第3話 僕と彼女のお昼休み

烈兎隊――それは、関東で最大かつ、最強のレディースチーム。


年々、メンバーが増えており、敵対していた勢力をも傘下に取り入れて今や一種の大企業と言ってもおかしくないほどの力をもつ集団だ。


「タツ気持ちいい?」


そんな烈兎隊のリーダーである瑠璃さんに、現在僕は膝枕をして貰っております。


場所は学校の屋上。


瑠璃さんお手製のお弁当を食べた後、午後の授業までまだ少し時間があって、僕が少しうとうとしていたら……いつの間にか瑠璃さんに横に倒されて膝枕されてました。


「う、うん……気持ちいいよ」

「ふふ、なら良かった」


正直言おう。


瑠璃さんの太股の感触が柔らかすぎて、僕は現在かなりテンパっている。


そんな僕に構わず瑠璃さんは僕の頭を撫でていた。


「タツの髪の毛さらさらしてるんだねー……男ってもう少し固いと思ってたけど」

「そ、そうかな?」


瑠璃さん、ナチュラルに頭を撫でてくれるのは嬉しいんだけど……顔が近すぎない?


いや、ひざ枕してるからだろうけど、なんだか顔が近すぎるような……


「すんすん……」

「わ!?な、匂いを嗅がないで!」

「え?なんで?」


キョトンとした表情でそう聞いてくる瑠璃さん。


いや、なんでも何も……


「は、恥ずかしいし……それに、午前中体育で汗かいたから……」


あれ?おかしいな……普通はこういう台詞は女の子が言うものなんじゃないだろうか?


……いや、気にしたら負けか。


瑠璃さんに敵うわけもないし。


そんな僕に瑠璃さんはくすりと笑ってから「それじゃあ……」と、少し溜めた後に爆弾を落とした。


「タツも私の匂い嗅いでいいよ」

「はい!?」


に、匂いを嗅ぐ?瑠璃さんの?


視線を少し落とせば瑠璃さんの柔らかそうな太股が見えて……はっ!いかんいかん!


慌てて僕は目を瞑った。


「い、いや、それはちょっと……」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど、そのなんていうか……」


察して瑠璃さん!


多感なお年頃な男子高校生にとって、女の子の匂いを嗅ぐなんて、レアすぎるイベント堪えられないんだよ……


「別にタツの嫌いな香水とかはつけてないよ?」

「そういう問題じゃあ……って、あれ?僕が香水あんまり好きじゃないのいつ教えたっけ?」


おかしいな……確かに僕は昔、ケバい親戚の叔母さんの香水の匂いを嗅いでから香水そのものがあんまりいい印象を抱かなくなっていたけど、それを瑠璃さんに話した覚えがない。


不思議に思っていると瑠璃さんは「そんなことより」と話題をあからさまに変えてきた。


何やら触れてはいけないみたいだ。


うん、僕の精神衛生上聞かない方が良いと直感が告げているのでそれに従おう。


「明日のお弁当のリクエストはある?」

「瑠璃さんの作るものならなんでもいいよ」

「そういう回答が一番困るんだけど……」


そうは言いつつも少し嬉しそうな瑠璃さん。


僕の両親は共働きで、しかも料理とか出来ないから自然と……というか、必然的に僕と姉は料理がそこそこ上手くはなったので、出来るには出来るけど、瑠璃さんの腕前には遠く及ばない。


瑠璃さんは僕の彼女になってから毎日お弁当を作ってくれている。


それまでの惣菜やパン、自作の簡単なお弁当であったお昼が嘘のように幸せな状況だが……少し申し訳なくも思う。


「でも、作って貰って文句なんて言えないよ。それに瑠璃さんの料理が美味しいのは本当だし」

「ふふ……ありがとう、タツ」


そう言ってまた頭を撫でてくる瑠璃さん。


あぁ、瑠璃さんに撫でられるとなんだか気持ちよくて寝てしまいそうだよ……


「まだ時間あるし、寝ててもいいよ?」


そんな僕の内心を見透かしたように瑠璃さんはそう言ってくれた。


僕は申し訳なく思いつつもその心地よさには抗えず安らかに意識を落とすのであった。


ちなみに、午後の授業にはギリギリ間に合ったことだけをここに記しておく。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る