再会

ガチャリと音がして、目の前のドアが開いた。

一瞬、息が止まった…


声が出ない。


「あ…」

「!!」

「ヒロ…」

「うん…」


奥から赤ちゃんが泣く声がした。


「マコ?ダレ?アンタ」


色が黒い、豊満な体型の女性が赤ちゃんを抱っこして出てきた。


「いや、ちょっと。仕事行ってくるから」


誠君は慌ててドアを閉めて、女性を止めた。

私とは目を合わせず、通り抜けようとした。


「誠!逃げるなよ」


すかさず溝口君が誠君の腕を掴んだ。


「逃げるつもりはない、でも今から仕事なんだ、休めないんだ…」

「いつなら話ができる?神谷かみやにきちんと説明してやれよ、ずっと待ってたんだぞ!」

「…ごめん、明後日の火曜日なら、俺から行く、ちゃんと説明するよ」

神谷かみや、どうする?」

「わかった、火曜日だね?じゃあ、1時にあの公園で待ってるから」

「いいのか?もっと言いたいことがあるだろ?誠に。言ってやれよ」

「今まで3年も待ったから、あと2日くらいなんでもない、それから…無事でよかった…」


そこまで言うのがやっとだった。

フラついた私をとっさに支えてくれたのは、溝口君だった。


「本当にごめん、じゃ、行くから」


溝口君の手をほどくと、さっさと行ってしまう誠君。

3年ぶりの再会も、あっという間だった。

何もわからないままだけど、誠君が無事だということだけは確認できてよかった。


「いいのか?あれで」

「うん、今度の約束は守ってくれると思うから。3年待ったんだもん、あと2日くらいなんでもないよ」

「そっか…えらいな、神谷かみやは。誠はどうしちゃったんだろうなぁ」

「…わからないけど、よほどのことがあったんだよ、きっと」


その日はそのまま帰った。


その日の晩御飯は、いくらか食べれた。

何もわからなかった時にくらべたら、一歩進んだ気がする。


_____誠君を待っていた3年のあいだに、私だって成長できたはず




火曜日の1時。

私は誠君と約束した公園へ行く。

私の大事なシーンはいつも、あの公園だ。

ブラジルという国で3年も過ごした誠君は、何が変わってしまったのだろうか。

私との約束を忘れてしまうほどの何かがあったのだろうか。

そしてあの女性と、赤ちゃんとの関係は?


何を言われても取り乱さないように、ずっとやめていた安定剤を飲んできた。


_____大丈夫、私は大丈夫…


呪文のように唱える。


近くの工場の、1時を知らせるサイレンが鳴った。

公園への坂を登ってくる誠君が見えて、私はひとまず安心した。






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