第7話 事件の真相

刑事が戻ってきて、小声でもう1人の刑事に何かを伝えた。



「寺西君、お疲れ様。聴取に協力ありがとう。

あの女性が詳細に事情を話したので、

今夜の件について、かなり把握出来たし

君が関係者でない事も分かった」


体の力が抜け、座ったまま天を仰いだ。


「君の車が置いてある交番まで送るよ。

捜査に進展があれば、また連絡する。

もし何か異変があれば、些細な事でも構わないので

私に連絡してくれるか」




アパートに戻る頃には、遠い空が薄明るくなっていた。




大学の講義以外はアパートに引きこもった。

いや、外に出るのが怖かった。

車にも乗らなかった。


警察が逮捕する前に、連中が僕を見つけ出すのではないか。

電話が鳴るたび、ビクッと怯えた。

胸が押しつぶされそうな不安の数日だった。



事情聴取をした、飯塚刑事から連絡があった。



取調室ではなく会議室に通された。

入り込む日差しが眩しい。

飯塚がコーヒーを差し出した。


「例の容疑者2人は昨夜確保したよ。

もう君は安心していい。」


この数日の不安からようやく解放されて

僕は大きく息を吐いた。

飯塚は察して笑みを浮かべた。



「彼ら3人は不動産投資詐欺を行っていて

我々、県警にも以前から情報は入ってきていたんだ。

あの海水浴場近くの建設現場のプレハブ事務所に

集まり計画の打ち合わせをしていたそうだ。



投資計画を説明する役だった彼女は

最近、クライアント達から

細かな矛盾点を指摘され、

詐欺がバレるのではと不安だったらしい。


そして、あの夜

詐欺を辞めたいと2人に打ち明けたところ

激高した男に殴られたらしい。


もう1人が止め、

計画の続きを話し合い背を向けてる隙に

プレハブから抜け出し、海岸沿いを逃げ、

そして君と遭遇した、という事だ」


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