第二話・閑話 フレニカの過去・上

「エレネス嬢、昨日はとても楽しかったよ。じゃあ、次は【魔法議会】で。」

「はい、とても有意義なお時間をありがとうございました。」


朝早くにお嬢様へと挨拶をしたエクレシアはそのまま帰るとのことなので、屋敷の前まで見送ることにした。

屋敷の前まできてから、エクレシアが話し出した。


「そうだ、フレイア。近い内、【魔法議会】にエレネス嬢と出るが、使用人等は付いてくることが出来ない。しかし、私がエレネス嬢にしっかり付いて、送り迎えをするから安心してくれ。詳しくはエレネス嬢に聞くと良い。」


「…かしこまりました。」

「2人の時は前みたいに、と言った筈だけどね。」


「…癖です。じゃあ、また。」

「ふふ、また今度ね。」


話し終えて帰っていくエクレシアを見届けてから屋敷に入る。私は先程の話を考えながらこう呟く


「朝食、何にしようかな。」


___________________私は現在エクレシア様に連れられて【魔法議会】が開かれるシルファール王城へ向かっています。馬車に揺られる中、まだまだ時間があるのでエクレシア様に話しかける事にしました。


「エクレシア様、一つ質問をよろしいでしょうか?」

「ん?なんだい、エレネス嬢。私に答えられることならなんでも答えるよ。」

「それでは失礼して…あの、フレニカの過去について、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


そう、フレニカについて。フレニカ本人に直接尋ねた時ははぐらかされてしまったのですが、エクレシア様に聞いたら、教えてくれるかもしれません。


「………エレネス嬢。彼女には、もう尋ねたのかな?」

「はい。ですが、はぐらかされてしまいました。それに、この前エクレシア様が訪問した際、偶然フレニカと話していたのを見ました。」


そう、今回【魔法議会】に行く理由である私の研究資料を奪われそうになった時の話しです。あの時は少ししか聞いていないと言いましたが、エクレシア様とフレニカが親しげに話していたのを見ました。


「その際、エクレシア様に魔法を教わった事、そして何故か、絶対に裏切らないと言って後ははぐらかされました。」


「…そっか。エレネス嬢、彼女が裏切らないと言ったなら、裏切る事は絶対に無いよ。それだけでは不満かい?それでも、彼女について知りたいかい?」


エクレシア様は、そう問い掛けてくる。

エクレシア様がそう言うなら、彼女が裏切らないというのはそうなのだろう。ですが私は、それでも知りたい。


「………はい。彼女が私に対して害意が無いというのは分かりますが、それでも…彼女について知りたいんです。」

「………彼女に謝らないとな。エレネス嬢、今から話すのは突拍子も無い話だ。彼女についての印象が変わるかもしれない。聞く準備はいいかい?」


「……はい。お願いします。」

「それじゃあ話そう。私に【永き祈り】という二つ名がある理由は知っているかい?」


「はい。魔法により延命して、過去に生きた人々の願い事、祈りをついで発展に貢献してきたからと。」

「その通り。そして、あまり知られていないけど、私は『魔力破壊マナブレイク』が起こるよりも二百年以上前から生きていてね、フレニカとの話はそこまで遡る。」


まさか、エクレシア様が『魔力破壊』を生き残った魔法使いであるなんて…それに、フレニカとの話がそれよりも以前の話?


まさか、魔法の全盛期の話なのですか?

ですが、それなら屋敷の庭を僅か1日で元よりも良くした彼女にも納得が行かないこともありません。


「そうだね、今から700年ほど前。いや、もっと前かな。日記の量的に750年は経っていないと思うが、その位前だね。」


750年前…確かその頃は現在のシルファール王国の位置に今は無い国があった筈です。

それもエクレシア様によって延命されていた、その国の最後の騎士の方がこの前亡くなったと聞きました。


確かそれによって【復讐の大狼】の封印が解けてしまったとか…


「まぁその頃にね、彼女と初めて出会ったんだよ。私が出会った時、彼女は…いや、これはフレイアにも話せない事だった、すまないね、忘れてくれ。」

「…分かりました。」

「さてさて、何から話そうか…」


今、エクレシア様が話そうとした事は、一体何なのだろうか。それに、フレニカにも話せないこととは…?しかも、フレニカの事を「フレイア」と呼びましたし…


質問したは良いですが、これでは謎が増えるばかりですね…私が頭を悩ませている内に考えを纏めたのか、エクレシア様は話し始めた。


「そうだ、彼女はあの時王国騎士をしていたよ。国の人を守る為、その一心でね。

それに一番強かったからね、騎士団のトップ、団長になっていた。」

「騎士団の団長…?それに、その頃と言えば人々も、魔物の強さも今より何倍も上だったという話では…?」


「そうだね。正しくは何倍では無く何十倍も、だけどね。しかし今の世界は平和だし、そこまで強くなる必要が無いからね。あまり気にしなくて良いよ。」

「…そうですか。」


「話を戻すよ。騎士団長をしていた彼女はね、その強さのあまり、多くの人々に嫉妬されていたんだ。勿論彼女を慕う人もとても多かったよ。それでね、とある任務を最後に彼女は国に裏切られたんだよ。」

「…!」


まさか、フレニカが彼の国の騎士だったとは…しかも、その頃に一番強かった人物でもあると…それに、彼女が急に言った「裏切らない」という発言は彼女の体験から来ているということですか…


ここまでで大分情報量が多いのですが、まだフレニカとエクレシア様の関係が見えてきません。このま話を聞いてれば分かるでしょうか…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る