第2話


 遠心力で槍を回転させて二足歩行の犬みたいなモンスター、コボルトを二匹まとめて斬り裂く。


 その周りでは堀が弓、碓氷が籠手、源が剣で同じくコボルトをちょうど仕留め終えた所である。



 「正直この程度じゃ物足りないな」


 魔石も取り出しひと段落すると堀が物足りなさを示してくる。


 「確かにオレ達の実力なら低く見積もってももう一段階以上のダンジョンに行けると思うんだが」


 「たしか、アレじゃなかったっけ?昇格クエスト?だったかをしてないから制限上ここが限界だったはず」


 碓氷に源まで会話に参加してくる。


 しかし…昇格クエストか…


 「そういやなんで受けてないんだ?割と簡単にこなせるはずだぞ」


 「そりゃあお前、リーダーが物臭ものぐさだからだよ」



 「えぇー。異世界だけじゃなくてこっちのダンジョンもやる気出してこうぜ」


 「そうだそうだ!働けリーダー!」


 うぜぇ。


 「うるせぇアホ共」


 ぶっちゃけ面倒臭い。


 普通のクエストならカウンターでパパッと受注するだけだが昇格クエストは数人のギルド役職者の押印が必要でいちいち貰いに行かないといけないのだ。


 ちなみに異世界でのギルドランクはそれなりにある。異世界は元からそういう世界なので昇格クエストもカウンターでお手軽受注可能なのだ。


 そのおかげでこっちよりは高い。


 …だがオレ達の担当アドバイザーにも勧められているのも事実。


 仕方ない。



 「じゃあ、今度やるか」


 やる宣言とともにアホ共が騒ぎだす。



 「よし!それまでにまた剣の性能を強化しよっと」


 そう言って源が空中で手をスライドさせ動かす。

 「いや別に大したクエストじゃないんだし急がなくてもいいだろ」


 そんな源と堀のやり取りを見て碓氷が言ってくる。



 「てか有馬もいい加減呪い武器つかえよ。お前が最初に使ってみようぜっていいだしたんじゃん」


 「確かにな。その槍が気に入ったのはわかるけどコピーすれば同じように使えるしこの武器かなり便利だぜ」


 「そうそう。この強化システム結果凝ってて楽しいぞ」



 オレは碓氷達のそんな言葉を受け耳から斉天大聖の様に縮めた棒を取り出し元のサイズにし木の棒、というよりは棍から刃の付け根付近に宝玉の様なものがついた槍に



 「そんなとこにしまってたのか…」


 「なんかそんな物語なかったっけ?河童が出る奴」


 「西遊記か?てか普通悟空だろ。なんで沙悟浄」



 なんかごちゃごちゃ言ってるが放置。


 この謎武器。オレは槍だが源は剣で碓氷が籠手で堀が弓と突然光と共に降ってきてオレ達に強制装備されたのだ。


 異世界探索中の出来事だが結果的にオレ達は武器に取り憑かれた様なものだ。


 しかも取り外し不可!故に呪いの武器なのだ。


 しかしオレ達は現代日本で暮らす身。冒険者は最低限武器の持ち歩き可だが当然ダンジョンを除けば原則有事の際にしか使用してはいけない。厳しい罰則がある。


 持ち歩き可能とはいえオレ達は学生。背に槍を刺したまま授業を受けるなんて言語道断。


 模索した結果縮められる事をしった。ちなみに碓氷の籠手だけブレスレットになる。卑怯だと思う。



 「ほら有馬さっさとコピーしちまえ」


 「おう」



 この呪い武器は同種の同系統の武器を複写、コピーして使用できるのだ。しかも形状から重ささらには武器が持ってる特殊スキルや効果を使用できる。



 この呪い武器は謎だらけの怪しすぎる武器だ。


 この世界にダンジョンや異世界の扉が出現してからRPGの様に個人でステータス画面をもちレベルまで存在する様になったのだがこの呪い武器は普通の武器と違って



 そしてこのステータス画面からノーマル状態からコピーしたものまで強化方法があるのだ。スキルや特殊効果まで強化される。しかも強化が所有者のオレ達にまで作用する。なのでオレ達はかなりの速度で強くなっている。



 だがそれでも不気味だ。槍を背負ったまま剣を使う事もできるが呪い武器以外を使うとその武器が異様な程早く消耗、劣化し壊れてしまうのだ。


 まぁ、この黄金の槍は微塵もそんな事はなかったから愛用していたが。



 しかし今のところ大した害はないから放置しているが調べるべきか?



