第17話元カップル

市民会館を出て、謎のオブジェの背面の側に置かれたベンチに腰掛けた俺と冬視沙耶華ふゆみさやか

「……」

「……」


「……げ、元気にやってるか、沙耶華?」

「うっ、うん……それなりに……」

「嘘、だろ?上手く……いってないんだよな、沙耶華。なんかあんだよな、そんな表情かおしてるってことは……」

「……そ、そう、だよ。や、柳葉に……酷いことしたバチがあたったんだよ、私。あれから……上手く、いってない。毎日……なんで生き続けられてんのって……きゅうきゅう締め付けられる胸で。バカみたい……私はバカ、だよ……ほんと」

「そう……か。馬鹿じゃないって、沙耶華はさ……ただ、不器用なだけだよ、はさ。俺と違って……」

今にも泣きそうな震えた声で言葉を紡ぐ冬視に、俺はそう返していた。

俺は偽りのない真実しょうじきな意見を、彼女に返した。

「……バカ、なんだよ私は。みたいにバカな人間やつなんだ……」

彼女は自身に対して小さく嘲笑し、掠れた声で吹く風に押し負ける声量で呟いた。

「……んなこと、ない……」


「柳葉ぁぁ……や、柳、柳葉くんぅぅ……私を、だっ、抱いてくれないぃいぃぃいぃ!」

涙と洟水を流してぐちゃぐちゃな顔の彼女が俺の腕を掴んで縋り付いてきた。

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