5

 そんなロクに話もしない少年を保護してしばらく経った頃だった。

 その日も、一応は起きているのを確認した後、友人の元へと訪れ、まず最初に特訓をし、汗を流した後、ひと休みをしていた。


「なぁなぁ、こんな話も聞いたことがあっか?」

「どんな話だ?」


 わいわいと、他愛のない話をしていた最中、ふと友人の一人が意気揚々と話を切り出した。


「いや、なんかさ、オレのダチから聞いたんだけどさ、ここの部分が黒色のヤツを見つけたら、すぐに報せてくれって話があんだけど」

「·····!」


 表情が固まった。

 ここの部分と示した箇所は、もみあげ部分で、その部分が黒色を持つ人物。

 言葉を詰まらせているヒュウガには気づいていないらしい、もう一人の友人が、「ハァ? そんなヤツありえなくねーか?」と声を上げた。


「だってよ、オレ達死神の特徴は、銀色だって決まってんのに、それじゃあ、死神じゃなくね?」

「そうなんだよ。オレも最初に聞いてそう思ったんだが、ソイツがちょっと特殊らしいんだわ」

「? 特殊って?」


 ヒュウガは二人の会話を聞いて、人知れず息を呑んでいた。友人の一人が言った。


「大罪の証である"災いの髪"っていうらしくて、この世界に災いをもたらす可能性があるから、一刻も早く身柄確保をしたいんだってさ」

「"災いの·····髪"?」


 思わず、割って口に出してしまったが、酷く喉が乾いていたようで、つっかえていた。


「ヒュウガが黙っていたなんて珍しいな。今いるのを忘れていたぜ」

「オマエ、ソイツのことを知ってんか?」

「いや、いやいやいや。オレもそんなヤツ見たことがねーよ。そもそもありえねーって」


 笑えていただろうかと不安になるぐらいに冷や汗が滲み出ていた。

 ここでアイツのことがバレたら面倒な事になりそうだ。

 しかし、ヒュウガの不安とは裏腹に、二人はどっと笑った。


「だよなー! いくら罪を犯した死神とはいえ、他のヤツらと大差ねーだろ」

「しかも、どこから出たのか分からねー"ウワサ"だろ? ありえねーありえねー、なあ? ヒュウガ」

「ああ、そうだな·····」


 無理やり笑って誤魔化すのに精一杯だった。

 その"ウワサ"が"本当"ならば。

 かなり面倒な事が起きる気がして仕方なかった。

 疑いたくはないのだが、実際、あの少年はどこから来たのか、何者なのか、未だに何一つ分かってない。だから、この"ウワサ"は、少し彼のことを知る手がかりになるかもしれないし、今、改めて、得体知れない恐怖がまとわりついた。

 一体、どうすれば。

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