第2話 うちの執事ロイド、イケメンすぎない?【Side初花】

 私、如月初花は、如月家の1人娘。

 父親はIT系企業の社長で母親は同じ会社の副社長という、それなりに裕福な家庭で育ったいわゆる社長令嬢。


 うちには、各人専用の執事ロイドやメイドロイドのほか、家事専用のアンドロイドを2体置いている。

 だから私に支給された執事ロイドは私だけの執事。


 執事・クロノはとっても優秀な執事ロイドで、常に私のことを最優先に考え、私が快適に暮らせるよう先回りして動いてくれる。

 ただこの執事――めちゃくちゃイケメン!という困った特徴がある。


 イケメンなら良くない?

 そう思うかもしれない。

 でも考えてもみてほしい。


 好みのイケメンが執事で、しかもアンドロイドで。

 着替えやお風呂まで手伝おうとしてくるこの状況を!!!


 分かってる。

 むこうにとってはこれは仕事だし、そもそもプログラム通りに動いているだけ。

 感情なんてあるわけもなく、私のことは単なる「主」としか思っていない。

 そんなことは分かってる。けど!


「そんなの割り切れるわけないでしょおおおおおおおおおお!?」


 いやいや何なのあのイケメン。

 顔から身長から体型から、何もかも私の好みどストライクなんですけど!?

 あれで量産型ってどうかしてるでしょ!!!

 絶対執事ロイド(超絶イケメンVer.)とかだわ!!!


「初花様、どうなさいましたか?」

「!? べ、べつに何でもないわ。ちょっと学校であったことを思い出して」

「そうでしたか。何事もなかったようで安心しました」


 クロノはそう、優しい笑顔で微笑みかけてくる。


 そういうとこ!

 そういうとこですよ!!!


 クラスの男子は子供じみていて、騒がしくて苦手だけれど。

 クロノはいつも落ち着いていて、大人っぽくて、私を喜ばせるような、心をざわつかせるような対応ばかりしてくる。

 こっちの気も知らないで!!!


 クロノは私専用の執事ロイドだから、べつに甘えようが我儘を言おうがそれを不快に思う人も咎める人もいない。

 本当は、執事と主という立場なんて無視して、もっとベタベタに甘やかしてほしいと思うこともある。


 でも――プライドがそれを許さない。


 私は如月家の娘だし。社長令嬢だし。

 そんな、執事ロイドに甘えるなんてそんなこと――。

 クロノには、主として常に毅然とした態度を取らなくては。


 馬鹿だなあ、私。

 家でクロノに甘えたって、誰に見られるわけでもないのに。


 父様も母様も、今は仕事で家にいない。

 今家にいるのは、2体の家事用アンドロイドと私とクロノだけ。


 クロノは自室の横に備えつけてあるアンドロイド用の部屋に待機している。

 つまり、呼べばいつだって駆けつけてくれる。

 呼ばなくても、さっきみたい何かあればすぐに来てくれる。


 でも。それでも。

 うわああああああああんクロノのイケメえええええええン!!!

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