異世界って大変だね

 椿たちはステータスを確認した後、訓練ではなく、座学に進んだ。


 どうやらステータス観覧は座学の一種だったらしい。

 今日はどうやらこの世界の歴史や悪魔族との戦争についてある程度説明するようだ。


 この世界についての勉強は昼食前まで続いた。

 ちなみに講師役は宮廷魔導師のフロック・エドワードさんだ。ちなみに結構な年齢だ。


「では、これにて最低限の知識を勇者様方には入れてもらいました。この国で生活するにあたって必要なことは最低限学び終えたので……」


 講師のフロックがそこまで言うと、教室(って椿たちが呼んでるだけの、ただの広い部屋)の扉がノックされ、


「む?フロック殿。そろそろ終わりのタイミングですかな?」


 騎士団長、ウルが入ってきた。


「ええ。今しがた終了したところです。ウル殿もどうしたのですか?」


「いえ、実は昼食が出来たとメイドが言っていたのでその連絡と、騎士団長として勇者一行に報告があるのでここに来たのですが。タイミングはよかったですね」


 どうやらウルはフロックが何かを言いかけたタイミングで入ってきたことを知らない様子。

 まあフロックが気にしてないから別にいいんだろうけど。


「ウル殿。あなたの、いえ。騎士団長の用事といえばあれ、でしょうか?」


「そう。あれです」


 ウルとフロックが話題にしているあれ。

 その事がわからずに椿たちは首を傾げるがウルは気にせずに前に立った。


 そして椿たちを見渡すと


「午後からは少し休憩してから戦闘訓練に移行してもらう。そして戦争訓練を始まる前に、国の武器庫でそれぞれに適性のある武器を選んでもらう。なんたって勇者一行だからな!国の魔法道具マジックアイテム魔導具アーティファクトの中から選び放題だぞ!」


 そう言っているウルの表情はそこはかとなく嬉しそうだ。

 これで強力な武器や防具を身に纏った椿たちが戦争に参加すれば、間違いなく強力な戦力になるからだ。


 騎士団長の立場としても、個人としても楽しみなのだろう。


「あと、戦闘訓練に関して私も少しいいですかな?」


 そう言ったのはフロックだ。


「どうかしましたか?フロック殿」


「いえ、私たち魔法騎士団の生き残りは、魔法戦に特化した方々を育成する予定ですが、上里 椿殿には近接戦の訓練を限りなく減らして頂きたいと思っています」


 と、急に名指しで指名された椿は「え!?」ってなりながらフロックを見ている。


「なぜ?と聞くのは無粋ですな」


「ええ。他の魔法戦に適性のある方々にも最低限近接戦の出来るステータスがありますので自衛のために近接戦の技術を磨くのは悪くは無いと思います。ですが、あの膨大なMPに加え、高い魔力と精神。それに加えて極端に低すぎるその他のステータス。彼は近接戦に対しての才能は限りなく0かと思われます。ですので彼には魔法の特訓に注視してほしいと思ったわけですよ。椿殿もそれでよろしいですかね?」


 急にこちらに話しを振られてびっくりした椿だが、すぐに落ち着かせて、真面目に考える。

 確かに椿の魔力と精神以外のステータスは低い。平均くらいしかない。


 それに比べて明らかに魔力と精神が高いなら、そちらを集中的に鍛えた方がいいだろう。

 それにあまり運動したくないというのもある。


「はい。僕もそれで大丈夫です」


 椿のその返事を聞くと、フロックは満足そうな表情をしてから


「わかりました。それでは、午後からよろしくお願いしますね」


 そう言って教室から去っていった。

 その後、椿たちはメイドさんたちが持ってきてくれた昼食に舌鼓を打った後、武器庫に武器を選びに行った。


「さあ、お前たち好きな武器を選べ!勿論魔法道具マジックアイテム魔導具アーティファクトも選んでいいぞ!」


 と言ってくれたのでみんな好きに武器を選ぶことにした。


「おっと言い忘れていた。武器の性能を見たいならこの眼鏡を持っていくといい。この眼鏡は【鑑定眼鏡】と言ってな。この眼鏡をかけた状態で調べたいものを見ながら眼鏡にMPを流すと見たものの性能がわかるようになる魔法道具マジックアイテムだ。武器を選ぶ際はこれを使うといい」


 ウルさんはそう言いながら椿たち一人一人に眼鏡を渡して行った。


 椿は眼鏡を受け取ると眼鏡を掛けて、武器庫に置いている杖やワンドなどを見ていく。


 一つ一つ見ながら歩いていると、ふと、立派な剣が置いていることに気がついた。

 気になってその剣を鑑定してみると


 〈聖剣〉

 伝説の勇者のために作られた剣。

 技能【勇者の加護】を所有しているものにしか使用できない


 と鑑定された。


「これは、高円寺くんようだね」


 そう言って椿は違う武器を見に行った。

 結局例の聖剣は光がみつけ、使うことになった。

 ちなみに椿は【魔力貯蔵】の効果が付与された杖を使うことになった。


 この杖は先端に付いている魔法石に自身のMPを貯蔵することが出来る優れものらしい。

 宮廷魔導師であるフロックが「是非これを」と言って渡してきた。


 杖は装備するだけでMPの変換効率を上昇させ、魔法の威力もある程度上がるものなのでそれに加えてMPを貯蔵できたら自分よりもある程度強い敵なら抗えると言われた。


 そして椿は他のクラスメートが護身用の訓練に向かうのを見ながらフロックに着いていき、


「では、魔法の訓練に入ります。初日ですので優しめにしようと思ってますので椿殿も頑張ってください」


 思ったよりもきつい訓練が開始された。

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