第19話 ドワーフ

カレスさんと別れてから一週間が経った。新しい魔物の死体は現ないが、毎日死体の処理に追われていた。ゴブリンキングの死体は二体運ばれてきたため速度は上がっているがそれ以上にゴブリンのホムンクルスが増えているのだ。まあゴブリンのホムンクルスはそこまで強くはなく、広範囲に広がってほしいためどんどん数を増やしてはいくが。


そんなことを考えながら死体を処理していると、ひと際大きなサハギンをホムンクルスが運んできた。魔石を取り出しホムンクルス化して、塩を作成すること。塩を運んでくること。を命令した。どのような作り方で、一回にどれだけの量を運んでくるかはわからないが一応これで自給自足の準備が整った。あとはダンジョンの魔物を標的にして新しいホムンクルスを作成に集中すればいいと結城は考えていた。


「結城さん、あちらから何かが迫ってきています」


デライトが指した方角は西の方で確かに馬車を連ねて何かがこちらへ向かってきていた。結城は念のためゴブリンキングのホムンクルスの近くにより、様子を見る。馬車は南側に移動し村で止まると、中から小さく、だが筋肉のついた体をしているドワーフのような生き物が出てきた。


「あれは、ドワーフ族ですね。このあたりでは見かけない種族です」

どうやら本当にドワーフだったらしい。結城はデライトに尋ねる。


「ドワーフは好戦的だったりする?」


「いえ。鍛冶と酒にしか興味がないと聞いたことがあります」


そんな話をしているとドワーフが山を登りこちらに向かって進み始めた。結城達は警戒を続けていたが、ドワーフたちから声をかけられる。


「ホムンクルスを従えている結城というものに用があってきた。敵意はない、話をせんか?」

ホムンクルス達はドワーフに関心を示さないことから敵意がないことが分かる。


「分かりました。話を聞きましょう」


話を要約すると、今はどの国も鉄不足で鍛冶ができる場所を探しているとカレスという商人から鉄の素材がある場所の話を聞いたとのことだ。そこにはホムンクルスを操る結城という少女がいること。ホムンクルスに手を出すと死ぬまで攻撃されること。魔物の死体が集まり、素材がたっぷりとあること。を聞き武器や防具を作る交渉ができないかと尋ねてきたとのことだ。


「それは構いませんが、私たちは隣のカイル帝国と戦争になるかもしれませんよ。それでもよろしいのですか?」


「戦争なんぞ今も魔王としとるようなもんじゃろ。それに、ホムンクルス達が守っておる分こちらの方が安全じゃろ。構いはせんよ」


「それなら構いませんが、食事などの面倒は見切れないですよ」


「それも構わん。むしろこっちの方で見てやるから素材を提供してくれんか?それを村や町で売って食料なんかを仕入れてくる」


「食料に関しては西に畑があるので一応ですが自給自足が可能です。それよりも情報が欲しいです。ホムンクルスを向かわせるのにダンジョンの情報が必要ですので」


「素材を提供してくれるのであればなんでもやるわい。それではこの下にある村を使っていろいろ作るからの。必要なものがあれば言いに来るといい。用意してやる」


「それならまずは農業の道具一式をお願いします」


ドワーフたちは少し気の抜けたような顔をしたが、受け付けてくれた。こうして村に新しい住民ができた。

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