私か彼女、どちらが好きかなんて聞かれても

闇野ゆかい

第1話あの日の夢だなんて、最悪だ

寝返りをうつと顔に寝息が掛かり、微睡んでいた脳内が起きて、眼を醒ましてしまった。

瞼が上がり、瞳にはすぅすぅと寝息を立てながら眠る恋人の寝顔が映る。


まだまだ眠り足りないのに……


俺の自室で——同じベッドに、恋人と二人で就寝している状況に罪悪感を覚える。

俺は物音を最小限に抑えながら、身体を起こした。

片手を頭に持っていき、ひとさし指と中指でこめかみを押さえ、胸の内で漂い続ける罪悪感しこりを脳内の片隅においやろうとする。


さっさと消え去れッこの、この——


「——どうしたの?怖い顔して……ねぇ、克貴」

寝ていた筈の恋人が俺を呼ぶのに気付き、彼女に顔を向ける俺。

「……え?あぁ、いや……なんでもない。起こしてごめん」

「そう……ううん、大丈夫。あのさ……」

「……?やっぱ——」

「私って重荷、かな……?克貴にとって、私ってどんな存在……か、聞きたい。良い、かな……?」

身体を起こして、俯きがちに訊いてきた彼女。

「なんでそんなこと……いきなり、訊くの?沙耶華……」


「だってッ!付き合い始めた頃と表情かおが全然違うもん……私と、私と居るのが苦痛みたいな表情で……不安、で不安で不安で不安でッッ——!」

両手で頭を抱えながら、震える声で懸命に胸の内に留まる感情を打ち明ける彼女。

「ごっごめん!ごめん、ごめんっ沙耶華。沙耶華に辛い思いさせてごめんっ!沙耶華が重荷なんてことっ……ないか、らぁ」

俺の弱々しくなる声に、彼女が嗚咽を漏らし始めて泣き出した。

「……ッ、うぅぅッ——」


彼女を宥め終えるのに、一時間を要した。

彼女が落ち着いたと安堵した瞬間に彼女に押し倒され、四つん這いの体勢の彼女に身動きを封じられた。

彼女の服装は肩を露出して、太ももを露わにした際どい水色のネグリジェワンピースだ。


目のやり場に困る……


「ねぇキミ、私のこと——」




***


——好きじゃないでしょ。


ゴツッ、と鈍い物音が響くと同時に顎に痛みを感じて、意識が戻る。

「いってぇぇ……」

顎を摩りながら、顔を上げると藤宮先生が仁王立ちしていた。

教科書を丸めたかと思えば、次の瞬間にバシバシッと俺の頭を殴ってきた藤宮先生。


教卓へと戻っていく最中に、「授業終わったら私んとこに来い!」と言ってきた藤宮先生だった。


さ、最悪だあぁぁ!









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