怪異転醒

マインドフルネスERA

プロローグ

ーー醒暦せいれき1400年、長年に続いた魔王軍との闘いは……人類が圧倒的劣勢に追い込まれていた。


 敵である魔王軍は非常に高い生命力・魔力をもつ魔物を引き連れ、次々と村々を焼き尽くし、人類は疲弊していた。

 そこで、人類の国々をまとめていた大帝国ディスピカボー帝国はとあるを解禁。

 それは全人類を救うべく、能力の高い異世界者を召喚し、この戦争の要とする禁術であった。


◇◇◇


「陛下、このままでは……人類は魔王軍に滅ぼされてしまいます!」

 

 帝王の足元まで駆け寄った部下が口早に叫んだ。その声は玉座の間に大きく響く。


「魔王軍は次々に我が領土を焼き尽くし、騎士たちは疲弊しています! 敗戦が続き、民からは不満の声が上がってきています!」


 部下は戦況化を述べる。ディスピカボー帝国は一刻を争う状況下に陥ってしまっていた。


「まじやべーよな。うん……どないしようかのぅ」


 戦争下にもかかわらず、ディスピカボー帝国の帝王はかなりてきとうだった。玉座に腰掛けてはいるが羊の皮でできたシャツと短パンしか着ていなかった。長く白い髭と頭髪はボサボサで側から見たら帝王だとは思わないだろう。


「……失礼ながら陛下、ここはあのを発動するべきかと……」


 部下は冷静に帝王に作戦を述べる。


「えぇ〜あれって家臣たちにめっちゃ金やらんと出来んやつやろ? 嫌じゃあのぅ〜あんな奴らに金出すとかぁ……」


 帝王はケチだった。

 

 帝王の踏ん切りがつかない様子に部下は少し焦った後、口を開いた。


「このままでは、陛下の大好きな朝食のくるみパンが無くなってしまいますよ?」


 部下は帝王の好きなものをなんでも知っていた。それで釣れると思っているのだ。


「ま? それかなりやばいやん、これ禁術使ったろ」


 帝王は特に何も考えず、部下の口車に乗ってしまった。帝王はやはり、てきとうだった。


「この巻物によりますと禁術ではある程度、召喚する者の能力を指定することができるそうです」


 部下は術式が書かれた巻物を眺めながら帝王に説明する。


「なるほいなほ。 異世界の特異能力のある、まじバケモンみたいな奴召喚しといてほしいのぅ」


 帝王は鼻をほじりながら部下に伝える。深くは考えていないのだ。


「……特異な能力ですか? 例えばどのような?」


 部下は紙を取り出し、メモを取ろうとする。真面目かもしれないのだ。


「せやのぅ、まず城を長年に渡って守った屈強な精神を持つ兵士がええのぅ」

 

 帝王はマッスルポーズをとりながら部下に話した。しかし部下はメモを取ってポージングを見ていなかった。


「かしこまりました! まずはそのような強者の召喚を試みます!」


 部下は帝王の扱いに慣れていた。


「……それじゃあ、召喚……始めぃ!」


 帝王の号令とともに、家臣たちに金が配られ、禁術が即座に発動されるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る