第12.5話 魔王との契約(追放サイド)

オレの名はソルド。

Sランクの剣術適正を有しているオレは世界最強の剣士。そんなオレだがどうしても潰さなければならないやつが現れた。


「オレはシルディを殺る」


それはあいつの屋敷を訪れた帰り道のこと。

オレは決意した。


あいつだけは許せない。

追放したあいつが辺境で女に囲まれながらノウノウと生活を送っているのが許せない。

あいつのことを考えるたび、腸が煮えくり返って仕方がない。

真の苦労を知らないあいつには相応の制裁を与えてやらなければならない。


「え、アンタ何言っての、冗談でしょ!?」

「黙れキュアン。このクソビッチが」


このクソビッチを押しのける。転移石を持ってるのは誰だったっけな。ああそうだ、マギナだ。


「ちょっ、何するんですか! 触らないでください!」

「いいからよこせ!」


マギナから高級アイテム《転移石》をふんどった。2つあれば十分。往復ができるからな。


「まさか……一人で魔国領に行く気かい?」

「よくわかったな」


弓使いアーチェ。貴族だからって品行方正ぶりやがって。


「あいつを殺るためだったらなんでもする」


力を得るために魔国領へ行く。

あいつ一人を殺るだけならわざわざそこまでする必要はない。しかし、あいつに絶望を合わせてやりながら殺りたい。そのためにはあいつの大切にしているあの国を潰す必要がある。その力を得るためならば、どんな手段を取ろうと構わない。人間をやめたって構わない。


「魔族と契約を結んで力を得る。それじゃあな」

「ま、まつんだ! 早まるなあああ!!!」


転移先を魔国領へ指定。オレは人界と縁を切ることにした。





魔国領。相変わらず不気味な場所だぜ。どこもかしこも荒廃してやがる。

独特の瘴気により、魔国領に住むモンスターはレベルは高い。運悪くモンスターに遭遇したときはもう一つの転移石で人界に逃げるつもりだ。そのときは金のある限り転移石を買い貯めて再トライを繰り返す。


魔族とは魔国領に住む悪魔の亜人。青白い肌に2つの角、そして1つの尾が特徴だ。どうせなら強い魔族と契約がしたい。

荒廃した荒野を歩いていると、前方に集落を見つける。ビンゴだ。


「美味そうな人間。よくこんなところまで。殺されに来たか?」


集落の長。強そうだしこいつに頼むか。


「オレと契約を結べ。代償はオレの寿命1年だ」

「たったの1年だと。笑わせるな」

「このオレの1年だぞ? ありがたく思えや」

「生意気だな。魔王様のところへ連行する」


魔王だと? それは好都合だ。思ってもないチャンス。どうせなら魔王と契約してやる。


「お前が転移してきたときから覗いていたぞ人間。面白いやつよ。どうやら契約を結びたいようだな?」

「魔王、貴様と契約がしたい。代償はオレの寿命1年だ」

「ほう1年と。早く復讐がしたくてたまらないようだな?」

「話のわかるやつだな」

「殺したくてうずうずしているという目をしている。気に入った。その条件でよいだろう。我が協力してやろう」


魔王の魔力が俺の全身を駆け巡る。全身を焼かれるような激しい痛み。しかし、あいつのためだと思えばこの程度の苦労で折れるわけにはいかない。


「これが魔王の力……くく、負ける気がしねえ」

「それでは契約通りお前の寿命をいただく。1年間眠ってもらおう」


ちっ、前払いかよ。仕方ねえな。ちょっと長い居眠りだと思えばいいや。目覚めればすぐにでも復讐に行ってやる。

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