役立ち、五年ほど前の僕を確かに救ったのだ。営業だって、外見の要素はデカい。


 当たり前から、逃げないことを誓おう。


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