10



side. Akihito






ここの所、水島に付き合ってちょくちょく授業にも出るようになった。


とは言っても、サボる時はサボってたけど…。




6限とかマジだりぃとか思いつつ、

放課後はまた一緒なんだからと、とりあえず授業は出るつもりでいたのに────…






「クソッ…!」



ガシャンと蹴り飛ばしたフェンスが、音を軋ませヘコむ。




つい今しがた、廊下で佐藤に捕まった。





『もうやめなよ。』



何も知らないクセに、

勝手にズカズカと俺の領域に入ってきて────…



ウンザリする…




全てを見透かしたみてぇな簡素な助言。


曖昧な言葉のソレは、

俺の痛いとこを的確に突いてきやがった。







解ってる、佐藤は悪くない。

あの時の水島と同じ…俺なんかの為に、馬鹿みてぇに必死になってくれてるのに。



また俺はその手を振り払い、傷付けてしまった。








(なんで、だよ…)



俺を好きだと言ったアイツ。

俺の代わりに涙したアイツ。


自分が一番辛いクセに…

どうしてそこまで尽くそうとするのか。






「……あ」



そうか、同じなんだ。



好きなだけじゃ、傍にはいられない。

片道の想いは決して報われやしない。



確定した悲恋。

答えが最初から決まっているのなら…






(せめて、相手の幸せを…か)



俺が無理して、水島の傍にいる事を知っている佐藤は…そんなオレを見てる事が、


耐えられなかったんだ。







「お前だって、それでいいのかよっ…」



俺なら耐えらんねぇ…。

どんなに足掻いても、傍にいてぇだろ。



欲しくて欲しくて堪らないなら──────






(それって…)



なんて、自己満足なんだろう。

水島は芝崎への想いと戦っているってのに、俺は…







「うざ…」


俺が傍にいる事で、水島は更に芝崎と重ね、


縛られていく。




今はまだいい、

けど明日は?明後日は?




忘れられる訳がない。



俺にはそれが当たり前に出来ると思ってたけど───…







「無理じゃねぇか、そんなの…。」



フェンスを背にしゃがみ込み、頭を抱える。






(なぁ、佐藤…)


お前も、こんな気持ちだったんだな…。



一途な想いが、必ずしも相手を癒すとは限らない。

ましてや俺が、水島に対してずっと重荷になっちまってたなんて。





(支えるつもり、だったんだがな…。)


それこそ独りよがり。


このままいけば俺も水島も、

ただ自爆していくだけじゃねぇか。







「佐藤…」


振り払った手を見つめる。

アイツを傷付けたその手は、まだ感触が残っているかのように、熱い。




目を閉じれば浮かんできた、

チビで痩せ細った捨て犬みたいなアイツ。



俺よりちっこくて弱えクセに、

中身は山みてぇにデカくて強いんだ…。








「すまねぇ、な…」


立ち上がり、呟く。



全部に片が付いたら、

今度はアイツの前で言おう。



そう、決意して。

俺は屋上を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る