6.

 6.


 夕暮れ時、浜辺を散歩する。


 靴に砂が入る不快感はお互いに許容できない性質で、階段上に作られた堤防を気の済むまで歩こう、となった。


 一つ上の段、その縁をバランスを取りながらを歩く君の手を取って横に並んだ。時折不規則に預けられる体重が、君の存在を確かに感じさせてくれるのが嬉しい。


 会話はない、君は足元に注意が行っているので目線すら交わさない。口角を上げる君の横顔を楽しんでいる俺の方がその内足を踏み外すかな。


 潮風が心地好い。耳を打つ風の音は他の全てをかき消していたけれど、風にたなびく君の髪がまた、他の全てを視界の端に追いやって、世界に二人きりみたいだ。


 きっとそれで間違いないのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る