その部屋には、とても不思議な(でもすごく魅力的な)絵が描いてあった。


 ふわふわとした白い雲のような天蓋のある白い大きなお姫様の眠るようなベットと、それから部屋の隅っこに置いてある、かぼちゃの馬車のおもちゃ(結構大きなおもちゃだ。子供なら本当に乗れるくらいの大きさがあった)がとても目立っている。でも、それ以上にこの部屋の中に入った人の目を引くものは、やはり、壁の一面に描かれた『たくさんの不思議な魚たちの絵』であるだろうと、小森ひよこはいつものようにそう思った。

 この部屋の主人は今もすーすーと可愛らしい寝息を立てて、ベットの中で安らかな眠りについている。この主人は本当によく眠りについた。普段でも一二時間くらいはいつも眠っていたし、長いときでは十四時間から十六時間くらい(つまり一日のそのほとんどの時間を)眠る時間に使っていた。(とても可愛らしい、本物の天使のような寝顔で、この主人は幸せそうな顔をして、いつも眠りについていた。きっと眠りの中でとても楽しい夢を見ているのだろう)

 ひよこはそんな主人を起こさないように気をつけながら、部屋の中を片付けと掃除を始めた。

 でも、ほとんど物音を立てなかったのだけど、ひよこの主人はそのひよこの動く気配に気がついて、ぱちっと白いベットの中でその大きな可愛らしい瞳を開いた。

 ひよこの主人はそのまま、顔をくるりと横に動かして、部屋の片付けをしているひよこのことを見た。その視線に気がついてひよこは主人のほうにその目を向けた。

「おはようございます。神様」とにっこりと笑ってひよこは言った。

「……うん。おはよう。ひよこ」と単調な(まるで機械音声のような)声で、起きたばかりの小さな神様は、黒色のメイド姿のひよこを見て、(びっくりするほど魅力的な笑顔で)にっこりと笑ってそう言った。

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