第19話ズレてる姉

市民会館で催されていたイベントを終え、帰宅の途中に夕食を済ますことになった俺と姉はラーメン屋に寄った。

姉がラーメン屋で夕食を済ませようと、言い出した。

時刻は、午後八時に差し掛かろうとしていた。

ラーメン屋の店内は言うまでもなく、混んでいて、奇跡的に俺らが入店した際に中年の男性が二人出ていったので席は空いて、座ることができた。

ラーメン屋でよく見かける、天井寄りの壁面にメニューの品々が書かれた短冊形の紙が貼り付けられ並んでいた。

カウンター席に腰を下ろした俺と姉は大将らしき体格のいい男性に注文を告げる。

「味噌ラーメンに餃子、あとチャーハンお願いしまーすっ」

「はいよっ!」

「ぼくは醤油ラーメンに餃子、あとライスの中をお願いします」

「はいよっ!」

威勢の良い返事が厨房から聞こえた。

「楽しみぃ〜もうペコペコで涎出そー」

「お願いだから涎は垂らすなよ。姉貴よ」

腹を撫でながら、厨房を見つめていまかいまかと待つ姉にすかさず釘を刺す俺。

本気マジに受け取んなしぃ〜あんたぁ。冗談に決まってるべー」

姉がヒラヒラと片手を振って顔を顰める。

姉が発する言葉は一貫性が無い。

ほんとに、姉は型に嵌りはしない。

「……」

「それにしても、酷いねーあんたってやつは。かっちゃんにあんな顔させるなんて。見てて、胸が痛んだよ、ほんと……」

「お兄さんの人柄が良くても、無理なもんは無理だって……解んだろ、姉貴だって」

「うーん……解らないでもない。だけどさぁ、かっちゃんにあのままで居ろってのは酷ってもんでしょ。克貴には人間ヒトのココロってもんが無いってぇの?」

「酷は酷だけど……弟より友人を優先ってのも酷いんじゃありません?」

「かっちゃん……」

俺の反抗の言葉は、姉にスルーされ、冬視俊之ゆうじんを気に掛けだした姉が深く吐息を漏らす。


つくづく酷い姉だ、彼女コイツは……


二十分も経たずに、注文した品々が目の前に置かれた。


この世から……——。

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