閑話 王都のとある冒険者

「ねぇねぇ2人とも!これ見てし!」


 ここはオルスメニアの王都、モルモルンの酒場。チヒロ達がいるジーニュの町に比べたら桁違いの広さ。酒場単体なのにホテルの宴会場くらいはある。

 そこの1つの円卓に向け、薄い紫と桃色の服、いわゆるゆめかわ系でまとめたツインテールのギャル風少女が新聞を握りしめて向かう。


「なんですかぁ?アプリコットさん」


「またボクの活躍の記事かい?全く、期待の的は辛いな。ハッハッハ!」


 間延びした喋り方をしたロングヘアの少女は迷彩柄のローブを身につけて頬杖をついている。

 もう1人のサイドポニーの少女はビキニアーマーの上にマントを羽織っており、高笑いをしている。


「それが今日の新聞の記事、久しぶりに新人だし!」


「なに!?」


「へぇ、誰ですぅ?」


「『冒険者登録から2日でドラゴンを倒した新人チヒロ』らしいし」


 チヒロの事はどの新聞社も記事にしている。通常2日でドラゴンを倒すなど普通あり得ない。

 ビキニの少女は手に持っていたコップを落とす。が、ローブの少女がそれを落ちる前にキャッチする。


「もっと凄い人出てきちゃいましたねぇ。もう昔の人なんじゃないですかぁ?」


「やめろエルエル!」


 エルエルと呼ばれた少女はコップを静かに机へ置き、意地悪そうに笑う。


「でもそんな凄い人なら会ってみたいし」


 アプリコットは椅子に座り、口を押さえながらくすくすと笑う。


「む、それもそうだな。チャンスがあったら宣戦布告しにいってやるか」


「わかりましたぁ。ミハルさん」

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