 とりあえずさっさとコピーしてしまおうと呪いの槍に意識を傾けるとヒュルンと黄金の槍が呪いの槍の宝玉に吸い込まれてしまった!



 !? どういう事だ!? コピーは対象の武器に触れ意識するだけでできるのに!


 「終わった?じゃあ次狩にいこ」


 源が呑気に言ってくるがそれどころじゃない。


 「終わってない終わってない!いきなり吸い込まれたんだけどどうゆう事!?」


 「あー。仕舞っちゃったのかな?取り出せばいいよ」


 「取り出す?!どゆこと?」


 吾輩パニック



 「あれ?知らない?この武器宝玉に物をしまう事が出来るんだよ当然取り出しも。しかも制限ないんじゃないかってぐらい入るから僕は異次元ゴミ箱的な感じで使ってるよ」


 な、なんだと?制限ないぐらい?オレのコートの存在意義は?


 「えっマジで?オレも初知りなんだけど」


 「そういえばお前野営した時とかいつもゴミとか跡形もなく消してとけど全部剣に吸わせてたのか。マジでゴミ箱みたいな使い方してんな。てか知ってたんなら早く教えてくれよ」


 「ごめんごめん皆知ってると思ってた。でもポーションとかはなるべくポーチとかに持ち歩いた方がいいよ。宝玉から出し入れするからここぞって時大変だし」


 碓氷がさっそく回収した魔石で実践する。


 「おお!ホントだ!スルスル入るスゲェな!」


 「でしょ。意識すると入ってるのが頭に浮かぶし個別に探せるし取り出すイメージでだせるよ」


 取り出しイメージ、取り出しイメージ。


 出てこない…


 おや?槍のステータス画面に何か表示が…


 「うおおおおおおぁぁぁぁぁ!?」


 「うぇ?!なになに?どうしたの!」


 「脅かすな‼︎」


 「ビ、ビビった…」



 思わず声を張り上げ周りが大変驚いているがそれどころじゃない!


 「槍が、黄金の槍が分解吸収された…」


 「吸収?そんな機能があんのか?オレは今までそんな事なかったけど」


 「オレもない」


 「僕もないけどコピーはどうなの?」



 槍の項目を確認すると新しく解放された槍がちゃんとあった。


 「…ある」


 「じゃあいいじゃん。その槍に変えればいいだけだし」


 「馬鹿野郎‼︎それでもあれだけの業物だぞ!かなり高値で売れたはずなのに…っ!」


 「えぇ…」



 「愛着と思ったらそっちか」


 「まぁ、とりあえず今日はこんなもんにして引き上げようぜ」


 堀が探索終了を提案してくる。


 物足りないとか言ってたのにどうした。



 「今回と前回異世界で回収した魔石売り払ってポーションとか薬草類買い込もうぜ。今見つけたんだけど調合技能とかもあるから収納とかも含めていろいろ試したい」


 確かに、沢山仕舞えるなら冒険の幅が広まるし今日は帰るか。


 「そうだな、帰ろう」


 「そうするかぁ。キャンプ道具とか詰め込もう」


 「あっ僕も入れとこう」


 異世界で集めた分も含めるとかなりの魔石があるしそれなりにまとまった金ななるかな。



 呪いの槍についていろいろありすぎて疲れたしさっさと換金しよう。








 「天体究技団の皆さん。こちらの魔石はどちらで入手したのですか?Sランクの物とお見受けしますが?」



 オレもわかんない。

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