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「…先輩が寝不足だなんて、珍しいッスね?」


隈が出来てるね、と言われ…ドクリと心臓が脈打つ。





「もしかして…オレの所為、だったりする?」


思わず椅子が音を立てるくらい、あからさまに反応してしまった。



これはマズイ────…

追い討ちでねだるように、見上げられてしまうから。なんだか得体の知れないコイツに、頭の中を全部暴かれてしまいそうな気がして…怖い。






「先輩?」


「ちが、う…」


何とか絞り出した声は、掠れて上手く言葉にならないし。






「…………」


「…………」


お互い時が止まったように、沈黙のまま目が合う。


いつしか芝崎の無邪気そうな表情は消え、一転して真剣な光を湛え、まっすぐに。

此方へと注がれるものだから、逃げることも出来ないし…。



そんな感じで僕が頭の中、一人グルグルしていると。

芝崎はふわりと微笑み、ゆっくり口を開いた。








「オレの所為、だったらいいのにな…。一晩中オレの事で先輩の頭ん中、いっぱいに出来たなら…さ。」


「ッ…!」


きっと今、僕の顔は。

誰が見ても解るくらい、真っ赤になっているのだろう。




いくら彼が同性であっても…

此処までストレートに言い切られては、動揺してる事なんてもう、隠しようがないじゃないか。



それでも年下で、初対面なコイツに。

弱味を握られたくないという意地が働く。

けれども不器用な僕には、目を逸らすぐらいしか為す術が無いものだから…。


意識すればするほどに、馬鹿みたいに全身が熱くなった。








「どうして、僕なん…か…」


此処で無視を貫き通せば、楽に終わらせられただろうに…。コイツが自分を好きになってしまった理由が、どうしても納得いかなくて…


つい口が、滑る。






「お前の見た目ならっ…女でも、例えおっ…男…であっても。幾らだってモテそうじゃないか!…わざわざ僕なんかじゃなくたって────」


辿々たどたどしい僕の言葉を、噛み締めるように。

耳を傾ける芝崎は、あどけなさのある容姿ながらも何処か大人びて見えて。何だか立場が逆転したような錯覚に襲われ、目眩がしそうだ…。



それでも必死で言い切ると、芝崎は口に手て考え込んでしまい。


暫く黙ってそうした後…

コイツは僕に向け、驚きの返答を投げつけてきた。








「オレ…たぶんゲイってワケゃじゃあ、ないんスよね…。」



意図が読めず、僕は眉を顰める。

なら男も女も全て恋愛対象、とでも言うのだろうか?


一見すれば爽やかで、純朴そうに見えるのだが…

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